2023年10月5日木曜日

5年目の審査に向けて

中国の大学で教員として働くと、5年目に業績審査が行われる。この審査は非常に厳しいもので、文字通り「クビ」がかかった審査である。解雇となる条件は雇用時の契約書に明記されており、個人によって異なるが、重要な基準は共通で、「論文数、獲得グラント数、講義時間」の3つである。講義時間は、努力次第で何とかなるものだが、グラント数と論文数は密接に関連しており、一方が不十分だともう一方も満たせない確率が高まる。

私の場合、どうも研究分野が中国のグラント審査とマッチしないようで、グラント審査で大変な戦いを強いられている。その結果(そしてコロナの影響もあって)、3年目まで大学院生を雇用できず、研究グループとしての論文出版数が契約した数に到達できるかどうかは、本当にギリギリのところである。

しかし、状況が良くても悪くても時間は経過していく。最終審査の期日はまだ決まっていないが、おそらく数カ月後だろう。最近、ブログの更新をあまり頻繁に行えていないのも、実はこの件と関連している。(文章を整えるのは、このような雑文であっても案外時間がかかる。)

とりあえず、今のところまだ生きており、そして運命の審査に向けて全力を尽くして頑張っているということだけをアップデートしておく。


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2023年2月14日火曜日

便利なAIツール

昨年末にChatGPTが発表されて以降、さまざまなAIツールが立て続けに発表されており、研究者をとりまく状況が大きく変わりつつあるように感じている。

最近、とくに面白いと思ったツールの一つが「SCISPACE」というだ。ChatGPTのような普通のAIチャットでも、上手く使えば論文の要約をやってもらうことは可能だが、このサービスのすごいところは、論文のPDFファイルを読み込むと、まるでその論文の著者と議論しているような感じでチャットできるところなのだ。

これから先の研究の展望や、その研究のセールスポイントみたいなこと尋ねると、まるで著者が答えるような感じで質問に答えてくれる。チャットの答えの中で、PDFファイルをアップロードした論文以外の他の論文についても言及してくれるので、もしかすると著者よりもAIの方がその論文や研究分野について理解しているのではないかと錯覚してしまうぐらいである。(もしかすると、そうなのかもしれないが)

こういうツールがキャリアの最初から存在することになるこれからの若い研究者はいったいどのような人生を歩んでいくことになるのだろうか。論文を素早く読んで、要点を的確に把握し、多くの論文を勉強する中で次の研究アイデアをひねり出すみたいなスキルは、今までの研究者には必須だった訳だけれど、これから研究者を目指す若い人は、苦労して外国語の論文を読みこなす練習をする必要はなく、最初からAIが代わりにやってくれる。

その浮いた時間を上手く使うことができれば、科学は猛烈な発展をとげるかもしれない。いや、しかし、AIに頼っていると研究者の頭が悪くなって、逆に科学が後退するみたいなことはなかろうか。AIの登場で、ついいろいろと考えてしまう今日このごろである。


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2023年2月1日水曜日

ピアノの練習を再開

昨年終盤に忙しくなってからしばらくの間ピアノの練習をサボっていたのだけれど、趣味の時間がないような生活を長く続けていると徐々に精神がささくれだってくるので、最近再びピアノの練習を再開した。3ヶ月ほどピアノに触らなかった間にすっかり指が動きを忘れてしまっており、やはり継続が大事だということを再認識している。

しかし、しばらく練習をサボって下手になっているとはいっても、もともとそれほど高いレベルに到達していたわけでもないので、一週間ほど練習していいるうちに、体感としては、昨年11月に弾けていた水準の8-9割くらいまでは戻ってきたように思う。

趣味に時間を割くようになってから仕事への集中力が高まったような感じがしている。趣味の時間をひねり出すために、仕事を早く終わらせようと必死に仕事に取り組んでいるのが良いのかもしれない。仕事と趣味の良い相乗効果である。


2023年1月31日火曜日

後部座席付きのシェア自転車

一週間ほど春節で休んだ後、今週から久々に自転車通勤を再開したのだけど、どうも一週間ほど自宅に籠もっていた間に体力が落ちていたようで、普段は大して運動した気にもならない通勤の自転車でかなり運動した感じになっている。春節休み中も毎日散歩はしていたのだけれど、どうも自転車をこぐのに必要な筋肉と歩くのに必要な筋肉は異なるようだ。

春節明けから2週間くらいの間はオフィスには人が少ないので集中して仕事ができてとても良い。今日は論文原稿の投稿前の最後の仕上げ作業とグラント申請書の執筆を行ったのだけれど、オフィスが静かでだれもオフィスをノックしてこないので学期中では考えられないくらい仕事が進んだ。

そういえば、春節明けくらいから、子供を載せる用の後部座席が付いたシェア自転車を街の中でみかけるようになってきた。このタイプのシェア自転車、大きな荷物をくくりつけて持って帰るのにとても都合が良い。職場からもらったかさばるギフトがオフィスに溜まっているので、今日も後部座席付きのシェア自転車を利用して少し持ち帰った。

