2022年8月31日水曜日

【日記】最近中国に着任する研究者の傾向、倍増した博士課程新入生

2022年8月30日(火) 

朝、Twitterを眺めていたら、中国のよその大学に新たに日本人教授が着任したという話が流れていた。最近、日本人の中国着任情報には「うちの大学で○人目の日本人」という言葉が添えられていることが多いように思う。よりよい研究環境や生活環境を求めて日本を離れることは最早当然の流れとなってきているだ。

なんというか、私のようないわゆる「低偏差値大学」出身者の場合、日本の大学が今のような窮状に陥る前から、「学校歴差別」の影響で、日本社会では思うように生きられない(もしくは、生き難い)状況があった。なので、私なんかが学校教育が終わった後、ずっと外国で働いているのは、ある意味当然だとも思っている。もし、私がどうしても外国で働けない事情があったとしたら、おそらく研究者として生き残ることは出来なかったであろう。

ネット上の論調なんかを見ていると、「(日本の)研究者の世界に学校歴差別は存在しない」と言い切る日本人研究者が不思議なほど多いのだが、そういう発言を知ている人たちは、十中八九間違いなく「高偏差値大学」の出身者であり、差別される側の事情を知らないだけなのである。私の体感としては、日本のアカデミアにも、有形無形様々の学校歴差別が根強く残っており、ちょっとやそっとの業績でそれを跳ね返せるものではない。仮に学校席差別を業績で跳ね返して日本の有名大学に就職したところで、また職場の内部で苦労することは想像に難くない。

まぁ、それはともかくとして、最近の傾向としては、以前ならば日本の地方の私大なんかにシレッと収まっていたであろう有名大学出身の研究者が、中国に次々に移籍している状況がある。これは、やはり日本の大学の居心地が、有名大学出身の研究者にとっても悪くなってきている証左なのだろう。

私なんかの場合だと、最初から外国で職を得ることしか考えていないので、履歴書に書く内容も外国で評価されるような経験が中心だ。ところが最近中国に移籍知てくる人の履歴を見ると、日本の大学での非常勤講師の経験が豊富だったり、明らかに中国に来る前は「国内志向」だったことが分かるものが多い。こういう類の「可能なら日本に居残りたかった有名大学出身者」が中国に流れてきているという状況に時代を感じる今日このごろである。

さて、来週から担当講義が始まるので、講義の準備を本格化させている。講義の基本的な内容は夏休みの間に既に仕込んであるので、本当の直前の準備というのは、内容の復習、プレゼンの仕上げと改良、必要な教材の準備といったことになる。

秋学期に受け持つ講義は大学院博士課程に入学してくる新入生向けの必修科目である。必須科目なので、基本的には新入生の数がそのまま受講生の人数ということになる。今回の講義では、ある教材を人数分用意する必要があるため、教務に新入生の人数を確認したところ、なんと去年と比べて倍増しており、ちょっと驚いた。中国では、学部卒の就職難で大学院に人が流れているとは聞いていたが、まさかここまで増えているとは思わなかった。徐々に中国では大学院に進学するのが当たり前の時代が来そうな勢いである。

最近、デリバリー可能圏内に新しく「海鮮の店」がオープンした。ここの店の一番の売れ筋商品の「蒸し牡蠣」なのだが、この蒸し牡蠣のコストパフォーマンスが異常に良い。なんと一つ0.99元である。もはや採算が取れているのか不思議なくらいの値段なのだが、味の方はしっかりと旨い。

コスパ最高の「蒸し牡蠣」

中国語学習

単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月30日火曜日

【日記】落ち着いた感じの新学期、さまざまな方向に分散する興味

2022年8月29日(月) 

今日から秋学期が始まった。中国の大学は9月に新年度が始まるので秋学期は新入生が入学してくる時期でもある。私が勤める大学にも当然新入生が入学してくるのだけど、学部の1年生の講義は基本的に全て広州のキャンパスで行われるために、私が勤務している珠海キャンパスでは学部の1年生を見かけることはない。大学院の新入生は入ってくるけれど、大学院生ともなると「ピカピカの1年生」感はあまりなく大人な感じなので、9月の珠海キャンパスは比較的落ち着いた感じである。

今年の3月に大学院の入学試験が行われ、そのときに私の研究グループでの研究を希望してくれていた受験生二人が合格となった。ただ、合格したからといって必ずしも入学してくるとは限らない。正直なところ、合格した二人のうち一人が入学してくれば御の字だと思っていた。しかし、今日、教務を通して入学者名簿を確認したところなんと二人揃って入学してきてくれたようだ。二人新入生が来るとなるとかなり忙しくなりそうだが、今までコロナ禍の関係もあってなかなか大学院生が来てくれなかったので嬉しい悲鳴である。

午前中はいつものように語学学習のルーティンと事務作業を片っ端からこなし、午後からは院生との研究打ち合わせ、講義準備、工作許可関係の進捗確認等を行った。どうやら、珠海市当局から工作許可申請についての返事があり、今週の木曜日か金曜日に工作許可を受け取るための書類が出来上がるそうだ。しかし、本当にギリギリの日程である。来週から講義が始まるので、役所に出頭するためには幾つかの予定を変更しなくてはならない。

今日は学生と研究関係の議論をやっているときに、自分で頭がよく回転してる気がした。もしかすると、ここ数日「数理系」の読書量が増えていることと関係しているのかもしれないと自分で推測している。たまに気が向いて、数学の本をしばらく集中的に読む時期が来るのだけど、そういう時期は「脳が数理的」な感じになっており、データの解析などでも良いアイデアが湧いてきたりすることが多いように思う。

それだったら、いつも数学の本を読んでいれば、ずっとよい状態が保てそうなものだが、そこはそうは問屋が卸さない。数学の本を読んだら、その次は必ず「すごく文系な本」を集中的に読みたい時期がやってきてしまうのだ。天文学者という、客観的には「バリバリ理系」の生き方をしているのだけど、不思議なことに、私の脳は数理的な興味に100%全振りしている訳ではなく、いろんな興味の対象の間を行ったり来たりしている。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月29日月曜日

【日記】一日一食で体調の調整、「中年危機」を一読

2022年8月28日(日) 

通常、私は一日二食で過ごしているのだけれど、年齢とともに基礎代謝や筋肉量が減少しているせいか、最近ではどうかすると一日二食でも体重が微増傾向に陥ってしまう。運動量を増加させればよいのだろうけれど、平日は毎日1時間を自転車通勤に費やしているので、一般に健康維持に必要と言われている運動量は通勤によって確保しているはずだ。

というわけで、やはりカロリーの摂取量を調整しようと思い、昨日は一日一食で過ごしてみた。1日だけ食事量を変えたところで体重がすぐに変化する訳ではないが、体感的には体が明らかに軽くなった。どうやら内蔵が疲れていたのかもしれない。というわけで、今日も一日一食で過ごすことにした。

二日前の日記に、西瓜视频で日本映画を合法的に無料で観ることができるという話をしたが、同様のサービスが他にもないかと思って探したところ、どうやら「哔哩哔哩动画」でも同様のサービスを行っているようだ。しかも、ざっと確認したところ、哔哩哔哩の方がより多くの映画を無料で公開している。これで当面の間、週末にワインを呑みながら見る映画に困ることはなさそうだ。

「哔哩哔哩动画」で公開されている日本映画

中年危機 (朝日文庫) Kindle版、河合隼雄 (著)」を一読した。著者は言わずと知れた心理学者の河合隼雄だ。河合隼雄が中年心理を語っているとなれば読むしかないだろうということで、衝動買いした本である。この本は、中年の心理を題材に論じた本なのだがアプローチがちょっと特殊である。文学作品の登場人物を題材として中年心理を論じているのだ。


まえがきを見ていると、河合氏が心理カウンセリングで実際に取り扱った事例をそのまま取り上げるとプライバシー的な問題があるということで、題材として文学作品を取り上げたようだ。ここで取り上げられている小説を既に一度読んだことがある人であればとても楽しめる本なのではないかと思う。私は題材となっている小説をほとんど読んだことがないので、文中の「あらすじ」の説明だけをたよりに読み進めたのだが、心理解説を理解することだけが目的ならが、元の小説を読んでいなくても大きな問題はなかった。ただ、小説を読んでからこの本を読む方が、より正確に著者の心理学的解説を理解することができるだろうとは思う。例によって抜書を少し。
冬のなかに春を見ることが上手になってこそ、中年の次にやってくる老年へとスムーズに入ってゆける。人生の冬のなかに生きつつ、そこに春夏秋冬を見ることができるので、老いが豊かになってくるのである。
人生は未踏峰に登るようなものだから、道に迷って、尾根から少し足を踏みはずしたりもするだろう。右に入りこんだり、左に落ちこんだり、右を見たり左を見たりして歩き続けるのが中年であるといえるし、惑うことにも深い意味があると思われるのである。
「夢」に関する記述で興味深いものがあったので、それも引用しておこう。
人間に夢を見させないようにすると、だんだん感情不安定になってきて、白昼夢を見たりするようになる、という実験がある。これなど、夜のうちに砂を除く仕事をしなかったために、だんだんと家が押し潰されてくるのと同じことであろう。
寝ているときに夢を見るということは、それ自体が脳内で様々な記憶が整理されて行くプロセスということのようだ。悪夢を見てうなされ、起きた後に気分が悪いということもあるが、ああいったことも、精神がより悪い状態に陥らないように脳が寝ている間に問題処理を行っているということらしい。そう考えると、悪い夢を見ても納得できそうだ。

中国語学習

単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月28日日曜日

【日記】コーヒーカップの音、思考対象の切り替えでメンタルを休ませる方法

2022年8月27日(土) 

最近、朝食の後にインスタントコーヒーを飲みながらブログを書くのが習慣となっているのだけど、インスタントコーヒーに粉ミルクを入れてかき混ぜているときにいつも気になっていることがある。それは、スプーンとコーヒーカップが接触して出る「音」の変化だ。

何が気になっているかというと、スプーンでかき混ぜている間に徐々に「音程」が上がっていくのだ。別な言い方をすると、音の振動数が、混ぜる回数が増えるほどに上昇するという表現になるだろう。30秒ほどかき回していると大体一定の音程に落ち着くので、インスタントコーヒーと粉ミルクがコーヒーに溶けていく過程で、コーヒーとカップから成る系の固有振動数が変化するということになるだろう。なぜそうなるのか少し理由を考えてみたが、どうもこれは簡単な問題ではなさそうだ。身近なところにも難しそうな物理の問題は多く潜んでいるものだ。

相変わらず暑い日が続いているが、それでも先日の台風が過ぎ去ってから少し空気に秋の香りが交じるようになってきた。職場から「明日から新学期が始まるので、講義の時間に遅れないように気をつけてください」という通知が回ってきた。今年はパスポート更新後の手続きのせいでメンタル的にヤキモキしていたので、十分に休めないまま夏休みが終わってしまった感じだ。

最近、週末に映画を見ることが習慣化してきている。2時間ぐらいの間、映画に意識を集中させていると、丁度良い塩梅に気分転換することができる。大学教員という仕事をやっていると、週末とか平日とかに関係なく24時間、研究や講義について考えることが習性となってしまう。研究者の多くは、大学院生の頃から「四六時中天文学のことを考えるくらいじゃないと天文でメシは食えないよ」みたいなアドバイスをシニアな研究者からもらうことは普通にあることだろうと思う。

私も、そういう意識でずっとやってきて、実際その努力の結果、現在研究者として食えていると言えなくもないと思っている。しかし、そういうやり方が適切なのは、体力も気力も充実している若い頃だけだろう。ある程度の年令になってくると、仕事でのパフォーマンスを維持するためには、逆に学問との距離を適切に保つことも必要だと思う。

