2017年12月17日日曜日

【第40回】天文学者は夜空を見上げるのか

昨夜、ask.fmという質問系SNSで「実際の話、夜空って見ますか?」という質問をいただきました。実はこの質問、天文学者をやっているとときどき聞かれます。おそらくその裏には「天文学者は、さぞや多くの晩、夜空を眺めているに違いない」という推測が入っているように思います。

正直に言うと、私の場合、仕事で夜空を見上げることはほとんどありません。観測に出かけた時には、天候の確認ついでに夜空を見上げることはありますが、観測に出かけること自体が実はそれほど多くないのです。今まで一番多く観測した年でも、日数にすると年間で3週間程度です。少ない年だと1週間も観測しません。また、最近は天文台には行かずデータだけもらう場合も多いので、ますます自分で観測する機会は減っています。

とはいうものの、天文学者も基本的には宇宙や天体に興味がある人間なので、星空を嫌っているという訳ではありません。理論物理学者のリチャード・ファインマンは、友人の画家に「科学者は花を見ると、細胞や遺伝子については語るが、花そのものの美しさを理解していない」と言われた時に、「それは全く違う。科学者も人間であり、人間である以上、あなたと同じように花の美しさは当然理解できる。そして、科学者はあなたたちが理解していないより深い花の美しさも知っているのだ」と答えたという有名なエピソードがあります。

私は同じことが天文学者にも言えるのではないかと思っています。天文学者は肉眼で見る以上の宇宙の美しさや面白さに日々触れているため、肉眼で夜空をみることに比較的興味が薄いのかもしれません。ただ、そう言う私ですが、日食や流星群の時には外に出て、純粋な好奇心で空を見上げることもあります。

ウラル連邦大学天文台から見える星空

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写真の引用元:http://astro.ins.urfu.ru/kourovka/excursion

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【第39回】ロシアの伝統的なお菓子 ハルヴァ

今日は「ハルヴァ」というロシアのお菓子をお茶うけとしていただきました。ハルヴァは、ヒマワリの種の粉に砂糖や油脂などを混ぜて突き固めたロシアの伝統的なお菓子で、四角い煉瓦のような形をしています。色合いはグレーっぽい感じで、お世辞にも美味しそうな見た目とは言えません。しかし、味はなかなかの美味です。

例えて言うと、きなこに砂糖をまぶしたような味で、和菓子を思わせる素朴な風味があります。それだけに、緑茶との相性は抜群です。私はハルヴァを食べる時は日本から持参した緑茶を濃い目に入れて一緒に頂きます。

ロシアでもハルヴァ好きは多いようで、私の同僚のD君も「一番好きなお菓子は子供の頃からハルヴァだ」と言っています。ただし、ハルヴァは粉状の甘いお菓子なので、食べるときに歯の隙間に入り込み虫歯の原因になりやすく、ロシアでは子供には与えないという家庭も多いようです。

このハルヴァ、ロシア以外にもユーラシア大陸の広い範囲で食べられています。ロシアのハルヴァはヒマワリの種から作られますが、他の国ではゴマやその他の穀物から作られる場合もあるようです。

昔ながらのハルヴァは、食べやすさの点ではあまり優れた食品ではありません。通常、ナイフで薄く切って食べるのですが、切る時にどうしてもボロボロに壊れてしまいます。しかし、最近は、チョコレートのコーティングを施してバー状に加工されてハルヴァなども出回っており、食べやすさが改善されています。今日食べたハルヴァはバータイプのものでした。

ハルヴァには旬があり、その年に新しく収穫されたヒマワリの種が市場に出回る初秋から晩秋のものが一番美味しいとされています。みなさんも、もしロシアに来られる機会があったら、ロシアのハルヴァを是非味わってみて下さい。

チョココーティンぐされたハルヴァ

チョココーティングされたもハルヴァのパッケージ

2017年4月16日日曜日

【第38回】日本文化講座 『日本の料理』

今日は、エカテリンブルク市の日本語センター『夢』が主催する日本文化講座で妻が講師を務めるということで私も様子を見に行ってきました。講演会場はエカテリンブルクの市街中心からバスで南へ15分ほど下ったところにある公共の図書館でした。この図書館は図書館業務だけではなく、会議室や講義室の貸出業務も行っており、カルチャーセンター的な役割も果たしています。
図書館のエントランス

会場に到着してまず驚いたのは、今日は雨だったのにもかかわらず、会場に入り切らないくらいの大勢の聴講者が来られていたことでした。日本文化に興味を持っているロシア人が多いことに改めて驚きました。会場には40席ほどの椅子が用意されていましたが立ち見も出ていたので、おそらく50人程度の聴衆がいたのではないかと思います。

本日の講演のテーマは『日本の料理』でした。日本の食についてざっくばらんにいろいろ楽しくお話しましょう、というのが企画の趣旨です。講演は、第1部が「典型的な日本料理(外食編)」、第2部が「典型的な日本料理(家庭料理編)」、第3部が「エカテリンブルクで作る、日本の家庭料理」という3部構成で行われました。

