<<<筆者注:この記事はウクライナ侵攻前に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>
荷物を配達するまでの所要日数
これはどの業者でもほぼ同じで、船便の場合60日から80日程度、航空便の場合は10日から14日程度のようです。ただしこの所要日数はモスクワまでの日数なので、モスクワ以外の都市に引っ越す場合は1-2週間余計に日数がかかるとのことです。また、通関書類に不備があったり、書類を揃えるのに時間がかかるとさらに日数がかかる場合があります。
通関の種類
通関には免税通関と課税通関の二通りがあります。免税通関が適用されるのは以下の条件に当てはまる場合です。diplomat cardは外交官の場合なのでほとんどの人には無関係でしょう。初めてロシアに引っ越す場合は二つ目の条件により免税通関を利用できそうです。(ただし、免税通関の場合、揃えなくてはいけない書類の数が増えます。しかし、後述するようにロシアの関税はかなり高いので、予算の限られている私の場合、ここで手抜きするわけには行きません。)
・免税通関が適用される条件
「ロシア外務省発行のDiplomat cardもしくは、Yellow card を取得している場合」または、「航空便の重量が30kgs以内で、ロシア赴任後最初の貨物の場合」
「航空便の重量が30kgs以内で、ロシア赴任後最初の貨物の場合」は、免税通関できるのは最初の1回のみ、なおかつこの条件のもとでは本人が到着前の通関は不可。
運搬経路
運搬経路は業者によって変わりますが、ヨーロッパの主要都市を経由する場合がほとんどです。これは、ロシアのややこしい通関書類を揃える間、荷物を据え置くのにヨーロッパの都市の方がなにかと都合が良いからと思われます。以下、例として日通の場合の運搬経路と所要日数を示しておきます。航空便の場合は、モスクワまでの輸送が航空便となります。
<船便の場合>
国内出発地(国内輸送)10ー14日
↓
日本船積港(海上輸送)27日
↓
ハンブルグ(陸上)輸送
↓
転送書類の準備
コブレンツ(陸上輸送)
↓
ベラルーシ経由(陸上輸送)
↓
モスクワ(通関・配達)4-7日
(ハンブルグより計約3週間、季節により約4週間弱)
↓
エカテリンブルクの新居(モスクワからさらに5-6日)
荷物に関する制限(引越し荷物に入れられないもの)
爆発物や違法薬物など常識的に扱えないものは別としてロシア独特の規定をまとめておきます。(細かな規定がいろいろとあるようですが、私の引越に全く関係のないもの(例えば、高額の骨董品や楽器など)に関する規定は省略します。)
<船便、航空便共通の規定>
・全ての食料品(完全に不可能というわけではない。以下数量制限の項目参照)
・内服用医薬品(完全に不可能というわけではない。以下数量制限の項目参照)
・タバコ製品(私はタバコは吸わないので詳細は調べていません)
・高周波通信機器(無線etc. 但し、携帯電話は問題ありません)
<航空便のみの規定>
・液体(酒類、日用品、衛生用品など全てのものが対象)
・全医薬品(サプリメント・ビタミン剤含む)
医薬品は下記の条件の範囲内で船便で運ぶしかありません。
・(サンクトペテルブルグ通関に限り)パソコン(デスクトップ、ノート型PC)、
およびPC周辺電化製品(プリンター、スキャナーなど)
私の場合、仕事道具のパソコンを取り上げられてはたまったものではありません。この項目は要注意です。
<数量制限のある品物(船便のみ)>
・アルコール飲料 : 1リットルまで
・医薬品は救急箱程度まで
・食料品発送について
ロシアで食品を輸入する場合、日本から発送する前に食品の成分と品質に関する検査を受け、ロシア当局から承認される必要がある。検査には日数と費用、成分表を初めとする書類やサンプルが必要となり、実質個人での手続きが困難であるため、引越荷物として食品は受託していない業者がほとんど。但し、一定量の引越荷物に含まれる食品が少量であれば、税関の判断で事前調査を省略し、輸入が許可される事例もあるため、一定の条件のもと受託してくれる業者もある(例えば日通)。以下条件(日通の場合)。