とはいうものの、学問と適当な距離をおくといっても、「今日は研究のことは考えない」みたいな意識のコントロールを私は上手く行うことが出来ない。どうも私の脳は「○○しない」という命令にはうまく従ってくれないようで、一旦思考が走り出したら自分の意志で思考を「止める」ことができないのだ。そして、疲れ果ててしまうこともしばしばである。

こういうときに役立つのが「別の物事に集中する」という方法である。思考を呈することは不可能でも、「思考の対象を別の物事に切り替える」ことは可能なのである。上述のように映画に集中するのも一つの方法だし、ピアノの練習や中国語の学習からも同様の効果を得られる。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月27日土曜日

【日記】ワインのソーダ割り、「西瓜视频」はなかなか使える

2022年8月26日(金) 

来週から秋学期が始まるということで講義の時間割が発表された。通常は、まず規定が厳しい学部の講義の時間割が先に組まれ、その後に大学院の講義日程が組まれる。したがって、大学院の講義日程が発表されるのは、だいたい学期開始の直前になることが多い。秋学期は私は大学院の講義を週2コマ担当することになっているのだけど、例によってなかなか時間割が発表されず、歯医者の予約が入れられなくてヤキモキしていた。時間割が発表されたので、ようやく9月以降のスケジュールを決めることができる。

秋学期に担当する週2コマの講義は中2日と中3日の間隔で、両方とも3-4限目(午前10時10分開始)というベストな割当だったので本当に助かった。春学期は1限目の学部講義を担当したのだけど、うちの職場の1限目は8時開始なのでなかなか過酷だ。寮に住んでいる学生ですら遅刻が多発するのに、学外に住んで自転車通勤している私にしてみると、1限目の講義はもはや何かの修行をやっている感じにすらなる。まぁ、とにかく今学期は、1限目を避けることが出来たので御の字である。

すでに日記に何度か書いているが、今年の7月以降は、パスポート更新後の関連手続きで大変な苦労をしている。しかも、新年度が来週から始まろうとしてる現在に至っても、まだ手続きが完了していない。7-8月はこの件で多くの時間を取られたために、秋学期の講義の準備がまだ完全には終了していない。一応8割程度は終わったのだけど、一部準備が完了しないまま新学期に突入しそうだ。外国に外国人として住んでいると、どうしても外国人ゆえに発生する難しい問題を避けられない場合に遭遇するものだ。

金曜日ということで、夜はワインを飲みながら映画を鑑賞するなどした。新学期も近く、いろいろと日中にやりたいことや、やるべきこともあるので、あまり強い酒は飲むことが出来ない。そういう制約の中、最近気に入っている酒の飲み方が「ワインのソーダ割り」だ。ワインを開けたら、一口だけは普通にテイスティングするのだが、その後はソーダで割って飲む。案外これが美味しいのだ。

ワインのソーダ割りは、既に確立したカクテルの一分野でもあるようで、白ワインをソーダで割ると「スプリッツァー」、赤ワインの場合は「ティント・デ・ベラーノ」と呼ばれるらしい。昨夜はロゼをソーダで割って飲んだのだけれど、これもとても美味しかった。ワインのソーダ割りは、暑い時期に氷を浮かべて、ビール感覚でゴクゴク飲めるところも良い。

映画の方はというと、先週に引き続き「西瓜视频」で日本映画を見た。「西瓜视频」の映画は違法アップロードではなく合法的に公開されているので画質や音質に欠損がない。しかも、CMが入らないのが良い。「西瓜视频」の映画は、中国国外からは見ることができないが(VPNを使えば見られるかもしれないけれど)、中国に住んでいる日本人にとっては嬉しいサービスである。先週観た「検察側の罪人」は中国語に吹き替えられていたが、多くの作品は日本語のまま中国語の字幕付きで公開されているので、中国人向けのサービスであっても言語的には問題なく楽しむことができる。

昨夜みたのは「鉄道員(ぽっぽや)」という、高倉健主演の映画だた。1999年に公開された作品で、当時非常に評判になったことは覚えている。しかし、1999年ごろ私は大学院博士課程に在学中だったということもあり、この時期に世の中で流行していたものについては私は本当に無知である。この映画もタイトルは知っていたものの一度も観たことがなく、公開から二十数年の月日を経て、初めて一通り鑑賞した。

映画の内容については、いろんな場所に既に情報があるのでここでは触れないが、ひと通り見て最初に思ったのは、この20年ほどの間の「言語表現の変化」だ。今この映画を作るとなると、最近のドラマや映画では決して出て来ない言葉の表現が幾つかあることに気づく。つまりは、この20年あまりの間に、映画における言語表現にそうとうな制限が加わっていることが明確に分かるのだ。

この映画を見て私が気づいたような「言葉遣い(に対する制限)の変化」は、ある種の社会階層に属する人にとっては勝利なのだと思うのだけど、逆に別の価値観を共有するある種のカテゴリーに属する人にとっては敗北、もしくは「文化の劣化」と捉えられなくもないかもしれない。科学技術的な観点からは、人類というのは単調増加的に進化し続けているように思えるが、文化的にも同様に進化し続けているかと考えると、必ずしもそうではない面もあるかもしれない、みたいな、まぁ、そんなことを考えながらこの映画を鑑賞していた。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年8月26日金曜日

【日記】台風対策が施されたウルトラマン、「先が見えない国」での人生設計

2022年8月25日(木) 

朝から台風9号の影響で猛烈な風が吹いていたため、今日も自宅で仕事することにした。体感的には、市内の出勤や通学が法令によって停止される「赤色警報」が出ているだろうと思ったのだけれど、僅かに規定に届かなかったようで「黄色警報」に留まっていた。もしこれが学期中の講義を行う日であれば、レインコートを来て強風の中を出勤しなくてはいけないことになるが「本当にこの状況で出勤できるの?」と言うくらいの強風だった。

目下、近所の商店街で「昭和系ウルトラマン展」が開催されているが、マンション管理会社の人が回覧してきた写真によると、会場のウルトラマンにも厳重な台風邪対策が施されていたようだ。うちのマンションは海に面しているために、台風が来ると、台風の勢力の割には強い風が吹くことが多い。毎回台風が来るたびに、海に面した部屋のガラス窓が風で割れるのではないかと心配になる。

珠海で賃貸マンションを探している時、海側のバルコニーの窓ガラスが防弾ガラス並みに分厚いことに驚いたのだけれど、この地域で台風を経験してみると、窓ガラスはもっと分厚くても良いと思うくらいだ。

Twitterを見ていると、今日は「今から日本終了にそなえよ」という見出しがついた米国の有名投資家のインタビュー記事がバズっていた。日本はこれから衰退していくので、その準備をせよということらしい。この投資家が提案する対策は、「第1に、海外に一部資産をおいておくこと、第2に、流動資産を常に持っておくこと」「子供に他国の言語を習わせること」といったことのようだ。

この投資家が言っているようなことは、ロシアにいた時の同僚はほぼ全員普通にやっていたように記憶している。前職場のロシア人同僚たちは、それなりに愛国心が強い人が多い割には、給料をもらったら外国通貨にすぐにスイッチすることや、子供に外国語を身に着けさせることは当然のこととしてやっていたように記憶している。愛国心と国を信用できるかどうかはまた別の話なのだろう。「先が見えない国」の国籍しか持っていない人は、外国での資産構築と外国語の勉強は、これから必須事項になっていくのだろうと思う。

「台風対策」が施されたウルトラマン像

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月25日木曜日

【日記】「全国版リスク地区リスト」が消失、インプット系の仕事は純粋に楽しい

2022年8月24日(水) 

毎朝「広東省衛生健康委員会」という組織の公式WeChatアカウントで、最新の「全国版リスク地区リスト」をチェックすることが1年以上前からの習慣となっているのだけれど、8月15日の発表以降、全国版のリスク地区の情報が更新されなくなってしまった。例によって、なぜ全国版リスク地区のリストを発表しなくなったかという理由の説明はない。近隣の地域については引き続きリスク地区や新規感染者の情報が公表されている。

最近、全国規模のリスク地区数は増加傾向にあったが、リスク地区の設定条件が以前とは変わって来ているので、リスク地区数の増減がそのまま感染状況の深刻度には結びつかないような感じにはなっていた。もしかすると、このリスク地区リストの発表停止は、国の防疫管理政策が変わり始める兆しなのかもしれないと個人的には思っている。

台風が接近してきており、職場に行ったら帰ってこられなくなる可能性もあるので今日は自宅で仕事をしていた。しかし、昨日遅くまで台風情報や職場の台風関係の情報を確認するためにスマホを凝視していたためか、どうも今日は寝不足気味だった。

寝不足の時は、文章を書いたり講義の準備をしたりするような「アウトプット系」の仕事が捗らない。しかたがないので、ひたすら「インプット系の仕事」をやっていた。インプット系の仕事というのは、つまりは「読書」とか「勉強」である。具体的には、講義のネタ本を探したり、見つけたネタ本を読んだり、研究や学生指導に関連した論文を読んだり、まぁ、そんな感じのことである。

インプット系の仕事は純粋に楽しい。とにかく楽しいので、多少の寝不足ぐらいであれば問題なく出来てしまう。本心を言うと、「勉強」だけやって生きていけるんだったらこんなに楽なことはない。本や論文を読んで勉強している時は、至福の時間だ。しかし、勉強だけやっていたのでは誰もお金をくれないので、仕方なく勉強した知識を使って研究したり講義したりしているのである。

寝る前に「マンガでわかる量子力学 日常の常識では計りしれないミクロな世界の現象を解き明かす (サイエンス・アイ新書) Kindle版、福江純(著)」を一読した。著者の福江純さんは、直接の指導教官でこそないが、私が大学院の修士課程に在籍していたときにセミナー等でお世話になった先生だ。福江さんは降着円盤や宇宙ジェット等を専門とする理論分野の研究者なのだが、教育大学の教員を長く務められていたこともあり、科学教育や天文学の広報普及に関しても造詣が深い方だ。


在学時こそ、あまり深く関わる機会はなかったが、最近になって福江さんの本をいろいろと勉強させてもらっている。特に、講義の準備で煮詰まったときなんかに、福江さんの本をパラパラやっていると、「あ、そんな説明の仕方があったのか」とか「こういう図を見せれば分かりやすいか」といった気づきを与えてくれることが少なくない。

この本は「マンガ」と題名にあるが、各項目ごとにまず文章による説明があり、その要点を漫画でまとめるという形式になっている。見開きの左右が、文章による解説と漫画によるまとめという構成になっている訳だ。したがって、漫画部分だけ読んでいたのでは全く内容が頭に入ってこない。しかし、文章を読んでから漫画を見ると、漫画の部分が非常に良いまとめとして機能していることが分かる。漫画のテイストが、ちょっと「萌」すぎな感じはするが、中国の学生はこういうのも好きそうなので、そのうち講義で引用させてもらおうかなと思っている。

「マンガでわかる量子力学」より

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月24日水曜日

【日記】さらに5日待つことになった工作許可申請、地域コミュニティと居民委員会

2022年8月23日(火) 

朝、出勤してすぐに、昨日問い合わせていた工作許可申請の進捗について学内担当者から返事が返ってきた。以前、手続きに15営業日かかるという話を担当者から聞いていたのだけれど、それは学内手続きの話で、役所でさらに5営業日が必要とのこと。大学から市の工作許可担当部門には先週の木曜日に書類を提出したそうだ。という訳で、おそらく今週中には工作許可が降りるはずだ。しかし、まだ何が起こるか分からないので油断はできない。