講演の構成

講演は日本語で行われ、ロシア人通訳者による逐次通訳が入りました。今回の通訳の方は、大変テンポよく通訳してくれる人で、良い印象を持ちました。私も何度か逐次通訳付きで講演したことがあるのですが、話した時間とほぼ同じ時間でテンポよく通訳してもらうと話す方としては話しやすいものです。ロシア語の聞きやすさの方は私には判定できませんが、講演者視点ではとても良い通訳だったと思います。

講演冒頭の様子。左が妻(中島和香子)、右が通訳のアリーナさん

聴衆の皆さんは、最初から最後までメモを取りながら非常に熱心に聴講されておられました。また講演後の質疑応答も、全部で20問以上の質問が飛び出し、大変盛り上がったように思います。質疑応答の後も、記念撮影のリクエストに答えるのに妻はおおわらわだったようです。私は商売柄、学会での学術講演はよく聴講するのですが、ここまで盛り上がる講演は学問の世界ではそうそうあるものではありません。以下、講演のポイントを幾つかかいつまんで紹介してみます。

日本の食を外国人に説明する場合に外せないのは「寿司」だと思いますが、外国人が知っている寿司の知識は日本人の視点からするとかなり偏っているような印象があります。江戸前寿司を知っている人はまだ良い方で、アボカドやチーズが入った寿司を本物の寿司だと思っている人も少なくありません。妻の講演では、日本で実際に食べられている寿司が写真とともに紹介され、外国で出回っている寿司との違いが説明されました。江戸前寿司以外の寿司、例えば押し寿司やちらし寿司、手巻き寿司などについても説明がありました。ロシア人の皆さんは「寿司にこんなに多くの種類があったとは知らなかった」と感心されていました。

押し寿司の説明

寿司と並んで「すき焼き」も知名度の高い日本料理ですが、すき焼きの解説の中でロシアの方たちが大きく反応しておられたのは「すき焼きは生玉子につけて食べる」というくだりでした。日本以外の国で「生玉子」を食べる習慣がある国はあまりありません。ロシア人から見ると、生玉子を食べるというのはかなり気持ちの悪い行為のようで、渋い顔で話を聞いておられる方もおられました。

すき焼きの説明

「人気の郷土料理」についての説明の中で、昨年末にプーチン大統領が訪日した折に山口県でふぐ刺しを食べたというエピソードが紹介されました。「随行員が事前に河豚の試食を行った」という話が紹介されたときには、皆さん興味深げでした。

郷土料理の説明

日本食の本来の基本が「一汁三菜」であること、またそれが家庭料理や懐石料理等の基本となっていることなどが紹介されました。しかし、「一汁」をロシア語でアディン・スープ(英語でone soupの意)などと通訳されると、本来の意味が伝わっているか若干不安にはなりました。

一汁三菜についての説明

日本の家庭で作られる典型的な料理の紹介の中で「カレーライス」が紹介されました。日本のカレーとインドのカレーが別物であり、日本のカレーは欧州を経由して伝わったカレーで「欧風カレー」と言われることもある、という話が出ると皆さん大きく頷かれていました。「歴史的な経緯を考えると自然に理解できる」というような感想も聞かれ、ロシアの皆さんの教養の深さに感心しました。

家庭料理いろいろ紹介

外国人の方が苦手な日本食の典型例として、漬物、納豆、梅干しが紹介されると、納豆についてはご存じの方も多いようで、臭い匂いの話には大きな反応が出ました。皆さんの感想を聞くと、実際に納豆を食べたことが有る方の中には「納豆は大好きです」という方もおられたので一概にロシアの方がが納豆を嫌いというわけではなさそうです。確かに、ウォッシュタイプのチーズなどは納豆の比ではないくらい臭いですし、発酵食品好きの方なら納豆の臭いも受け入れられるのかもしれません。

漬物、納豆、梅干し

講演の最後に、エカテリンブルクで入手できる材料だけを使って作る日本食の紹介ということで、妻が考案したエカテリンブルク版の「肉じゃが」が紹介されました。エカテリンブルクでは薄切り肉が入手できないのでそのかわりにひき肉を使用します。また出汁は、スーパーで売っている魚の燻製からとります。それ以外は日本の普通の肉じゃがのレシピと同じです。肉じゃがの紹介が始めるとみなさん熱心にメモを取られていました。

肉じゃがの作り方

この後、質疑応答の時間となりましたが、非常に多くの質問が出て大変盛り上がりました。例えば「日本というと桜が有名ですが、桜料理はありますか?」、「日本料理の中かで、薄力粉と強力粉はどのように使い分けられますか?」、「日本では牛肉が食べられるようになったのは比較的最近になってからだと聞きましたがそれはなぜですか?」、「美味しくコメを炊くにはどうすればよいでしょうか?」、「ロシア人は山で山菜やキノコを採って食べますが、日本人は山で何か採って食べますか?」、「すきやばし次郎について教えてください」みたいなおもしろい質問が沢山でていました。概して、皆さん日本の食について大変詳しく、ロシアの皆さんの日本食や日本に対する興味の強さをひしひしと感じる一日でした。

2017年4月9日日曜日

【第37回】ロシアに適した研究分野

<<<筆者注:この記事はウクライナ侵攻前に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>

2017年4月2日日曜日

【第36回】ロシアの研究職の公募が全く出ないわけではないが

<<<筆者注:この記事はウクライナ侵攻前に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>