2017年12月20日水曜日

【第42回】同僚たちのソ連時代に対する思い

今年はロシア革命100周年の年でしたが、ロシア革命とともに始まったソビエト社会主義共和国連邦、いわゆるソ連も1991年に崩壊し、今私の職場に通うロシア人の若い学生たちは、だれもリアルタイムではソ連を知らない世代になっています。

年輩のロシア人同僚など、ソ連時代に教育を受けてきた世代の人たちにソ連の印象を聞くとその意見は複雑かつ様々です。ソ連に対して好意的な意見を持っている人もいれば、非常に否定的な人もいます。

私の職場は大学なので、ソ連の高等教育に関する意見はよく耳にします。概ね高等教育に関しては、ソ連時代を高く評価している人が多いように感じます。実際、ソ連時代には多くのノーベル賞受賞者やフィールズ賞受賞者を排出していたわけですから、彼らの評価もそれなりに説得力があるように思われます。

私は専門上、ソ連時代の物理学の基礎教育について話を聞く機会が多いのですが、私が聞いた話では、ソ連時代の教育課程では、学習の到達度が細かく設定されており、学生は学習の到達度に応じて国から報奨金を得ていたようです。ソビエト時代に作られた物理学のテキストは、非常に水準が高いことが西側諸国でもよく知られていますが、きめ細かく設定された報酬システムも学生の勉強を促進していたように思われます。

しかし、高等教育から離れた話題では、多くの否定的な意見も耳にします。例えば、同僚の奥さんから「私は子供の頃に人形の一つも買ってもらえなかった。大人になってからも、化粧品一つ、まともなものは手に入らなかった。あんな時代にはもう二度と戻りたくない」という話を聞いたことがあります。

ソ連に対する意見は、世代間でも異なりますし、所得によっても異なるようです。単純に古い世代のみがソ連時代を懐かしんでいるのであれば、将来予測も簡単なのでしょうが、若い世代でも懐古的な考えを持つ人もいるようで問題はなかなか複雑です。

取り壊すか保存するかで意見が別れている
ソ連時代に建てられた電波塔。

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