強力な台風が直撃コースで珠海に接近しているとのことで、「厳重に警戒するように」とのメッセージが朝から何度も入ってきた。中国の「連絡網の発達具合」は相当なもので、コロナ規制にしても台風等の自然災害にしても、国が住民に伝えたい事は、どんなにボケっとしていても耳に入ってくるシステムになっている。

メディアを通して情報が拡散されるのは当然として、それ以外の情報伝達ルートとしては、携帯電話へのSMSの一斉配信、職場からの情報伝達、地域コミュニティからの情報伝達などが挙げられる。中でも「地域コミュニティ」は中国特有のシステムだろう。地域コミュニティのことを中国語では「社区」と呼ぶ。

地域コミュニティと言っても日本の自治会などとは大きく性質が異なり、規模こそ小さいものの社区は公式な行政単位である。例えば、コロナ規制で建物を封鎖するような場合でも、その閉鎖や開放の最終的な判断は社区の居民委員会が行う。それ以外にも、さまざまな許認可権限を持った立派な行政単位なのだ。

スマホも持っていないような情報弱者が社区内にいた場合、居民委員会の担当者が直接戸別訪問して問題解決に当たることもある。まぁ、困ったときには社区と居民委員会が助けてくれることもあるし、逆に権力の末端組織として「めんどくさい」存在になる場合もある。

コロナ禍勃発直後に社区が初めて封鎖管理されたときには、居民委員会と地域の「党員ボランティア」が社区の出入管理を取り仕切る役割を担ったりしていたが、あのようの状況を見ると、中国共産党が中国という国の隅々まで毛細血管のように意思伝達網を発達させていることがよく分かる。

欧米メディア等の論調を見ていると、西側社会の知識人の中には「中国の国民と党を分けて考える」人が少なくないようなのだけれど、実際に中国に住んでみると、国民と党を分けて考えることなどまず不可能だろうというのが私の率直な感想である。

中国語学習

単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月23日火曜日

【日記】見かけなくなった迷彩服、重力波検出プロジェクトの地下実験施設工事

 2022年8月22日(月) 

新学期が近づいてきたので、講義の日程を教務に確認した。時間割はまだ出来上がっていないそうで何曜日の何限目に担当講義が割り振られるのかは未定だが、講義開始日は担当講義の対象が大学院の新入生のため、新学期開始後2週目からとなるようだ。

中国の年度初めの風物詩というと「迷彩服」だ。入学直後の秋学期、学部の新入生に対して「軍事教練」が行われるのだが、そのとき新入生は全員迷彩服を着るのでキャンパス内が迷彩服だらけになる。うちの職場でも、私が赴任後の最初の二年は、秋に多くの迷彩服を見かけた。しかし昨年から、学部新入生向けの講義が広州キャンパスに移された関係で、珠海では迷彩服を見かけなくなった。

職場の裏山で、重力波検出実験プロジェクト(天琴プロジェクト)の地下実験施設の工事が進んでいるが、ここ数日の間に期間工用のプレハブ住宅の数が大幅に増えた。1年ほど前までは、穴を掘削するための発破の音が絶えず鳴り響いていたのだけど、ここしばらくは静かだったので、どうやら掘削の作業は終了し、工事が次のフェーズに移ったのだろう。

地下実験施設工事現場の入り口

天琴プロジェクトは、重力波検出実験プロジェクトだが、ノーベル賞の受賞対象となったLIGOやVIRGOといった地下実験とは異なり、最終目標は「スペース重力波望遠鏡の建設」である。宇宙に専用の衛星を打ち上げて、宇宙で重力波を検出しようという試みだ。そういう訳なので、素人的にはいきなり宇宙に出ていくような想像をしていたのだけど、やはり地上にも大規模な実験施設が必要なようだ(冷静に考えると、それはそうだろう)。

地下実験施設以外にも、天琴プロジェクトに関係したさまざまな実験室が珠海キャンパス内に設置されている。天琴プロジェクならではの実験施設としては「レーダー測距実験室」がある。これは既に完成して活動を開始している。重力波検出器というのは、単純に言うと、レーザー発射装置、鏡、検出器で構成されている。そして鍵となるのが、これらの構成要素間の距離の測定だ。

地上で重力波を検出する場合は、重力波検出装置の全ての構成要素が地上にあるため、比較的コントロールしやすい(といっても、非常に難易度は高いようだが)。これが、宇宙実験となると、それぞれの構成要素が衛星として宇宙空間に浮いているのだから、正確な距離測定が著しく困難となる。

そこで、距離測定の基礎技術である「レーダー測距」の研究が必用となる訳だ。天琴プロジェクトのレーダー測距実験室は一見すると小型の望遠鏡を備えた「天文台」のように見える。しかし、普通の天文台と異なるのは、望遠鏡に高出力の「レーザー発射装置」が搭載されているところだ。天気の良い日の夜に珠海に来ると、うちのキャンパスの裏山からレーザー光線が月や人工衛星に向かって照射されている現場を見ることができるかもしれない。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月22日月曜日

【日記】来週から新学期開始、スライドデザインに関する本を一読

2022年8月20日(日) 

来週から新学期が始まる。確か、在校生対象の講義は来週から、新入生対象の講義は2週目から始まるはずだが確信がないので確認しないといけない。しかし、今年の夏はパスポート更新から始まり、その後の後始末の手続きが延々と続いており未だに完結していないので、全く休みを取れた感じがしない。この調子で行くと、学期はじめのドタバタする時期に本業と並行してパスポート更新の後始末をやっていかなければならない。やれやれである。

夏休みの間、職場から時々「今日PCR検査に行きましたか?」という確認のアンケートが来るのだけど、どういうわけか8月に入ってからはずっと土曜日にそのメッセージが届く。土曜日は次の日に職場に行かないので、時間節約のためPCR検査は受けないことにしているのだけど、土曜日にだけ検査状況を確認されるとずっと長期間検査していないように見えてしまう。まぁ、幸い珠海は今のところそれほど感染状況は緊迫していないので、多分文句は言われないだろう。

研究発表のためのスライドデザイン 「わかりやすいスライド」作りのルール (ブルーバックス) Kindle版』を一読した。先日まで行われていたブルーバックス電子版の割引セールでまとめ買いした本の中の一冊だ。目下、新学期に向けて講義スライドを準備している時期なので、何かヒントになるようなことが書かれていないかと思って、ちょっとこの本を開いてみた。

私も研究発表を行うようになって30年ほどになるので、流石にこの本に書かれていることの大部分は(自分で実行しているかどうか別として)一度は考慮したことがあるように思う。しかし、たまには自分のスライドづくりを客観的に考え直してみるのも悪くはない作業だろう。

こういうデザイン的なことって、センスがある人は、人にアドバイスを貰わなくても上手にできてしまう人も世の中にはいる。例えば、私の妻はロシアに住んでいたときに日本語教室で教えていたが、そこでの講演や授業のためのスライドをとても上手に作っていたと思う。妻は研究発表の経験こそないが、美大出身でデザイン的な感覚は優れているのだろうと思う。

妻のように優れたデザイン感覚があれば、スライドを上手に作ることは自然とできてしまうようだ。これは学生さんにも言えており、論文を最初から上手にかける学生さんはあまり見たことはないが、スライドデザインに関しては最初からかなり上手にできる人も時々いる。ただ、出来ない人は全くできないので、そういう人にはそれなりの指導は必要だろうと思う。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年8月21日日曜日

【コラム】中国に移籍して良かったところ、悪かったところ

第71回

前回のコラム(第70回)では、中国の研究職に興味を持っている人からしばしば聞かれるFAQの一つである「中国で研究職(ファカルティー職)を得る方法」について私見を述べた。今回は、これまたFAQである、中国移籍のメリット・デメリットについて、簡単に自分の考えを述べてみたいと思う。

ここで書くことはあくまでも私見で、メリット・デメリットは、中国に来るまでの私の過去の経験を基準として判断しているので、そのへんは考慮して読んでいただきたい。最近は、外国での就労経験を持たずに、日本から中国へ直接移籍する研究者も増えているので、そういう人から見るとまた別の感じ方があるだろう。


中国移籍のメリット

まず、現職場へ移籍して感じたメリットの方から話をしてみようと思う。まずは、何はさておき最大のメリットとして、雇用契約の内容が過去のものと比べて一番安定していることを挙げなくてはいけない。現職では、5年に一度の業績審査にパスし続ければ定年まで勤めることができる。

中国へ来る前に就いていたロシアの職は、基本的に期限なしの職ではあったが、契約内容が厳格に守られないなど、基本的な部分で強い不安があった。また、それだけでなく、そもそもの問題として「国自体の安定さ」にも一抹の不安があった。案の定と言うか、その後のロシアの状況を見ると、見事に私の不安が的中して「大問題」が勃発したことは皆さんご存知のとおりだ。

ロシア以前の職は、全て雇用期間が限定された有期雇用だったので、現在の職とは比較とはならない。やはり、雇用が安定しているということは、研究者にとってはこれ以上のメリットはないというのが、実際に働き始めて感じる実感である。

次にメリットとして挙げたいのは、職場の「若さ」と「安定度」だ。教職員の平均年齢が若く、とても活気がある。なおかつ、組織としては安定したシステムが既に出来上がっていて、構成員が若いからといって、組織の運営が不安定にはならない。良きにつけ悪きにつけ、国が策定したルールに従って組織が安定的に運営されていることは現在の中国の研究機関の特徴だろう。

以前、台湾で務めていた研究所も構成員が若く活気があったが、それと同時に組織運営も不安定だった。なぜならば、若いメンバーが試行錯誤しながら研究所の舵取りをやっていたからだ。若い人が中心となって組織運営にあたると、どうしても内部で「いざこざ」が少なくない頻度頻度で発生する。

このような状況は、西側ポリコレ的な感覚でとらえると、若い人が言いたいことを言える環境で「良いことだ」と思う人もいるかもしれない。しかし、実際に内部で働いた立場からすると、研究所や大学は、内部政治が安定している方が仕事がしやすいというのが率直な感想である。

現在の職場は、組織の「オペレーションシステム」が国の方針によって基本的に出来上がってしまっているので、構成員は非常に若いにも関わらず、根本的な意見の対立によって職場政治的に不穏な空気が立ち込めるような場面はほとんどない。「西側ポリコレ的な良し悪し」は別として、余計な学内政治にエネルギーをとられないで研究と教育に専念できることは、私は個人的にはメリットだと思っている。

次に挙げたいのが、学生の学習意欲が平均的に高いことである。もちろん学生のことなので、個々にみれば色んな学生がいるのだけれど、押し並べて勤勉な学生が多い。これには中国ならではの事情もあるだろうと思う。中国の大学では、学生は基本的に学内の寮に住んでおり、バイトについても厳しい制限があるので、状況として勉強に集中せざるを得ない環境となっている。また、大学院進学熱が高いので、学部生は卒業後の進学準備のために一生懸命勉強するし、大学院生も学位取得のために熱心に研究に取り組む人が多い。まぁ、理由はどうあれ、学生が熱心に勉強や研究に取り組む雰囲気がある中で教員のモチベーションが上がらないわけがない。

次に、職場環境以外のメリットを考えてみる。まずは、「生活の利便性」が高いことを挙げておきたい。後述するように、生活を立ち上げるまでには、煩雑な手続きが要求されるが、一度生活が軌道に乗れば、様々な用事をオンラインで(スマホで)済ますことができるし、とても便利だ。珠海のような小都市でも、中国の通販を利用すればありとあらゆるものを簡単に入手することができる。

