2022年4月10日日曜日

【日記】2022年4月9日(土) 、フェンス際で語らうカップル、原始惑星状星雲から始まる壮大な宇宙のストーリー

キャンパス内の学生に対する封鎖管理が始まってもう一ヶ月くらいになるが、WeChatのモーメンツへの学生たちの投稿を見ていると、キャンパスのフェンス際に座り込んで外を眺める学生がいたり、カウンセラーに相談に行く学生がいたりして、かなりストレスが溜まっているように思える。最近、フェンスを挟んで会話しているカップルを時々見かけるのだけど、あれなんかは、もうなんだかもう悲劇の一場面のようにさえ思えてくる。

中山大学珠海校区の東側はビーチに面していて本来は非常に開放的な雰囲気なのだけれど、封鎖管理が始まってから、学生が外に出られないように、簡易な金網のフェンスで覆われてしまった。キャンパス内はかなり広いのだけれど、それでも外に出られないとなるとストレスが溜まるのだと思う。

私はどちらかというとインドア派で、数日の連休ぐらいだったらずっと家にこもって本を読んでいたりすることも多い。なので、自分が封鎖管理を経験するまでは、そのストレスの程度がリアルには想像できなかった。結局のところ、自分が封鎖管理を経験して思うのは、引きこもっているのと閉じ込められているのとでは心理的に大違いだということだ。この「閉じ込められているストレス」は、閉じ込められている空間の広さとは無関係に存在するのだと思う。家を封鎖される場合でも、区画単位の封鎖でも、閉じ込められれば程度の差こそあれストレスは必ず感じる。

研究グループのポスドクさんが頑張りで、私も共同研究として参加しているプロジェクトの論文がついに出版された。原始惑星状星雲と呼ばれるタイプの天体の分子ガス中にどのような分子が存在するかをスペインの電波望遠鏡を使って調べたという内容だ。原始惑星状星雲というのは、太陽程度の質量の星が進化の末期にたどり着く天体だ。

我々の太陽もこれから50億年ほどたつと原始惑星状星雲となる。太陽ぐらいの質量の星は、その一章の最後に大きな変身を遂げる。今まで丸かった形が球対称から外れた形に変わり、また星から吹き出される風(恒星風)の中で様々な分子や塵が作られる。この星から吹き出された分子や塵の多くは、壊れずにそのまま宇宙空間に放散されていく。そして、星から宇宙空間にばらまかれた分子や塵は、新たな星の材料になったり、場合によっては宇宙空間でより複雑な分子が形成される材料になったり、さらには、複雑な分子から生命の材料となるかもしれないタンパク質が合成されたり、そんな感じの壮大な宇宙のストーリーの出発点となる。このような動機が背景にあるため、世界中の天文学者は進化末期の星の分子を詳しく調べているのだ。私たちの研究は、まぁ、ごくごく小さな一歩ではあるが、それでもこういう小さな一歩の積み重ねが、やがては大きな一歩へとつながっていく。科学とはそういう営みである。


最近出版された論文の表紙


中国語学習

単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し。