さて、新学期が始まるまであと2週間と少し。新学期前に投稿しなければいけない論文が一つ、提出しなくてはいけないグラント申請書が2つ、さらに講義の準備もあるのだが、最近体の調子が良いので、まぁ、なんとかなるだろう。

子供用後部座席付きのシェア自転車

2023年1月30日月曜日

春節明け初出勤と心拍変動

旧正月が明けてから初めて出勤した。一応、出勤日ではあるものの職場にはほとんど人がいなかった。グラント申請の〆切等が近づいてきているので、同僚たちも各自仕事は開始しているとは思うのだけれど、どうやら今年の春節明けはコロナの関係もあってか自宅で仕事している人が多いようだ。WeChatではぼちぼちと仕事関係の通知が届くようになってきた。

しかし、やはりオフィスに行くと仕事が捗る。アップルウォッチで最近「心拍変動」(HRV)という値をモニターしているのだが、オフィスで仕事していると自宅では絶対に出ないような低い値が出る。

HRVは交感神経と副交感神経のどちらが優勢の状態にあるかを知ることができる指標だ。値が大きいと交感神経が優勢、小さいと副交感神経が優勢であることを意味する。自宅で仕事をしていると、集中できたと思っていてもHRVはせいぜい20ミリ秒後半程度の値しか出ない。しかし、今日オフィスで仕事しているときは最低で12ミリ秒まで下がった。

ここしばらく自分のHRVの変化を見ていると、時間を忘れて仕事に没頭しているときはHRVが低くなる。仕事への集中度がHRVの値で分かるのが面白い。一方、リラックスしているときや深い睡眠が取れたときはHRVの値が高くなる。つまり、昼間はHRVを低く、夜はHRVが高くなるような生活をすると「良い一日」を過ごせたことになる。HRVはなかなか役に立つ指標だ。


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2023年1月29日日曜日

批判的意見によって磨き上げられる論文原稿

今日は振替平日に指定されており、厳密に言うと今日は「出勤日」なのだけど、さすがに春節明けの振替平日となると職場に出ていく人は少ない。私も今日は自宅で「勤務」した。

自宅で仕事する日は、朝起きたらまず30分ほど海辺を散歩する。朝、日光を浴びながら散歩すると、脳内に「セロトニン」と呼ばれるホルモンが分泌され、これがメンタルヘルスを維持するためによい働きをするそうだ。

私はこれまで海辺と内陸の両方に住んだことがあるが、どうも海辺に住んでいるときの方が体調も気分も良い。大陸の真ん中あたりに過去2回、都合7年半ほど住んでいたが、とにかくあまり体の調子が良くなかった。まぁ、純粋な日本人なので、遺伝子的な観点から海辺の方が体質にあっているのかもしれない。

午前中の最も集中力が発揮できる時間に、共同研究者からの問題点の指摘で大きな改訂が必要となった論文原稿に取り組んだ。まだ、もうかなりの改訂作業が残っているが、今日は快調に仕事が進んだ。

論文の執筆作業というのは、自分で「書けた」と思ってからの作業が案外長い。小説みたいな文芸作品だと作者が完成と思えば完成なのだろうけれど、科学研究の成果を発表する論文ではそういうわけにはいかない。

共同研究者や査読者から多くの意見(場合によってはかなり批判的な意見)を浴びせられ、それらの批判に耐えられるように書き直していかねばならない。場合によって、自分が完成だと思ったときの原稿をほぼ全部書き直さなければならない場合もある。しかし、この批判的な意見のやりとりがあるからこそ科学というものは発展するのである。


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2023年1月27日金曜日

休暇中もイーブンペースで生活

今日は旧正月の6日目。中国では元旦からの日にちを「初一、初二、初三」のように数えるので、今日は「初六」ということになる。私は、仕事がある日もない日も、基本的にあまり差は作らずイーブンペースで、昼間は仕事に没頭し、夕方からはのんびり過ごすといった感じで生活している。ただ、春節期間中は職場に自転車通勤しなくてよいので、その分の運動量を補うために、散歩に出たり自宅でトレッドミルに乗って運動するなどといったことが普段とはちょっと違う。

午前中は、北米の大学院に進学した卒業生とWeChatで意見交換しながら論文の仕上げ作業を進めた。北米の大学では新年の休暇はとっくに終了し講義が開始されているので、仕事するには都合が良い。時差が大きいのでリアルタイムで意見交換できる時間帯は限られているが、この時差もうまく使うと効率が良くなる。こちらの一日の最後に相手に仕事を投げておくと、次の朝起きるとレスポンスが帰ってきていることが多い。片方が寝ている間に片方が仕事をするといった形になるので、上手くリズムに乗るとすごく調子よく仕事が進む。