アメリカやロシアに住んでいたときには、日本食が恋しくなったものだけれど、それほど特殊なものでなければ、だいたいの日本食は通販や出前で入手することができる。また、医療に関しても、私が過去に住んだ国・地域の中では、一番恵まれた状況にある。職場の福利厚生の一環として、大学病院を2割負担で利用できるし、大学附属病院には国際医療センターがあるので言語的な不安もない。私は街の中の歯科にもかかっているが、最近は留学経験のある医師が多いので、少し探せば英語の通じる歯科医を見つけることもそれほど難しいことではない。私の担当歯科医も流暢に英語を話すので、安心して治療を受けることができている。

最後に、珠海を含む中国ベイエリア特有のメリットとして、「空気の良さ」を挙げておきたい。中国といえば「大気汚染」というぐらいに、都市部での空気の悪さは有名だが、中国の中でも珠海を含むベイエリアは例外だ。そこそこの都市圏でありながら、これだけ空気の質が良い場所は、中国の中ではベイエリアだけだろう。

私の同僚の中には、大都市圏の超名門大学と中山大学の両方からオファーをもらった人がいるが、彼は空気の質を理由に中山大学を選択したそうだ。私も出張で大都市の空気の悪さは経験しているが、あの大気汚染のなかで10年20年と生活することは、かなりのリスクだろうと思う。


中国移籍のデメリット

さて、次にデメリットについても意見を述べてみようと思う。デメリットとして、まず最初に挙げたいのは「手続きの煩雑さ」だ。これは、生活の立ち上げから始まって、様々な場面で顔を出してくる問題である。中国は光度にIT化が進んでいる国ではあるが、それはあくまで自国民に対しての話である。外国人については、あらゆる場面で「例外扱い」となり、発達したシステムの利便性を十分に享受することは出来ない。

また、うちの職場に特化した問題として、外国人に対するサポートが十分ではないという点もデメリットの一つとして挙げておきたい。外国人として中国で生活していると、さまざまな場面で余計な手続きが必要となるが、その多くは中国語ができないと対応できない。そこで、助けてくれる中国人が必要となるのだが、外国人をサポートする特別の部門は職場に存在しないので、個人的に助けてくれる人を探すことになる。いつも都合良く人が見つかるとは限らないので、苦労するときもある。

面倒な手続きは、具体的にはいろいろとあるのだが、特に面倒だと思うものの一つに「国外送金」がある。中国から国外に送金するためには、かなり多くの書類を揃えて銀行の窓口に行って手続きしなくてはいけない。送金することは可能なのだけれど、とにかく手続きが面倒で、かなりストレスフルであることは間違いない。

職場関連のデメリットしては、まず研究予算の獲得の困難さが挙げられると思う。中国というと研究予算が豊富で、簡単に予算をもらえると勘違いしている外国人が多いのだけれど、研究費の採択率は、分野にもよるが1-2割程度と決して簡単ではない。また、書類は中国語でかかなければいけない項目も多く、外国人にはかなりの負担となる。

また、ティーチングのノルマが案外多いことにも触れておきたい。年間72校時(36コマ)の担当が義務付けられており、これに加えて大学院の講義を担当する必要がある。また、ティーチング研修や、模擬講義による実技審査等もあるため、ティーチングの負荷は決して軽くはない。

最後に、もう2点デメリットを付け加えておきたい。一つは既に上記でも部分的に触れたが、ある程度の中国語能力は必須であることだ。完全に中国語を拒否した状態で長く勤務することはかなりの困難を伴うと思われる。私は個人的には語学学習が好きなので、日々中国語を学び続けることにストレスを感じないが、外国語にアレルギーがある人が中国に来ると辛くなる可能性はあるだろう。

もう一点は「コロナ規制」である。正直な話、現行の中国のコロナ規制は相当な厳しさだ。コロナ規制によってあらゆる予定が最後の瞬間に変更になることはもはや日常茶飯事である。また、あらゆる場所で突然「ロックダウン」に合う可能性がある。ロックダウンされる場所は自宅だけとは限らない、職場や買い物で訪れたスーパーマーケット等、あらゆる場所にいつ閉じ込められるか分からない。このような状況が永遠に続くとは思わないが、現在の中国では明らかな生活のデメリットの一つなので付記しておきたい。

2022年8月20日土曜日

【日記】附属病院利用特典は福利厚生の目玉、「検察側の罪人」を鑑賞

 2022年8月19日(金) 

うちの職場では附属病院を2割負担で利用することができる。こういう職員サポートは中国内では珍しいようで、うちの大学の福利厚生の目玉となっている。聞くところによると中山大学の医学部は中国内でも屈指の名門のようで、附属病院の評判もとてもよい。珠海キャンパスの最寄りにある付属第五病院には国際医療センターが敷設されており、中国語が話せない外国人も安心して医療サービスを受けることができる。私も毎年の健康診断等々で国際医療センターを利用させてもらっている。

先日、一時的に耳の聞こえが悪くなって附属病院の耳鼻科で診察してもらったのだけれど、こういうときにも国際医療センターが間に入って全て段取りをしてくれるので安心だ。附属病院の医療サービスで便利なものの一つが「薬の宅配」をやってくれることだ。オンラインで医師と相談して、医師が特に病院へ行く必要がなく「薬だけ出しておきましょうね」という判断をすると、宅配便で自宅まで薬を送ってくれるのだ。中国ではこのような遠隔医療サービスが最近徐々に発達してきているようだ。

さて、そろそろ工作許可が降りる時期が近づいてきたので、居留証を申請するための書類の準備を始めた。必要な書類はほぼ揃っているのだけれど、全てについてコピーを持参する必要があるので、今日はそのコピー取りを行った。研究や教育関連の事務仕事であれば秘書さんたちにおおっぴらにヘルプをお願いできるのだけれど、個人的な行政手続きとなると、どこまで職場のリソースを使ってよいのか微妙な判断が必要となる。とくにうちの職場は、外国人サポート専用の秘書がいる訳ではないので、他の業務で忙しいところを無理を言って手伝ってもらうことになる。そういう訳で、秘書さんたちにヘルプをお願いするときにも多少気を使ってしまうのだ。

金曜日ということで、夜は多少ワインを飲みながら映画を見るなどした。最近注目しているのが「西瓜视频」という動画サイトの日本映画コーナーだ。中国の動画サイトというと「違法アップロード」の印象が強いかもしれないが、西瓜视频の映画コーナーは合法的に運営されているので、画質や音質も良く満足度が高い。ただし、「中国語吹替版」は言語的な問題で完全には理解できないので、日本語版(中国語字幕付き)の作品を選択して見るようにしている。

昨日は「検事側の罪人」という、木村拓哉と二宮和也が主演の「法曹もの」の作品を鑑賞した。残念なことに西瓜视频には中国語吹替版しかなかったので、途中まで中国語で観た後、別の有料サイトで日本語版をレンタルして続きを最後まで観た。何気なく観始めたのだけれど、なかなかに考えさせる内容の映画だった。善と悪が戦うといった単純な構図ではなく、言うならば「2つのことなる正義どうしが戦う」といった感じのストーリー展開となっている。法に厳格に従う正義の検察官を二宮和也が、超法規的な対応を行ってでも悪は許さないという立場の検察官を木村拓哉が演じている。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年8月19日金曜日

【日記】公共料金の支払は大家に直接、研究競争と妬みの心理

 2022年8月18日(木) 

賃貸マンションの大家から請求が来たので、電気代、水道代とマンション管理費を支払った。支払いはWeChatで大家に送金するだけなので簡単である。日本では賃貸マンションに住んでいても、水光熱費は自分の名義で支払うことが多いと思うが、中国の場合は基本的に全て大家の名義になっており、請求は大家に行く。したがって、住人は水光熱費を大家に支払うことになる。

都会だと、仲介会社がこの辺のやりとりの面倒を見てくれる場合もあるのかもしれないが、珠海あたりだとそのようなサービスを外国人相手に提供している会社は存在しないので、自分で大家とやりとりしなくてはいけない。「料金を支払うくらい簡単なこと」と思われるかもしれないが、初期の頃は中国語が全くわからなかったのでかなり苦労した。結局のところ、上海や北京等の大都会以外では、外国人が中国に住むためには、中国語の学習は避けて通ることはできない。

昨日の日記に書いた「ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見 (幻冬舎新書) Kindle版、野本陽代 (著)」の感想の中で、パールムッターとカーシュナーが率いいる2つの研究チームが激しく研究成果を競い合っていたこと、そしてこの二人が犬猿の中であったことに触れた。また、カーシュナーがメディアのインタビューで発言した「宇宙で一番強い力はなんだと思う? 重力じゃなくて嫉妬なんだ」という言葉を引用した。この二人は、一方的なのか双方向的なのかは分からないが、かなり激しい相互に「妬み」の心情があったようだ。


そういうわけで、「妬み」について専門家が書いた本を読んでみようと思いたち「妬みを捨て幸せをつかむ心理学 PHP文庫 Kindle版、加藤 諦三 (著)」を一読した。この本によると、「妬み」は以下のような条件で発生するのだそうだ。
1. 自分と同等か、それよりも劣っているものが優位に立つ
2. 自分の嫌いなもの、軽蔑しているものが優位に立つ
3. 自分と同性のものが優位に立つ
4. 自分より優れたものから優位を誇示される
カーシュナーは明らかに1の場合に該当するだろう。研究分野の権威である自分が新人のパールムッターに研究で先を越されそうになった。そこで「妬み」の心情が発生したのだろう。パールムッターについては、最初から妬みの気持ちがあったかどうかは不明だが、途中からは2に該当したのではなかろうか。4も関係していたかもしれない。いずれにせよ「妬み」にとらわれるということは、不愉快な感情だし、QOLを著しく損なうことは間違いないだろう。この本では、「妬み」の心理状態に陥ったり、陥りそうになった場合の処方箋として次のような提案がされている。
妬み深い性格を直すには、まず自分のした仕事の成果を評価することである。 
さらに妬みの心理を抜け出すためには、[視野を広げる]ことである。視野が広がれば勝ち負けに拘らなくなる。
また、妬みの心理と「劣等感」は深く関連しているのだそうだ。劣等感というのは、心に深く刻まれたものについては、なかなか克服することは難しいようにも思う。まぁ、そういう負の面も含めて、自己肯定していくこが「妬み」の克服には必要なのかもしれないが。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月18日木曜日

【日記】「宇宙で一番強い力はなんだと思う? 重力じゃなくて嫉妬なんだ」

 2022年8月17日(水) 

以前は朝起きたらニュースのヘッドラインを見る習慣があったのだけれど、ここしばらくそれを意図的に中断している。なぜかというと、バズり狙いの「煽り記事」に辟易しているからだ。自分からニュースメディアに積極的にアクセスしなくなってもう数ヶ月程度経つのだけれど自分の生活には全く支障がない。特に自分からメディアのサイトにアクセスしなくても、SNS等を通じて勝手に耳に入ってくる。心の平穏を保つためには、メディアからは適当な距離をとったほうが良いのかもしれない。

新学期前ということで、職場の管理職人事が発表された。新しく選出された副学院長(日本の副学部長に相当)は、まだ三十代だ。学部事務のトップも選ばれたのだけれど、こちらも非常に若い(はっきりした年齢は存じ上げないがおそらく三十代前半)。とにかく、うちの職場は管理職の平均年齢が若い。もちろん管理職の中にはベテランもいるが、我が母国のように管理職の会議が「シニアのおっさんばかり」という感じではない。若手もいるし女性も多い。

