2016年8月24日水曜日

【第28回】 エカテリンブルクの治安と外務省の海外安全情報

<<<筆者注:この記事は2016年8月24日に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>

ロシアの治安状況は日本では多分に誤解されている面があるように思います。私の個人的な感覚としては、一般的にはエカテリンブルクの治安は日本の都市部と大差ありませんし、少なくともアメリカの大都市よりも安全だと思います

もちろん治安に「絶対安全」という状態は存在しませんし、安全と言われている国・地域であっても、状況によっては犯罪に巻き込まれる場合はあり得ます。しかし、それにしても、ロシアの場合、実際の治安状況に比べて過剰なまでに危険なイメージを持つ日本人が多いように思います。

おそらく原因の一つには、外務省が運営している海外安全ホームページの影響があるのではないでしょうか。参考までに今日現在発表されている外務省海外安全情報のキャプチャーイメージを以下に示しておきます。



ロシアについては、チェチェンやクリミアなどの紛争地域は濃い黄色(渡航中止勧告)、それ以外の地域は全面黄色(十分注意)という区分になっています。しかし、紛争地域はともかくとして、それ以外の広大なロシアの領土を全面黄色に区分するのは本当に適当なのでしょうか? 実はこの区分、地図を見渡せば様々な疑念が沸き起こってきます。

例えば、下の図には最近爆弾テロが頻発するトルコが含まれていますが、シリアと接している一部地域を除いて警告なし(白)となっています。これはかなり不適当な区分ではないでしょうか。さらに上の図の樺太を見ると、南半分が白、北半分が黄色となっています。樺太の南と北で治安状況が異なるなんて不自然ですよね? この情況は少し考えれば、そこに政治的な意図があることは疑う余地もありません。

ロシアについては(おそらくロシア以外についても)、外務省の安全情報の背景には政治的な意図が隠されており、本来の「安全情報」としての信ぴょう性はかなり低いと言わざるを得ません。

他にも、ここには地図を掲載していませんが、アメリカ合衆国は全面「白」に区分されています。しかし、アメリカとロシアの両方に住んだことがある私の感覚からは、どう考えてもアメリカがロシアよりも安全だとは思えません。

実際のところ、エカテリンブルクの治安は、市内中心部については良好だと思います。私は徒歩通勤で夜間に市内を1人で歩くことも多いですが、これまでに大きな危険を感じたことはありません。(ただし、夜と言っても本当の深夜に1人で歩くことや、危険そうな情況がある人物や場所には近づかないようにしています。)

ただし、北部の方には他の地域に比べて相対的に犯罪発生率が高い場所が一部あります。北部の方にはウラルマッシュ・ギャングと呼ばれるグループが活動している地域があり、ギャング同士の抗争や軽犯罪が犯罪率を上げる要因となっています。しかし、北部が危険と言っても、昼間に普通に行動する分には私はそれほど大きな危険を感じたことはありません。実際北部には鉄道の中央駅があり多くの客がそこを利用しています。

とりあえず今日ここで言いたいことは、巷で言われているほど(紛争地帯以外の)ロシアは危険ではない、ということです。先日Twitterのタイムラインを眺めていると、どういうわけか、エカテリンブルクの治安が、南米の危険都市レベルであるという根拠の無い噂が流れているのを見かけました。エカテリンブルク居住者としては、治安に関する生の感想を書いておく必要性があるのではないかと思い、ここで簡単に意見を述べてみました。何らかの参考となれば幸いです。