1.食料持ち込みに関する数量制限
日通規定によるMサイズのカートンで2箱を限度とし、且つお荷物全体量の20%未満。但し、税関の見解が事前通知なく変更となる場合がある。出荷前に日通がロシアに確認致してくれるらしい。
2、持ち込みが禁止される食品
輸入禁止品として到着港であるドイツ ハンブルグ港にて輸入が禁止されているため以下の食品は発送出来ない。
*全ての肉製品及び肉エキスを含む食品
*乳製品
*卵、卵を使用している食品
3.食品運搬の受託条件(日通の場合、以下の可能性があることを承知の上なら運搬可能)
(1)成分検査: 成分検査によって、開封され内容量が減る可能性がある。
(2)費用負担:(1)の検査により発生する保管料や手続費用等を請求される可能性がある。
(3)廃棄処分について: 輸入が許可されず廃棄される可能性がある。
課税される品目
免税通関が適用される場合は原則全て免税。課税通関の場合は以下の様な条件が適用される。
- 荷物の申告価格がEUR1,500以下で、かつ荷物の全重量が50KG以内の場合は免税。この条件は、通常容易に超過する為、超過分に対して、申告価格の30%、またはEUR 4/KGの税金が課される。
- 関税の支払いには、250ルーブルの通関手数料が必要。
- モスクワ通関の場合、関税額に対して3%の通関業者への手数料が発生。(サンクトペテロブルグ通関の場合は発生しない。)
- 関税の立替え費用として、上記の合計金額に対し10%の手数料が発生する。
以下の品物に対しては、一時輸入対象品目として、帰国時に持ち帰ることを前提として免税にて
輸入が許可される。但し、通関時には依頼主(つまり私)みずからの立会を要求される場合がある(これは適用されると悲惨。モスクワまで行かなくちゃいけない…)。
<各1個まで>
ビデオ、ビデオカメラ、カメラ、DVDプレーヤー、レコードプレーヤー、ラジオ、双眼鏡、TV(42cm以上)、パソコン
<2個まで>
携帯電話
<明確な個数の制限がない品目>
宝飾品、楽器、車椅子、ベビーカー、チャイルドシート、スポーツ用品、透析器、ペットなど
(通常の家族が送る量として多すぎる場合、問題が発生する可能性あり。)
通関に必要な書類
1.免税通関の場合に必要な書類
- パスポート(顔写真のページ)
- 内容品メモ
- 海外引越一貫輸送契約書
- 出国を証明する書類
- 食品リスト
- 査証(ビザ)
- パスポート(入国印のページ)
- 通関委任状
- 滞在登録書
- 駐在員カード、または労働許可証
- 税関へのレター
- 外交官カード(Diplomat card)またはYellow card
注:「航空便の重量が30kgs以内で、ロシア赴任後最初の貨物の場合」は、1回に限り免税通関できるという規定があるので、この規定によって免税通関を行う場合は最後の書類は必要ない。(そもそも、外交官でないと入手できないと思われる。Yellow cardについては要確認。)
2.課税通関の場合に必要な書類
- パスポート(顔写真のページ)
- 内容品メモ
- 海外引越一貫輸送契約書
- 出国を証明する書類
- 食品リスト
- 査証(ビザ)
- パスポート(入国印のページ)
- 通関委任状
- 滞在登録書
- 駐在員カード、または労働許可証
- 税関へのレター
通関に必要な書類の詳細
・パスポート(顔写真のページ)
顔写真が鮮明に判別できる様、薄めにコピー。
・内容品メモ
次の通り荷物の内容が明確に判別できるように記載する(ここまで細かた記載を要求するのは渡した今まで経験した国の中ではロシアだけです。これ大変なんです…)。
<アクセサリー> 装身具かインテリア小物かの区別とそれぞれの詳細な記載
<日用品・雑貨> 具体的な名称を記載