職場のグループチャットを眺めていたら、学部の「物理学実験」科目の全国教材開発コンテスト的なイベントで同僚が上位入賞したらしくお祝いのメッセージが乱れ飛んでいた。年度末の活動報告等を聞いていると、物理学実験科目には毎年日本円で億単位の教材開発予算がついているようだ。担当している教員は豊富な予算を使ってあれこれ楽しんでいるらしい。

天文系の同僚にも物理学実験を担当している人がいるが、小さな電波望遠鏡を作って実習に使っている。あれなんかも工事費を入れると日本円で一千万円では収まらないだろう。豊富な予算は教育の質を上げるだけでなく、教員のモチベーションも上げることは同僚たちの様子をみているとよく分かる。

ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見 (幻冬舎新書) Kindle版、野本陽代 (著)」を一読した。この本、ベテルギウスという名前がタイトルに入っていたため、ベテルギウスについて詳しく書かれた本なのかと思って読み始めたのだけれど、内容がタイトルからかなりズレていた。ベテルギウスの話というよりは、天文学入門に近いような内容で、かなり広範囲の話題を取り扱っている。


特に、後半部分に出てくる超新星探査観測を利用した宇宙の加速膨張の発見を扱った章は読み応えがあった。この分野で2チームが競り合っていたことは知っていたけれど、その背景にある人間事情についての記述が秀逸である。それぞれのチームのリーダーどうしが犬猿の中であったり、しかしそれぞれのチームに属しているポスドクどうしは親友だったり、そういったことが相まって、結果として両チームがノーベル賞を受賞したというのは、何か奇跡的なものを感じる。発見を競い合った2チームのリーダーのひとり、ロバート・カーシュナーの言葉を引用しておこう
「宇宙で一番強い力はなんだと思う? 重力じゃなくて嫉妬なんだ」

 

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月17日水曜日

【日記】「究極中国語」は優れた中国語学習アプリ、「良い大学」に行くメリットとは

 2022年8月16日(火) 

8月も半分が過ぎ、そろそろ職場から新学期関係の連絡が届くようになってきた。とは言っても、講義の段取り等はまだ少し先の話で、まず最初に連絡が来るのは、遠くへ出かけている人に対しての「返校手続き」に関する連絡である。

省外や国外に出るには大学から許可をもらう必要があるなど手続きが面倒だが、帰ってくる時にもそれなりに面倒な手続きが課せられる。「返校規定」に準拠した手続きをとらないとキャンパスに入ることができない。もっとも、私はというと、今年の夏はコロナ規制以前に居留証更新の手続きのために珠海市から一歩も出られない状態が続いているので、返校手続きとは無縁である。

この日記の文末に毎日記録を残しているように、相変わらず中国語の学習を続けている。朝は単語と例文の暗記を行い、それ以外の時間には、できるだけ中国を聞いたり実践で使ったりするように心がけている。当初、暗記学習は単語だけについて行っていたのだけど、なかなか中国語が口をついて出てこないので、そのまま使える形で言葉を暗記しようと思い例文の暗記を始めた。これが正解で、暗記した例文の数が増えるに従って、日常生活の中で中国語で発話できる機会が増えてきた。

現在は「究極中国語」というiOSアプリを使っているのだけれど、このアプリがとても良くできていて助かっている。一度正解した問題も良い塩梅で忘れた頃に再び出題してくれるのだ。また、習熟度の判断が的確なのも良い。各項目ごとに「学習中」「習得中」「習得」「完成」の四段階で習熟度を判断してくれるのだけれど、最高レベルの「完成」のステータスが付いた例文や単語は、確かに確実に使いこなせるレベルに達していのが自分でもよく分かる。もちろん、その分「完成」ステータスに到達することは難しく、単語に関しては2年間ほど毎日学習していて、「完成」に到達したのはやっと952語だ。

このアプリ、非常によくできていて、とても気に入っているのだけれど、一つ欲をいうと、教材の更新頻度が遅いのが若干不満ではある。コロナ禍関連の例文等、最近の世情と関連した例文が追加されると、より実践的で良い教材になるだろう。原稿の教材はコロナ前にアップデートされたのが最後なので、その内容もやはり「コロナ前っぽい」内容となっている。

「コロナ前っぽい」例文

さて、Twitterのタイムラインを見ていたら、今日は以下のようなツイートがバズっているのを見かけた。
いわゆる「良い大学」に行くことの意味は、良い授業を受けられることにあるのではなく、「頭の良い級友に恵まれる」ということにある。
私は、いわゆる「良い大学」出身ではないので、その良さが体験的には良くわからないけれど、私が出たような「たいして良くない大学」にも「頭の良い級友」は確実にいたので、上記のような意見を述べるのには、「頭の良い」の定義が必要だろう。

日本語SNS界隈で「良い大学」と言われるときは「高偏差値大学」、「頭の良い級友」は「入学時点で高偏差値だった級友」という定義が実際に近いのだろうと想像するが、個人的には「入学時点で高偏差値だった級友」に何か大した意味があるとは思えない。私が想像するに、級友に恵まれるということよりも、学校派閥の構成員の一人になることのメリットを「頭の良い級友に恵まれる」と言い換えているだけなのではないか。

私が個人的に「良い大学」を出ていなくて損したなと思うのは、研究職に就けなかった場合の代わりの就職の可能性が学歴フィルターで狭められることくらいだと思う。そして、幸いなことに、現在研究職に就けているので実質的には何も損はしていない。ただ、研究職に就けなかったことを考えるとぞっとする時はある。日本の有名企業に就職したいのであれば、やはり「良い大学」に行くべきだろうと思う。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月16日火曜日

【日記】生存確認を兼ねたミーティング、語学ができない人は接待係?

 2022年8月15日(月) 

約一週間ぶりにオフィスに行った。コロナ規制の関係もあり、例年に比べると職場に居残っている大学院生の数が多い。出勤している教職員の数は夏休み期間なので少ないが、秋学期の担当講義が多い人とか、管理職系の出世を目指している人なんかはオフィスに出てきて仕事していたりするようだ。私はというと、6-7月に滞在許可関連のゴタゴタで大幅に時間をロスしたので、8月はフルに働いて遅れを取り戻さなければならない。

この時期、本来なら院生さんの定期ミーティングはお休みにする時期なのだけど、大学に居残っている院生さんについては生存確認も兼ねてミーティングを継続している。今日も院生さんとミーティングをやったのだけれど、進捗の方は夏休みということもあり、まぁ「ぼちぼちでんな」といったところである。

7月末に珠海市の科学技術局に工作許可を申請してから15日以上が経過した。当初の話では「申請が降りるまで約15日かかる」とのことだったので、学内の担当秘書さんに確認を入れてもらったところ、返ってきた返事に寄ると申請にかかる所要日数は15日ではなく「15工作日」とのこと。結構時間がかかるようだ。その後の連絡に寄ると、今週の木曜日か金曜日には「次の手続きの準備が整う」とのことだった。まだまだ先は長そうだ。

Twitterのタイムラインを眺めていたら「日本人の駐在員よりも現地通訳の方が優秀というのはよくある話」といった内容のツイートが流れてきた。これをみて、英語が通じる医療機関に中日通訳を連れてきている日本人駐在員らしき人を何度か見かけたことを思い出したので「中国語も英語もできない人が中国でどういう仕事をしているのだろう」という疑問をTwitterでつぶやいたところ、事情に詳しい人からリプが来た。

返ってきたリプによると、そういう人たちは日本の本社から来る日本人社員を接待するための「接待係」なのだそうだ。しかし、それにしても、中国語ができない人が中国で「十分な接待」ができるのかという疑問は残るのだけれど。


中国語学習

単語と例文の暗記(25分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月15日月曜日

【日記】昭和系ウルトラマン展、「益川流のりしろ思考」を一読

 2022年8月14日(日) 

相変わらず暑い日が続いている。とは言うものの、8月も中旬となり、少し暑さの質が変わってきたように思う。珠海のように海に近い地域では海の影響で秋の訪れが遅くなるが、大陸の奥まった地域に住んでいたときは8月中旬になると明確に秋の訪れを感じたものだ。珠海でもなんとなくではあるが、秋の気配みたいなものを感じる。

近所の商店街で先週から「昭和系ウルトラマン展」という催しが行われている。聞くところによると、ウルトラマンは中国でもかなり人気があるそうだ。夕方、商店街の方向に妻と散歩に出かけたので、ついでに催物開場を除いてみたところ、たくさんの親子連れで賑わっていた。

「昭和系ウルトラマン展」会場の様子


「昭和系ウルトラマン展」という大層な名前がついているものの、その内容はと言うと、とくにショーがあるわけでもなく、ただ単にウルトラマンの大型の人形が幾つか並んでいて、あとはグッズ販売の自販機が置いてあるだけだった。

しかし、そんな地味なイベントであるにも関わらず、人形には写真撮影の順番待ちの列ができており、グッズ販売の自販機は完売状態だった。ウルトラマンに人気があることももちろんだが、コロナ規制のために遠くに出かけにくい状況もこの賑わいの原因の一つなのではないかと想像している。

益川流のりしろ思考」を一読した。著者の益川敏英さんは、言うまでもなく素粒子論でノーベル物理学賞を受賞された益川博士だ。数日前の日記に、益川さんの対談番組をオーディオブックで聞いたことにふれたけれど、その後、益川さんの意見をもう少し聞いてみたいと思い電子書籍を物色したところこの本に行き当たった。


益川さんが言っていることを読み聞きしていると、なんとなくリチャード・ファインマンに通じるところがあるように思う。好奇心が強くて、そして人生をすごく楽しんでいるように感じる。益川さんは、創造には「雑学」が必要だと説く。そして、雑学を身につけるには、効率的な生き方をしていたのでは上手くいかない、といった話をされている。ちょっと幾つか印象に残った文章を引用しておこう。

新しい理論は何もない〝無〟から突然に生まれることは絶対にありません。  知識と知識が結びついて、新しい理論になって飛び出すのです。
創造するには「材料」をきちっと持っていないとだめです。  その材料は多いにこしたことはありません。
だから、「雑学」がとても重要になってきます。
「ああ、ここではこういうふうに思考するんだ」ということも含めて、いろんなものに興味をもって、たくさんの情報や知識を常に頭に入れておく。それが創造力の「源泉」になるのです。

益川さんにしても、ファインマンにしても言っていること全部に賛成できるわけではないし、自分が研究や仕事で直接関わる場面を想像すると、どちらもちょっと面倒くさそうな人物である感じがしないでもないけれど、それでも、どちらに対しても、とにかく「研究者として幸せそうな人生を送った」というところにとても憧れを感じることは事実である。

中国語学習

単語と例文の暗記(45分程度)

2022年8月14日日曜日

【日記】ちょっと特殊な講義の準備、多様な博士課程新入生

 2022年8月13日(土) 

夏休み期間中は学期中と違って悪天候のときなどにはあまり無理して出勤せず、家にいることにしているので、溜まった仕事をこなしつつもやはり少し夏休みっぽい気分になってきている。溜まった仕事の大きなものとしては秋学期の講義の準備と、年末に控えているグラントプロポーザルの準備がある。あと大学院生の論文の仕上げの面倒も見なくてはいけない。

6月末から7月にパスポート更新とその後の各種手続きで予想外に多くの時間を取られてしまい、結局夏休み期間を使って辻褄を合わせる羽目に陥っている。外国人として中国で暮らすということは、いろいろと余計な手間がかかるものだ。

秋学期には今年で2回めとなる大学院博士課程向けの「ちょっと特殊な講義」を担当することになっている。何が特殊かというと「天文学の基礎知識」を扱う講義なのだ。通常、博士課程の大学院生に対しては、ある特定の分野に的を絞ったレビュー的な講義を行うことが普通で、天文学の基礎知識を大学院生に講義することは珍しいと思う。

