2017年3月26日日曜日

【第34回】日本文化好きなロシアの人たち

エカテリンブルクに住んでいて感じることの一つが、ロシア人の中には、日本に(もしくは日本の文化に)好感を持っている人が多くいるということです。ロシアに住んだことのある他の日本人に聞いても、私と同様に「ロシアは親日的」とか、「ロシア人は日本文化が好き」と感じる人は多いようです。

エカテリンブルク市内には現在4つの日本語教室が存在し、ウラル連邦大学の日本語学科の関係者から聞いた話では、市内に200人から300人程度の日本語学習者がいるとのことです。日本人居住者が10-20人程度しかいないこの街で、200人以上の日本語学習者がいるというはかなりの驚きです。

エカテリンブルク市日本語弁論大会で審査員を務める筆者(右端)
年に一度、エカテリンブルクの日本語学習者が学習の成果を競う。

私の職場のウラル連邦大学自然科学研究所にも日本語を学んでいる学生さんが何人かおられます。どのようなモチベーションで日本語を学んでいるのか聞いたところ、その学生さんの場合は、日本の「漫画」を日本語で読みたいというのが主なモチベーションとのことでした。この学生さん以外にも、これまでエカテリンブルクの日本語学習者の方々に日本語学習のモチベーションを尋ねたことが何度かありますが、一番多い理由は、やはり日本の漫画、アニメ、ドラマ等を日本語で楽しみたいということのようでした。一方で、日本の企業に就職したい、日本語を活用してキャリアアップを図りたいという実利的な理由で日本語を学習している人にも出会ったことはありますが、そのような方はどちらかというと少数派のようです。(ロシア人の若者にとって、キャリアアップのための外国語学習となると、英語以外では現在は中国語に人気が集まっているようです。)

若い外国人が、日本の漫画やアニメ等を楽しむことをモチベーションとして日本語を学習するという現象は、ロシア以外の外国でも、最近はよく見られる現象だと思います。しかし、私がロシアで特に興味深いと思うのは、若い人たちだけではなく、ソビエト時代に教育を受けたシニアな人たちの中にも日本の文化に興味を持っていたり、比較的親日的な人が多いということです。なぜそうなるのか、私の知識不足で明確には答えられないのですが、職場の60代の同僚から面白い話を聞いたことがあります。彼は「今の若い人たちの日本好きは軟派な感じがします。我々の世代は日本文学から入ったものです。学校の図書室には露文に翻訳された日本文学全集が揃っていました」という話をしていました。

60代の同僚たちが学校教育を受けたのはもちろんソビエト時代ですから、学校の図書室に並べる本にも国の監査が入っていたことは想像に難くありません。そのような状況の中でも、露文に翻訳された日本文学全集が学校の図書室に並べられていたということは、国レベルで日本に対する知識を深めるべきだという明確な意図があったのではないでしょうか。

同僚に「それで、どんな作家の本を読みましたか?」と尋ねると、「いろいろ読みましたよ。例えば、ソウセキ、ダザイ、バショウ、、、、」など、スラスラと軽く1ダース以上の日本の作家の名前が出てくるのには驚いたものです。同僚は大学教員なので平均的なロシア人よりも教養レベルが高いという面は多分あるでしょう。しかし、それにしても例えば日本の大学の理学部の教員が、ロシア文学の作家をスラスラと1ダース以上挙げられるかというと、そういう人はあまりいないのではないか思います。やはりロシア人(ソ連人)の日本への興味はそうとう強いのではないでしょうか。