<電気製品> 電気製品ごとの名称(アイロン、シェイバー、ドライヤー等)
※モデル名、シリアルNo.、原産地名を記載
<置物・人形> 種類(瀬戸物の人形、ブロンズの人形等)
<家具> 具体的な名称(箪笥、ソファー、テーブル等)
<趣味用品> 具体的な商品名称(釣具、画材、刺繍材料等)
<楽器> 具体的な楽器名。
※ギターの場合はクラッシックギターか、電子ギターかの区別が必要
<スポーツ用品> 具体的なスポーツ用具名の記載
<部品> 何の部品かわかるような具体名の記載
<PCパーツ> 具体的な部品名の記載(HDD,ビデオアダプター、キーボード等)
<スキー用品> 具体的な名称(スキー靴、スキー板、スキーウェアー等)
<健康用品> 具体的な名称、用途の記載
<(船便のみ)アルコール飲料> ボトルごとに種類と容量明記
<(船便のみ)食品> 食品と記載し、詳細は食品リストへご記入下さい。
・海外引越一貫輸送契約書
日通の場合、日本側営業担当者より、用紙と記入例が送付してもらえる。
・出国を証明する書類
渡航と出荷のタイミングによって用意する書類が異なる。(詳細が分かり次第情報を追加します。)
・食品リスト
到着港で必要な書類。この書類は、食品の有無に関わらず必要。日通の場合、書式と記入例をもらえるとのこと。
・査証(ビザ)
赴任先の社印が押印されたコピーを1部用意する。(学生の場合は、社印は必要なし。)
・パスポート(入国印のページ)
赴任先の社印が押印されたコピーを1部用意する。(学生の場合は、社印は必要なし。)
・通関委任状(これ大変そう)
公証人認証入りの原本を1通、認証コピー2通が必要となります。(日通の場合、ロシア国内の営業担当者より、フォームを送付してもらえる。これはもう日通を使うしか無いか…。)
通関委任状は公証人役場(ロシア国内)で認証が必要。公証人役場には本人が出向く必要があり、手続きの際にパスポートとビザの原本の提示を求められる。(これに関しては詳細が全く不明なので、状況が分かり次第情報を追加しようと思います。)
但し、ロシア入国後すぐに、ビザの更新手続きをされる方は、ビザの更新手続きに入る前に「通関委任状」の取得をする必要あり。先にビザの更新をすると、パスポートを2週間程度預けることなり、その間「通関委任状」を取得することができない。航空便の場合は、「通関委任状」を取得後に荷物を発地から発送となる。
・滞在登録書
ロシア国内での滞在地で取得したものが必要。
・駐在員カード、または労働許可証
駐在員カード、または労働許可証のコピー(社印押印したもの)が1部必要。ロシア国内で入手する。
・税関へのレター
日通の場合、海外側営業担当者より、フォームを送付してもらえる。(これも詳細が分かり次第、情報を追加しようと思います。)
家族名義の荷物の扱い
原則論として、ロシアでの引越荷物の輸入は労働許可証などを所持する方に限られる。したがって、労働許可証のない家族名義では通関は困難。
ただし、”運用上は”労働許可証が無くても申告を受託されているために、家族名義も可能。(事前に引越し業者には連絡の必要あり。このへんがロシアのダブルスタンダード具合を表している。)
関書類が不備の場合どうなるか(日通の場合)
<船便の場合>
2通の場合、荷物がハンブルグ(ドイツ)に到着するまで(目安:日本での引取作業後5~6週間後)に、入国および輸入通関に必要な書類を準備するよう求めらっる。上記時期までに必要書類の準備の目処がたたない場合、ハンブルグにて一時保管する必要があり、モスクワへの発送が遅れる。
<航空便>
原則、本人入国後、モスクワにて輸入通関書類準備の目処がつき次第、ロシア日通からの指示で
出発地からの発送手配となる。現地での受け入れ準備の確認が取れないままの発送は、モスクワの空港における保管料の発生や、お荷物の保安面からもやるべきではない。
ちなみにロシアでは通関検査が行われる確率は原則100%である。