なぜこのような講義が必要になるかというと、中国では博士課程から専門分野を変える院生が相当数いるからだ。うちの大学院に博士課程から入ってくる人の入学前の学歴や職歴は実に多様だ。天文学に鞍替えしてくるのだから、修士課程の専攻はせいぜい物理学周辺だろうと想像されるかもしれないが、はっきり言って予想を遥かに超えている。IT系の会社で働いていた人とか、学校の理科の先生をやっていた人とか、薬学で修士号をとった人とか、まぁ、とにかく色んな人がいるのだ。

博士課程の入学者数は例年30人程度だが、学部と修士課程の両方が天文学だった人は1-2人程度で、大部分の学生は博士課程に入るまで天文学と関係のない分野を専攻していた人たちだ。既に天文学以外の分野で研究経験こそあるものの、天文学の研究を行うのは初めてという人が多い。2年前までは、このような天文学の基礎知識を持たない学生に対して特別なケアは何も行わずに、各学生に自主的に勉強して足りない知識を補ってもらうという方針だった。しかし、多くの教員から「必修科目として博士課程新入生に天文学の基礎を教えるべきだ」という声が上がり、この講義を立ち上げることになった。

そういう状況の中、新しく赴任してきた私がこの講義を担当することになった訳だ。昨年は一回目で、なおかつ学期開始直前に担当を割り振られたために、とにかく一学期間の講義をやりとげることに必死だった。それで、最近昨年の講義を資料を見直しているのだけれど、1年経って改めて見てみると、修正しなくてはいけないところや、付け加えるべき項目が山のようにあり、ほとんどの講義資料や宿題をゼロから作り直している。

当初、「学部向けの天文学入門講義と同じ内容を教えてくれ」という話だったので、基本的に学部生向けの教科書に沿った内容を教えていたのだけれど、やはり相手は博士課程の大学院生なので、どうもしっくりこないのだ。昨年は、講義の途中で少し方針を変えて、学部では扱わないような放射過程の話を盛り込んだのだけど、途中から方針を変えたために全体としてはどうもチグハグな感じの講義になってしまった。そこで、今年は教える内容は基本的には変わらないのだけど、教える順番を工夫して、博士課程大学院生向けの「少し大人な天文学入門」にしようと教材を作り直しているところである。

中国語学習

単語と例文の暗記(25分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月13日土曜日

【日記】「ゼロからわかるブラックホール」と「きみの体は何者か」を一読

2022年8月12日(金)

台風は既に過ぎ去ったはずなのだけれど、台風一過で晴天というふうにはならず朝から激しい雨が降っていた。暴雨警報が発令されたために社区の無料PCR検査場は今日も引き続き閉鎖となった。これまでにも何度か日記に書いているが、悪天が続いてPCR検査を受けられない期間が長くなると、職場に入るために要求される陰性証明を維持することができず仕事に影響が出てくる。今週は博士課程の学生さんと研究の議論を行う予定だったのだけど延期することになった。

オンラインで議論をするという手もあるのだけど、どうも私はオンラインでの議論というのがあまり好きではない。現状のオンライン会議システムは、黒板やホワイトボードの前に立って、いろいろと落書きしつながら、あーだこーだ言いながら議論することの代わりにはまだならないというのが私の個人的な意見である。自宅にいると「なかなか頭のスイッチが入らない」という事情もある。

ゼロからわかるブラックホール 時空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム」(大須賀健著)を一読した。講談社ブルーバックスが夏休みということで「割引セール」をやっていたので、ここぞとばかりに天文や物理関係の電子書籍を大量に購入したのだけど、この本はその中の一冊だ。タイトルに「ブラックホール」という言葉が入っているので、ブラックホールについての本かと思って読み始めたのだけど、その実態は相対論的なディスクとジェットについて熱く語っている本だった。この研究分野は数理的な難易度が高く、一般向けに分かりやすく説明することはかなり難しいと思うのだけれど、最後までとても面白く読むことができた。

今日はもう一冊「きみの体は何者か」(伊藤亜紗著)という本を読んだ。以前、「日本哲学の最前線」(山口尚著)を読んだときに、日本の哲学の最前線を担う旗手の一人として伊藤亜紗さんが紹介されていた。この本の中で「自分の体は自分の思い通りにならない」という伊藤さんの言葉が引用されていたのだけど、これがとても印象に残り、出典を読んでみたいと思っていた。その出典がこの「きみの体は何者か」である。

この本は小学生高学年から中学生くらいの年齢の読者を想定して書かれている短い本なので短時間で読めてしまう。伊藤亜紗さんは「吃音」の持ち主なのだけれど、その体験から「自分の体との付き合い方」について若い人にアドバイスするといった感じの内容だ。子供向けに書かれた本ではあるけれど、吃音に限らず、何か自分の体に不満や問題を抱えている人が読むと、大人が読んでも少し気持ちが楽になるような作用があると思う。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年8月12日金曜日

【日記】連日のPCR検査場閉鎖、楽しそうに科学を語る研究者

2022年8月11日(木) 

今日も台風の影響で朝から雨。社区のPCR検査場が再開したという知らせが来ないので今日もおそらく検査は受けられない。ということは明日はキャンパスに入れない。学期中にこういう事態に陥ったら講義関係の手続きが面倒そうだ。

昨夜、夜中に目が覚めてしまい、なかなか寝付けなかったので、iPadを広げて、オーディオブックのフォルダの中で適当に目についた「益川敏英さんととある研究者の対談」を聞いていた。益川敏英は言うまでもなく、素粒子理論でノーベル賞を受賞された益川博士である。益川さんの研究業績自体は専門違いなので詳細を完全に理解しているわけではないのだけど、このオーディオブックの対談番組はもうかれこれ4-5回は聞き返している。

なぜそんなに聞き返しているかというと、益川さんが科学の話をとても楽しそうにしているからだ。研究者が研究の話をしているときに、本当に楽しいと思って話しているのか、あまり楽しくはないけれど仕事だから仕方なしに話しているのかは、自分が研究者ということもあってすぐに分かってしまう。

私よりも1-2世代前の研究者には、楽しそうに研究や科学一般の話をする人が多かったように思う。益川さんなんかは、本当にとびっきり楽しそうに科学の話をする人だと思う。楽しそうに話をする人の話しはどうしたって聞いてしまう。

益川さん以外にも、同じようにとても楽しそうに科学の話をする人がいて、その人の講義音源はもう5-6回以上はくり返し聞いていると思う。そのもう一人の人はリチャード・ファインマンだ。講義を通して、どの部分を取り出してみても実に楽しそうに物理を語っているのでついつい最後まで聞いてしまい、またしばらくすると聞きたくなってしまうのだ。

益川さんの対談番組やファインマンの講義音源は、物理を勉強するというような目的で聞いているわけではなく、単純にこの人達の話す声を聞いていると、こちらも楽しくなってくるから聞いているのだ。

私の世代以降の日本の研究者は、あまりにも研究環境が過酷になりすぎて本来のモチベーションであったはずの科学することの楽しみをなくしてしまっている人たちも少なくないように思う。科学的な思考を深めるための時間のゆとりもなく、ただただ職や研究資金を獲得することに追われた研究活動を行っていたのでは楽しく科学を語ることなで到底できないだろう。楽しく科学を語る研究者がいなければ、次の世代の科学者も育たないだろう。まったくもって悪循環だと思う。


中国語学習

単語と例文の暗記(10分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月11日木曜日

【日記】2022年8月10日(水) 、昭和系ウルトラマン展の案内、思考に使う言語

マンション管理会社からのWeChatメッセージによると近所の商店街で近々「ウルトラマン展」が開催されるそうだ。どうも、聞いたところでは、ウルトラマンは中国で人気があるらしい。管理会社から来たメッセージには「昭和系奥特曼珠海首展来啦~!」と書いてあった。「珠海で初めての昭和系ウルトラマン展がくるよ~」といった感じの意味だが、こういう文脈で「昭和」という日本の元号を見るとは思わなかった。

昨年、遼寧省大連市郊外に作られた日本の街を模したテーマパークが突然閉鎖されたことがニュースになっていたが、中国で日本関連のイベントをやると同じようなリスクが必ずあるはずだ。しかし、その割には日本がらみのイベントが身の回りに満ち溢れていることには微妙な違和感を覚えるというか、どう理解してよいのか分からないというか、不思議な感覚である。

職場の卒業式で、日本のアニメ風の演出が行われ、演出に使われた映像の中に日本語が出てきたという話を以前この日記に書いたことがあるが、卒業式なんかには大学の共産党員がたくさん参列している訳だ。そういう状況でもあの演出が許されるということは、日本関連の演出やイベントが一概にすべてアウトということではなさそうである。何かの表紙に「スイッチ」が入ると拒否される可能性がある、ということだと思うが、何がスイッチになるのかは未だによく分からない。

さて、Twitterを眺めていたら、どういうわけか「考える時に私は○語を使う」みたいなツイートがたくさん流れていた。これらのツイートを見てふと思ったのだけど、私は思考のかなり多くの部分を非言語的にやっているような気がする。特に研究に関連して物理的な問題を考えるときは「イメージで考える」ことが多いと思う。頭の中に天体の形とか、ガスの運動とか、分子のエネルギー分布とかを思い浮かべつつ、それと同時に手書きで図とか数式を書き出して脳内のイメージを具体化し、最後に必要に応じて言葉でまとめるという感じだ。考えている途中には言葉はほとんど思い浮かべない。

上述の一連のツイートの発生源を辿っていったら「母国語で考える方が深い思考ができる」ということを言っている人がいて、どうやら、そこからいろんな議論が巻き起こっていたようだ。私個人としては、数理的な思考を行う際にはそもそも言語を思い浮かべないので、研究に関しては、この議論とは無縁そうである。

そういえば先日、職場ビル入り口に設置された図書自動貸出機に、しれっと「人間失格」が並んでいるのを見つけた。同僚と話をしていても、ときどき日本の小説を読んだという話を聞くことがある。本屋に行っても中国語に翻訳された日本語の書籍を多く見かける。反日な人が多い中、こういう日本系のあれやこれやをあちこちで見かけるのは本当に興味深い話である。

職場の図書自動貸出機に並んだ「人間失格」

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単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年8月10日水曜日

【日記】2022年8月9日(火) 、「牙科材料」の購入、「世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン」を一読

先週の後半は天気が崩れて自宅で仕事していたので、今日は久々にオフィスに行った。8月上旬から中旬は普通であればほとんどの学生が帰省して院生部屋はほぼ空っぽになる時期だが、今年は半数弱くらいの院生が大学内に居残っているようだ。居残っているとは言っても先生たちは夏休み中で、講義もセミナーもグループミーティングもないので、それなりに「のんびりムード」は漂っている。

昨日歯医者で行った「アンカースクリューの埋設」がとても痛かったので、その後の経過が心配だったのだけど、今朝状況を確認したら、特に腫れることもなく痛みもないので大丈夫そうだ。アンカースクリューと口腔内部の粘膜との間がこすれるのを防ぐために、当面は食事の時以外は歯科用止血コットンをアンカースクリューと粘膜の間に挟んでおくと良いということで数回分の歯科用止血コットンをもらってきた。しかし、雰囲気としてはもう少し必要そうだ。

そこで、通販サイトで探ってみたところ、中国では歯科医が使うような様々な道具が一般向けに販売されているようだ。「牙科材料」というキーワードで検索すると色々と出てくる。とりあえず、通販サイトの写真を見ながら歯科医でもらったコットンと同じようなものを注文した。食事のときにはコットンを外し、それ以外はコットンを挟んで粘膜を保護するということを繰り返していれば、そのうち粘膜が厚くなり、コットンなしでも痛くなくなるそうだ。

