正直に言うと、私の場合、仕事で夜空を見上げることはほとんどありません。観測に出かけた時には、天候の確認ついでに夜空を見上げることはありますが、観測に出かけること自体が実はそれほど多くないのです。今まで一番多く観測した年でも、日数にすると年間で3週間程度です。少ない年だと1週間も観測しません。また、最近は天文台には行かずデータだけもらう場合も多いので、ますます自分で観測する機会は減っています。
とはいうものの、天文学者も基本的には宇宙や天体に興味がある人間なので、星空を嫌っているという訳ではありません。理論物理学者のリチャード・ファインマンは、友人の画家に「科学者は花を見ると、細胞や遺伝子については語るが、花そのものの美しさを理解していない」と言われた時に、「それは全く違う。科学者も人間であり、人間である以上、あなたと同じように花の美しさは当然理解できる。そして、科学者はあなたたちが理解していないより深い花の美しさも知っているのだ」と答えたという有名なエピソードがあります。
私は同じことが天文学者にも言えるのではないかと思っています。天文学者は肉眼で見る以上の宇宙の美しさや面白さに日々触れているため、肉眼で夜空をみることに比較的興味が薄いのかもしれません。ただ、そう言う私ですが、日食や流星群の時には外に出て、純粋な好奇心で空を見上げることもあります。
ウラル連邦大学天文台から見える星空 |