<<<筆者注:この記事はウクライナ侵攻前に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>
発行されたビザスタンプ(就労ビザ) |
さて、エカテリンブルクにおける住居探しに関してウラル連邦大学とのやりとりを第6回に掲載しましたが、大学側が提案してきた大学寮の条件面にどうも不安があるので、「賃貸アパート探しを大学が手伝ってくれるかどうか」、「賃貸アパートを探す間のホテル滞在費用を大学がサポートしてくれるかどうか」といった質問のメールを大学側に送りました。それに対して、あらためて担当者から、「当面は大学寮に入ってもらうことを想定している」と念を押すメールが返ってきました。(この辺の強引さはなんとなくロシア的な気がします。ただ下記のようにそれなりの理由はあるようです。)
アパートを探す場合、ロシアでは新学期が9月に始まる関係で8月や9月に良い物件を探すのは非常に難しいそうです。また、8月や9月に賃貸物件を探すと、家賃を不動産屋にふっかけられることもあるそうで、アパートを探すにしても8月と9月は避けたほうが良いということでした。また賃貸アパートを探す間のホテルぐらしに必要な費用はサポートできないという返事でした(そういう予算はないそうです)。このような事情なので、当面は大学寮に入るしかなさそうです。大学寮についてはいろいろ不確定性が多いのも確かなのですが、ロシアの大学寮に住むなどという機会は、普通の日本人にはそうあることではないと思うので、この際楽しませてもらおうと思っています。(それに、格好のブログネタにもなりますし。)
また、引っ越しの際の航空券について代金を大学で払ってもらえるか質問したところ、「そういう予算はないが、着任の2ヶ月前から働き出したことにして給料を2ヶ月分余計に払うからそれで引越し費用を何とかして欲しい」という返事でした。
大学側とやりとりしていて少しづつわかってきたのですが、ロシアでは目的別に細分化された予算があるにはあるのですが、それを運用するには異常なまでに事務手続きに時間がかかるようで、極力目的別予算の運用を避けようとするようです。上の航空券の件もその一例で、給料を上乗せするほうが手続き上簡単なので給料の形で引越し代を払うということのようです。
他にも同じような例があります。雇用の条件面について話し合っている時、論文のページチャージについて質問したら「ロシアではページチャージはグラントでカバーされない」というのです。日本や欧米の感覚でいると、「はぁ?」と聞き返したくなりますが、これも状況は似ていて、論文を出版するとページチャージ程度の「報奨金」がグラントから給料に上乗せされるのです。ページチャージを払う必要があるならこの報奨金で支払ってくれというわけです。もちろん報奨金という形で支払われるのでページチャージのないジャーナルから論文を出版すればそのお金は自分の懐に入れることができます。(このような理由があるので、ロシアの研究者はページチャージのないジャーナルによく論文を投稿します。)
どうしても目的別予算で買わざるをえない物品など、例えば共用プリンターのトナーやプリント用紙などは本当に大変で、注文してから物品が届くまで半年以上かかるそうで、我慢の限界に達して自腹で購入する人もいるとのことです。昨年の滞在中に研究室のプリンターを使わせてくれるように頼んだら現地スタッフに嫌な顔をされたのですが、背景に上のような事情があることを最近知りました。
まあいろいろ話はそれましたが、なんとか就労ビザが取得できたので、一応手続き上はいつでもロシアに渡航できる状態になりました。これから1-2週間の間に、引越し業者の選定、航空券の予約、当面の駐在者向け医療保険の選定と購入などを行う予定です。(あと、ウラル連邦大学の共同研究者とやっている研究の論文もかかねばなりません…。)