「世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン」という本を一読した。ワインに関する「蘊蓄」をまとめた本だ。著者は渡辺順子さんという大手オークション会社のワイン部門で働いた経験の持ち主だ。オークション会社でワインを扱っておられただけに高級ワインについての蘊蓄が特に面白かった。カリフォルニアワインの「オーパスワン」が有名になっていく話なんかは雨リアンドリームを体現していて痛快だ。

一つ注文をつけるとすると、中国在住者としては、中国ワインについてもう少し詳しく扱ってほしかった。中国ワインでは「アオユン」が取り上げられていたが、それ以外のワインもボルドーのシャトーと提携しているという話も聞くし、取材するときっと面白い話があるんじゃなかろうかと思う。

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単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

2022年8月9日火曜日

【日記】2022年8月8日(月) 、痛かったアンカースクリューの埋設、認証付き戸籍謄本が到着

今日は月一回の矯正治療の調整日ということで歯医者に行ってきた。現在、日本語で言うところの「表側ワイヤー矯正」をやっているのだけれど、今日で開始から丸3ヶ月が経過したことになる。初回は上の歯を2本抜歯し、2回目は下側の親知らずを抜歯した。抜歯が終わったので、もうこれ以上「痛い治療」はないかと勝手に思いこんでいたのだけれど、今回の治療が通院しだしてから一番痛かった。

今日やった治療は「アンカースクリューの埋設」である。アンカースクリューというのは、「アンカー」という言葉からも分かるように、ワイヤーを引っ掛けて歯を引っ張るためのフックである。歯茎の根本の骨にネジ釘をねじ込む訳だ。麻酔するから痛くないだろうと思っていたのだけれど、これがそうでもなかった。

確かに麻酔をするので歯茎や骨の表面をネジが通過するときには全く痛くなかったが、骨の中を数ミリほど入ったところからかなり痛くなり、2-3回麻酔を足してもらった。しかし、正直なところ麻酔を足してもかなり痛かった。家に帰ってからYouTubeで体験者の感想を見ていると、全く痛くないという人から気絶するほど痛かったという人まで、体験者の感想は様々だ。私はどうも、歯科の麻酔が効きにくい体質なのかもしれない。

先月、外務省の公印証明と在日中国大使館による認証付きの戸籍謄本を取り寄せる作業の代行を日本の行政書士にお願いしていたのだけど、最初にコンタクトを取った日から数えて丁度1ヶ月目となる今日、ようやくDHL便で現物を受け取ることができた。

今回は防疫規制の影響で断念したけれど、本来ならば戸籍謄本の中国語翻訳も作って、翻訳についても在日中国大使館認で認証を取りたかった。この手続を行うには翻訳と認証取得の前に、在中日本領事館で署名証明をとる必要があるのでさらに時間がかかる。

今回の経験を踏まえると、中国の役所で「絶対にいちゃもんを付けられない戸籍謄本」、つまり外務省の公印証明と中国大使館の認証、さらに中国大使館での認証付き中国語翻訳が付いた戸籍謄本を準備するには、少しゆとりを含めて、3ヶ月くらいの手続き時間を見ておく必要があるだろうと思う。


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単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月8日月曜日

【日記】2022年8月7日(日) 、新たに日本人教授が赴任、天文学を学べる大学は増えたものの…

今朝職場から来た人事関係の通知を見ると、どうやら職場の理論物理グループに、新たに日本人の教授が赴任されるようだ。近年、日本から中国に移籍してくる日本人研究者が本当にすごい勢いで増えているように思う。今回の人事は私のグループの人事ではないので新しく赴任してこられる方の経歴は存じ上げない。しかし、書類審査を通すための最低条件はだいたいどこのグループでも共通しているので、最初から教授で赴任して来られるということは、かなりの業績の持ち主であることは間違いない。

Twitterのタイムラインを眺めていたら、「宇宙を学べる大学・天文学者がいる大学一覧」の2022年版が流れていた。私が学部生だった頃に比べると、天文学者がいる日本の大学の数が格段に増えている。ただ、天文学者がいる大学は増えたものの、日本で天文学者としてメシを食っていける機械が増えたかというと、そうは言えないところが難しいところだ。これから真剣に天文学分野で研究者を目指そうとするならば、もう早い時点で日本を離れて、外国での就職を念頭にキャリア設計を考えた方が現実的かもしれない。


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単語と例文の暗記(25分程度)

2022年8月7日日曜日

【日記】2022年8月6日(土) 、上手く頭をオフにできないときの対処、中国の白ワインの独特の風味

2日ぶりに晴れたので、朝食をとったあと腹ごなしがてら近所の無料検査場に言ってPCR検査を受けてきた。土曜日の無料検査場は通常ならばガラ空きなんだけれど、今日は少し検査街の列ができていた。私と同じように、雨降りで検査をサボっていた人が溜まっていたのかもしれない。

新学期の講義準備や、研究のための考え事や執筆を進めようと思いつつ、家にいるとついサボり気味になってしまう。しかも、夏休み時期の土曜日ともなると、もうどうしようもない。精神科医やらカウンセラーやらの書いたり話したりしたものを見聞きすると、「心の健康を維持するためには休みの日に仕事のことを考えない」というようなことがしばしば書かれていて、それは非常に正しいと思うのだけれど、学者家業をやっていると、若い頃から「24時間学問のことを考え続ける」みたいな習性が身についてしまっており、なかなか上手く脳をスイッチオフの状態にできない。

結局のところ、頭を「スイッチオフ」の状態にするのは私にはとても難しく、経験的に気づいたのは、私ができるのはスイッチオフではなく、「別のスイッチへの切り替え」ということだ。例えば、何も考えないことは難しくても、読書に集中する、ピアノに集中する、中国語学習に集中する、みたいなことは可能なのである。他のことに集中している間は、少なくとも仕事のことからは思考が離れる。つまるところ、私は何かに集中していないとだめなようだ。

報道を見ていると、リゾート地として有名な海南島の三亜市で感染者が急増しロックダウンとなったようだ。8万人の観光客が三亜市内に閉じ込められているらしい。こういうときに宿泊場所や費用はどうなるのかとつい心配してしまうが、報道を見ている限りは基本的に自腹のようだ。例えば、高級ホテルに2-3泊の予定で宿泊している人がロックダウンで2週間延泊みたいなことになると、延泊料金がとんでもないことになると思うが、いったい皆さんどのように対処しているのだろう。

今年の夏の感染状況は、コロナ禍勃発以降最悪規模だと思うが、どういうわけか中国人の同行を見ていると遠方に旅行や出張に出かける人が多いように思う。私はまだ中国語が不自由で、見知らぬ土地でロックダウンに巻き込まれた場合の対処に自信がないので、とても遠出する気は起こらない。

そんな訳で、私の最近の週末の楽しみはというと、出前の中華料理と中華ワインである。今日は「张裕」の白を試してみた。これまで、中国内の主だったワイナリーの売れ筋の(安い)赤ワインはだいたい一通り試してみたのだけれど、「赤」はかなり美味しいと思う。张裕や长城といった大手ワイナリーのホームページを見ていると、フランスの一流シャトーと技術提携しており、フランス人の造り手が中国にきて指導したりもしているようだ。例えば、シャトー・ラフィットなんかは中国に畑を所有して、中国で作ったワインをラフィットの名前で販売していたりもする。そんなこんなで、中国ワインというとボルドーっぽい赤の印象がある。

一方で白はと言うと、いままでランダムに数回試してみたのだけど、当たりが悪かったのか、それとも全体的に水準が低いのか、どうもまだ美味しい白に出会えていない。専門的な表現方法を知らないのでいい加減な感想になるが、今まで飲んだ中国ワインの白は、なんというか「塩っぽい」というか、中国の白特有の風味がある。土壌に起因するものなのか、作り方の問題なのかはよくわからないが、何か共通する独特の風味があるのだ。今日試してみた张裕の辛口の白にも、中国の白独特の風味が確かにあるのだけれど、以前に飲んだ一番安い水準の白に比べると「塩っぽさ」がかなりマシで、十分に「美味しいレベル」に達している。そんな訳で、美味しい白もあることが分かったので、今後は白も探ってみようと思う。

张裕の白ワイン


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単語と例文の暗記(25分程度)

2022年8月6日土曜日

【日記】2022年8月5日(金) 、どちらが先に挑発?、「重力波とはなにか」を一読

連日の雨天で、今日も自宅で仕事することにした。しかし、やはり自宅にいるとあまり仕事の効率は上がらない。コロナ前なら雨の日はタクシーで職場まで乗り付ければ良かったのだけど、現在はコロナ規制で大学敷地内にタクシーが入れないので通勤手段が自転車しかない。雨の日はレインコートを着て自転車にのるのだけど、今の季節、レインコートを着ると猛烈に暑い。雨ではなく汗をかいてずぶ濡れになるので、なんのためにレインコートを着ているのかよくわからなくなる。そんなこんなで、真夏の雨天は職場に行く気がなかなか起こらない。

ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて中国が台湾周辺で軍事演習を行ったことに対して「中国は挑発行為をするな」という声明が周辺国から出ている。しかし、戦闘機や空母まで従えて米下院議長が台湾を訪問するという「明確な挑発」を最初にやっているんだから、中国の演習は当然の帰結としか思えない。韓国の大統領は、休暇を理由にペロシ氏との面会を断ったらしいが、この大統領には政治的な「知恵」が備わっているような気がする。

「重力波とはなにか」(安東正樹著)を一読。職場に重力波検出実験のナショナルセンターがある関係で、重力波関係の話を聞く機会は少なくないのだけど、基本的なことを知らないので一度啓蒙書でも読んでみようと思ってこの本を手に取った。読み始めたら非常に面白くて一気に最後まで読んでしまった。特に後半部分で展開される重力波天文学の将来的な展望には本当にワクワクするような面白さがある。今後、順調に装置の安定度と感度が増していけば、重力波関係だけできっと幾つもノーベル賞が量産されるだろう。

あと、興味深かったのは重力波検出を確認する確認システムの厳密さである。プロジェクトの研究者がきちんと本物の信号を選別できるかどうかを、「偽信号」を人為的に検出器に送り込むことで確認するのである。偽信号を検出器に送り込むことは「信号インジェクション」と呼ばれるが、研究者たちは今自分が解析しているデータが信号インジェクションによるものかどうかを最後の瞬間まで知らされない。場合によっては、信号インジェクションによる偽信号で論文まで書き上げてしまい、投稿する最後の瞬間に「偽信号でした」と知らされたケースもあったようだ。本当に「ここまでやるのか」と思ってしまうような厳しい信頼性確認を行っている。天文学の他の観測プロジェクトも、重力波プロジェクトの検出確認システムから学ぶことが多いのではないかと思う。


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単語と例文の暗記(20分程度)

2022年8月5日金曜日

【日記】2022年8月4日(木) 、久々の自宅勤務、名前の漢字表記、京都大学OCW

今日は朝から雨が降っていた。天気予報を見ると一日中断続的に降るとのことだった。夏休み期間でもあり、職場になにがなんでも行かなくてはいけない理由もないので、今日は自宅で仕事することにした。

WeChatモーメンツを眺めていたら、とある知り合いが、「心当たりのない贈答品の果物が届いた」とかで「これは誰が送ってくれたのでしょうか?」と届いた品物の写真つきでポストしていた。美味そうなマンゴーだったけれど、送り主不明だと食べづらい。そういえば先日、私もお裾分けのマンゴーをもらったのだけれど、今時分は中国では贈り物をする時期なのだろうか。