仕事の後半はグラント申請書の準備、講義の準備等を進めた。春学期は去年に引き続き実習科目を受け持つのだけど、今年は使える計算機設備が改善されたので、それを利用して、去年よりももっと学生が興味を持てるような教材を作ろうと思って作業を進めている。

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2023年1月26日木曜日

春節5日目

春節5日目だが地元当局から「Uターンラッシュが始まっているので、運転の際には気をつけて下さい」といった内容のショートメッセージがスマホに送られてきた。中国に来る前、春節期間はもう少しのんびりできるのかと思っていたのだけれど、あっという間に春節休暇は終わりである。

休暇の長さは職種によっても違うのだろうけれど、大学教員の場合は2月後半から3月初めに政府系のグラント申請の〆切があり、これと並行して講義も行わなくてはいけないので、春節だからといってそれほどのんびりとは休んでいられない。ロシアに大学で働いていたときには冬と夏にはそれぞれ一ヶ月ずつ完全な休みを取ることができたが、中国ではそうもいかない。

ヨーロッパから来ている同僚なんかは、個人的な都合で冬と夏にそれぞれ1-2ヶ月間帰省しているようだけれど、中国にいる間に通常の倍以上のペースで講義を入れたり、中国から離れている間も大きな時差を乗り越えてオンラインで会議に出席したり知ないといけないので、かなり大変なのではないかと推測している。

まぁ、とはいっても春節の期間は一ヶ月ほどの間講義から開放されるので、研究に没入する時間をとることはできる。(というよりも、この期間に研究に没入しないことには研究で成果を出すことができない。)

今日は、共同研究者から提案されたちょっと面倒な確認作業を午前中にやっつけた。事前には数日かかるかと思っていたがいざやってみると基本的な作業は半日で終わった。この確認、自分一人で作業していたら面倒さが先行して多分やらなかったと思う。注意深い共同研究者のおかげで仕事に磨きがかかった。

仕事に一区切りがついてお茶を飲みながら休んでいたら、研究グループのメンバーから、新しい論文の初稿を書いたとかでOverleafへのリンクが送られてきた。他の同僚たちも私と同様に、春節中も研究に没頭しているようである。


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論文執筆に明け暮れている春節休暇

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2023年1月25日水曜日

論文執筆に明け暮れている春節休暇

春節休み中ではあるけれど、連日論文の仕上げ作業を進めている。学期中はティーチング業務に強制的に時間を持っていかれるために、研究に没頭することはできない。集中力が続く限り研究のために時間を費やすことができるのは長期休みの期間だけである。都合が良いのか悪いのは微妙なところであるが、外国の共同研究者の多くは春節とは無関係に働いているので、中国が春節休暇中でも仕事を進めることができる。

研究が完成に近づいてきた頃にしばしば感じることではあるが、もうほぼ論文が完成と思っていると、思わぬところから新たな問題が勃発してゴールが遠ざかることがある。今回の論文でも、最後の仕上げの段階で共同研究者から鋭い指摘が飛び出し、追加でかなりの分量の作業をこなさなければならないことになってしまった。

あと数日で投稿できると思っているところにさらに一ヶ月ほどは要しそうな作業が共同研究者から提案されると、責任研究者としてはなかなか難しい舵取りを迫られる。まず、本当にその作業が必要なのかを慎重に見極めなかればならない。科学的に必要だと判断すれば、時間がかかったとしても追加の作業をやらねばならない。必要ないと判断した場合は、それはそれでまた大変だ。今度は共同研究者と議論して納得してもらわなくてはならない。いずれにしても簡単な作業ではない。


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ようやく春節

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2023年1月22日日曜日

【日記】ようやく春節

2023年1月22日(日) 

今日は旧暦の正月、つまり中国では春節のお祝いの日である。秋学期後半の怒涛の繁忙期もひとまず終了し、久々に連休で一息ついているところだ。

昨年11月に中間業績審査について書いた頃からしばらく日記が途絶えてしまったが、それには訳がある。学期中でただでも忙しいところに、業績審査で「論文の出版を急げ」という司令を出され、講義と学生指導で多忙な中、必死こいて論文を書いていたのだ。

一日15分ほどの日記を書く時間もとれないという状況が機能まで続いていた。赴任後の最初の3年間がコロナの影響であまりにもイレギュラーだったので論文の出版が遅れ気味になってしまったのだけれど、成果主義の中国の大学ではそのような言い訳は通用しない。

なんとかして残り2年の契約期間のなかで契約した内容の業績を残せるように辻褄を合わせなければ首である。そんな訳で、中間業績審査の後に審査委員会から「お小言」をくらって依頼、今日までの2ヶ月ほどの間、必死こいて論文の執筆に励んでいたという訳だ。

なんとか春節前に、まずは一本、ほぼ投稿できるところまで原稿を仕上げた。来年の春節までには、次の一本、できれば二本、論文を出版して、危機を乗り越えたいところである。

昨夜はパソコンで春節番組を眺めなら夕食を取った


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