職場のメールを開けたら、中国内の特許申請代行会社から「中岛老师」宛でセールスメールが届いていた。自分の記憶では、オフィシャルな場面ではローマ字表記の名前しか出していなかったはずで、どういう経路で漢字表記を知ったのだろうとちょっと不審に思い、確認のため職場の公式ホームページを見てみると、なんとデザインが一新されており、新しいページでは漢字で名前が表記されていた。

職場の皆さんは、私の名前のローマ字表記はなかなか覚えてくれないが、漢字表記だとひと目見ただけで覚えてくれる。そういう訳で、内々ではずっと漢字で名前を書くことにしているのだけど、いつのころからかかなり公式な場面でも漢字表記の名前が使われるようになってきた。もっとも、漢字表記が本来の表記なので、漢字で名前を書いてもらって悪い気はしない。

Twitterを眺めていたら、京都大学のOCW(オープンコースウェア)を担当していた部署が廃止されるとかで、YouTube上で公開されていた動画コンテンツの新規公開と保守作業が停止されるというニュースが流れていた。京都大学OCWが公開する動画の中には興味深いものも多く、ときどき勉強させてもらっていたのだけれど、もう新規コンテンツが公開されないというのは残念な話だ。

ツイートの文面から察するに、担当部署廃止の原因は、おそらく人手が足りない(つまり、予算が足りない)ということなのではないかと想像するが、しかし、日本を代表する有名大学のOCWがこんな状態に陥るというのは、日本の大学全体の衰退を象徴しているようで、なんだか寂しい感じがする。

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単語と例文の暗記(20分程度)

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2022年8月4日木曜日

【日記】2022年8月3日(水) 、久々の曇天、相変わらずな西側メディアの煽り

7月の珠海は通常ならば雨季の真っ最中で2日に一度くらいは雨がふる。しかし、今年はどうやら異常気象のようで3週間ほどずっと晴天が続いていた。あまりにも晴れが続いて、少し夏バテ状態になりかけていたところ、今日になって少し雲が出始めた。長期予報を見ると、明日から見渡す限りずっと雨天が続く予報となっている。雨季に延々と続く雨は本来は嫌なものなのだけど、ありえないくらいの晴天と猛暑が続いたので、正直少しホッとしている。

今日は、アメリカの下院議員議長が台湾を訪問するとかで、中国内外ともにSNS上でちょっとした騒ぎとなっている。私がWeChatアカウントを交換するのは基本的に大学関係者が多いので、普段はあまり政治的な投稿は流れてこないのだけど、今日に限ってはWeChatモーメンツにも台湾関係の投稿が流れてくる。その一方で、西側メディアの煽り方も相変わらず酷い。あれを見ていると、西側メディアに規制をかけておく中国の戦略というのは、あながち間違ってはいないような気もする。

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単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月3日水曜日

【日記】2022年8月2日(火) 、ビーチの清掃に勤しむ院生たち、コロナ時代の国際会議

どのような経緯で始まったのか詳しいことは知らないのだけれど、しばらく前から天文学科の院生有志が大学前ビーチのゴミ拾いボランティアをやっている。いつまで続くのかなぁと思いながら見ていたのだけど一年以上経ってもまだ頑張っているようだ。通勤路沿いにビーチがあるためほぼ毎日様子を見ているのだけれど、とても綺麗な状態で維持されている。

私が担当していた講義に参加していた学生が清掃ボランティアのリーダーをやっている関係で、私も彼らのグループチャットのメンバーに入っている。それで、今朝流れてきたメッセージを見ていると、活動資金難(清掃用具が買えない)とのことだったので少ない金額ではあるけれど寄付をした。

このビーチ清掃ボランティアに参加している学生にはどういう訳か優秀な学生が多い。もしかすると、週一回、ビーチを隅から隅まで歩き回ってゴミを拾うという作業は、研究を進める上でポジティブな効果をもたらしているのかもしれない。

TwitterのTLを見ていると、かなり多くの日本人天文学者が、同時期に「これから外国出張に行く」というツイートを流していた。何か大きな国際会議があるのかと思ったら、案の定、今日から韓国で国際天文連合の総会が開催されるようだ。強いコロナ規制が敷かれている今の中国にいると、外国出張することは現実的ではない。うちの職場でも国際天文連合総会に参加する人は誰もおらず、総会のことはすっかり忘れていた。

SNS上の研究者の発言を見ていると、全体的には国際会議に参加できないことを嘆いている人が多いようだ。私はというと、個人的に国際会議があまり好きではないこともあって、コロナ禍にかこつけて、(正当な理由によって)国際会議に参加しなくても良い「平和な時代」を満喫していたりする。まぁ、その一方で、外国に観測に行けないのはちょっと寂しい感じはするのだけれども。

ところで、とある日本の大学教員の方が、「日本に人種差別はあるでしょ。それもかなり露骨な形で。留学生たちと英語で話しながら街を歩いたらすぐにわかるよ」というような発言をTwitter上でされていた。これは本当にその通りだと思う。私も職場の(中華系の)学生を連れて日本に出張に行ったときに、何度か嫌な思いをした。(そして、学生にも嫌な思いをさせてしまった。)外国人排斥につながるような空気が醸成されつつある国は日本に限った話ではないが、それにしても国際的に活動する人間にとって、本当に不自由な時代になってきたと思う。


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単語と例文の暗記(20分程度)

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2022年8月2日火曜日

【日記】2022年8月1日(月) 、夏休みも大学に居残る学生さんたち、「死の壁」を一読

通常なら今の時期は多くの学生が帰省してキャンパスはひっそりと静まり返っている時期なのだけど、今年は夏休み期間と思えないくらいキャンパスで学生を頻繁にみかける。私のグループの院生もずっと残っているので帰省しないのか聞いたところ、やはりコロナ規制の影響で新学期に戻ってこられないことを心配しているようで、今年は基本的にはキャンパスに居残るつもりのようだ。

「じゃあ、どうせ大学にいるんだったら学期中と同じように議論を続けましょうか」ということで、いつも通り週一回のミーティングを続けている。コロナで大変な面もあるだろうけれど、一方でコロナのせいで飛躍できたなんていうことも人によってはありえるかもしれない、などということをミーティングの後にふと考えていた。

日本も夏休み期間ということで、各出版社や電子書籍プラットフォームが日本語電子書籍の「夏の割引セール」を行っている。割引セールがあるとついついまとめ買いをしてしまい「積読フォルダ」の容量が増え気味になるのだけど、少しでも積読量を減らそうと思ってせっせと毎日読書に勤しんでいる。今日は「死の壁」(養老孟司著)を一読した。

養老さんというと「バカの壁」で有名だが、この本はその続編に当たるようだ。バカの壁を読んだことがないので、いきなり続編から読んで意味がわかるのかという気もしたが、分からなかったらまぁそれはそれということで読み始めたところ存外おもしろく、最後まで一気に読み通してしまった。

この本のメインテーマは養老さんの「死生観」である。養老さんは解剖学者ということで、普通の人に比べると死(や死体)を身近に感じてきた人だ。それだけに、その死生観には興味深いものがある。あまりにも毎日死体に接していると、死に対して鈍感になるのかと思っていたが、養老さんの死に対する感覚は、むしろ一般の人間よりも鋭敏ですらあり、その言葉の一つ一つは、日常の中で一般人が無視してしまっている「死」という概念の輪郭を明確に浮かび上がらせるような作用があるようだ。

死生観とは直接関係ない部分であるが、一つ興味深かったのが「交通事故を起こしやすい性格」についての記述である。精神科医が行う「自由連想」で引っかかる言葉がある人は、交通事故を起こしやすいのだそうだ。自由連想というのは、ある言葉を最初に思い浮かべ、それから連想される言葉を次々に挙げていくという作業で、精神科の診断で行われる手法らしい。例えば、バナナ、果物、りんご、赤い、太陽、といった感じで言葉を続けていくようなことが自由連想である。

この自由連想をやっていると、ある特定の言葉がくると連想が止まる(できなくなる)人がいるそうだ。そういう場合、その言葉に関連した事柄にトラウマがある場合が多いのだそうだ。養老さんは「挨拶」という言葉で自由連想がとまるそうだ。私も自由連想を行うと、止まってしまう言葉が幾つかあり、それらは非常にネガティブな記憶と連動しているように思う。そして、確かに私は交通事故を起こしやすいことを自覚している。養老さんは50代くらいで「ある事柄」に関する心の整理が付き、徐々にトラウマにとらわれることがなくなっていったらしい。私の場合は今後どうなるだろうか。

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単語と例文の暗記(10分程度)、ラジオの聞き流し(20分程度)

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SimplyPiano、リードシートIII

2022年8月1日月曜日

【日記】2022年7月31日(日) 、制御不能状態での大気圏突入、「知の体力」を一読

中国は目下、宇宙ステーション建築のためにせっせとロケットを打ち上げているが、その破片の一部が今日あたり制御不能の状態で大気圏に突入するとのことで、あちこちでその危険性について報道されているようだ。ただ、こういう中国絡みのニュースというのは、政治的意図によって歪曲されていたり誇張されたりしていることも多いので注意が必要である。

ロケットの破片が制御不能の状態で大気圏に突入することは事実としてあるのだろうけれど、同様の問題を起こして来た国が中国だけかというと、そういうこともなく、少し検索して調べて見るだけでも、宇宙開発に関わっている国の多くが同様の問題を引き起こしているようだ。例えば、防衛省が公開しているこの文章には以下のような記述がある。
この実験の 1 年後に、米国は制御不 能に陥って大気圏に再突入しそうな自国の偵察衛星を大陸弾道弾迎撃ミ サイル(SM-3)で破壊して、大量のデブリを発生させた

今回の中国の件が問題なのはよく分かるのだけれど、宇宙開発の歴史的な経緯や、他国が過去に引き起こした同種の問題等に一切触れずに中国の問題とその危険性だけを強調する西側メディアの報道姿勢を見ていると、この問題もいつも通り政治的な意図で利用されているのだろうという勘ぐりをしてしまう。

居留証関係のトラブルでここしばらく週末もゆっくりと休むことができなかったので、今日は久々にのんびりと読書と囲碁ソフトでの囲碁対局の間を行ったり来たりしながらのんびりと過ごした。そんな訳で、Kindleの「積読フォルダ」に溜まっていた「知の体力」(永田和宏著)を一読した。

著者の永田和宏さんは細胞生物学者であり、なおかつ歌人としても活動されてこられた人物のようだ。この本は、基本的には若い人向けに「生き方のヒント」のようなものをご自身の経験をもとにかかれた本である。この本で述べておられる事柄には、同じ大学教員として賛同する部分も少なくない。しかし、それと同時に、今の時代の若手研究者には、もしかすると上手く響かないのではないかと思える記述も幾つか見られた。それに関しては、ご自身もなんとなくそのように思われている(ともとれるような)記述をチラホラと織り交ぜておられたりもする。まぁ、ご愛嬌である。

「大学教員は教えすぎてはいけない」ということを繰り返し行っておられて、これについては、これは私自身の大学教員としての経験と照らし合わせても正しいと思う。優秀な学生というのは、学問の技術的な面では放っておいても伸びる。しかし、その一方で、非技術的な面(表現が難しいが、言い換えるとすればメンタル的な面か)では、上手に寄り添ってあげる必要があると私は思っている。その辺、永田さんも、実に真摯にご自身の学生さんに寄り添ってこられたことが文章から伝わってきて、共感を覚えるのである。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)