2022年9月30日金曜日

【日記】博士課程院生指導資格の専門分野変更、「Dual Degree Program」設置に関する意見交換

2022年9月30日(金) 

午前中に講義を行い、国慶節前の(時間が固定された)仕事は全て終了した。いつもは講義が終わったらすぐに次の講義の準備に取り掛かるのだけれど、明日から7連休ということで、講義の準備はちょっと置いておいて、溜まりに溜まった雑用を片付けるなどした。

事務から依頼されていたフォームやらアンケートやらを埋めながらWeChatを眺めていたら、また何やら事務からメッセージが入ってきた。私は物理学に関する「博导」(博士課程大学院生を指導する資格)を持っているのだけれど、うちの学科が最近「天文学一级学科博士点」になった関係で、物理学の博导以外に、天文学の博导を選択できるようになったらしい。それで、どちらかを選択してほしいという連絡だった。選択してほしいと唐突に言われても、ステータスを変更することで発生する変化が全く理解できていないのでちょっと待ってもらうことにした。

その後、WeChat上で行われた教員間の意見交換の様子を見ていると、やはり博导の指導分野を変更することで、さまざまな影響が出てくるらしい。一つには、天文学の博导につく学生は、物理学専攻の必修科目ではなく、天文学専攻の必修科目が適用される。これによって、講義履修の負担が減るらしい。これは、まぁ、メリットと言えそうだ。

うちの物理学専攻の必須科目はかなり多岐に渡っている上に、天文学分野では必ずしも必要のない科目も多く含まれている。「群論」なんかも必須科目の一つなのだけど、担当教員が厳しいらしく、天文系の学生には群論の履修は負担だと考える学生が少なくないようだ。まぁ、群論自体は勉強して損するとは思わないが、限られた年限の間に規定数の論文を出版しなくてはいけない大学院生にとって負担となることは理解できなくはない。

別の影響としては、「理論物理志望の学生」をとることができなくなるという問題があるようだ。これは何が問題かというと、まず、うちの大学院入学審査でトップクラスの成績をとるのはだいたい「理論物理志望の学生」ということだ。つまり、教員側からすると理論物理志望の学生に自分の研究グループに入ってきてほしいという願望がある。

今までは、理論物理志望として入学審査に合格した学生が天文学科の教員を指導教員として選ぶことが出来た。しかし、指導者資格が天文学に限定されてしまうと、理論物理志望の学生をリクルートできなくなってしまう。天文学科の教員の中には、理論よりの教員も多いため、この問題は深刻を考えている人がかなりいるようだ。これに関しては、今までと同じように理論物理の学生を天文で採用できるかどうか、大学当局との話し合いが行われるとのこと。まぁ、そんなこんなでまだハッキリしないことがあるので、私は当面様子を見る予定である。

夕方、再びWeChat上で、今度は外国の大学との「Dual Degree Program」設置に関する意見交換が始まった。Dual Degree Programというのは、要するに「博士号を2つの大学からもらえる」プログラムだ。詳細はこれから詰めていくことになるが、このプログラムで博士号をとる学生は、在学期間の半分を外国の大学で、もう半分をうちの大学で過ごし、博士論文を書いて両方の大学共同の審査委員会から審査を受け、合格すれば、両方の大学から博士号をもらえるということになる。

この種のプログラムは、既に北京の有名大学で始まっているそうだ。ただ、現状では「政治的なあれこれ」もあってプログラムの設立はそう簡単ではないだろう。しかし、実現すれば相当に優秀な学生がうちの大学院に集まるであろうことは想像に難くない。

【日記】行事に関する本音と建前、教員倫理教育試験

2022年9月29日(木) 

目下、国慶節前でなおかつ五年に一度の党大会が来月に控えているということで、職場ではいろいろと「愛国的」な行事予定が組まれている。赴任当初、この手の行事予定が入ると、わざわざ職場の党関係行事担当者に「外国人の参加は想定されているのか?」という質問をしていたのだけれど、何度か質問して分かったことは、彼らは公には「出席しなくても良い」とは言えないということだ。

一応ルールでは「教職員全員参加」ということになっており、外国人が参加しなくて良いというルールは設定されていない。なので、公式のチャンネルで担当者に出席するべきか質問した場合、「出席しなくて良い」という返事は絶対に返ってこないというわけだ。まぁ、それならばということで、かなり愛国的なテイストの強い行事に参加したりすると、「え、来たの!」みたいな反応が中国人同僚から返ってきたりすることも少なくない。

そんなわけで、「その類の行事」は、その内容によって出席するかどうかをその都度考えることにしている。今日は、まぁ、外国人視点から見ると「行き過ぎ」なイベントが組まれていたため、ちょうど都合よく重なったティーチング関係の仕事を理由に出席を断った。この別件の理由、おそらく中国人だと通らない類の理由なのだけど、特に文句を言われないところをみると、今回の判断も「正解」だったのだろう。

明日は大型連休前の最後の講義なので、ざっと予習と教材の見直しを行った。あまった時間を使って、さらに先の回の教材も準備をするつもりだったのだけれど、講義の後に一週間休みがあると思うと疲れがドッと溢れてきて、明日の準備を終えたところで手が止まってしまった。

仕方なしに、溜まっていた雑用に着手。数日前に「教員倫理教育試験」というものをオンラインで受験するように言われていたので、それをやっつけた。問題は2種類あって「党の方針は次の中から選べ。複数解答可」というやつで、これは選択肢に並んでいる答えは全て正解なので簡単である。

もうひとつは、「できの悪い学生は見捨ててしまうのが良い。Yes or No」みたいな、期待されている答えが明確に推測できる2択形式の問題だ。これが20問ほど並んでいる。ただ、内容が理解できれば簡単なのだが、問題が中国語なので外国人にはちょっと厄介だ。機械翻訳やら辞書やらを駆使してなんとか問題を「解読」し解答した。去年に引き続き今年も100点だったので問題ないだろうと思われる。

とりあえず、明日の講義が終われば、ティーチングで多忙を極めた9月も終わり。10月は少し、研究にも時間を割きたいところだ。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月29日木曜日

【日記】愛国系イベントに関する雑感、「僕はこうして科学者になった」を一読

2022年9月28日(水) 

国慶節前になると多くの会議やイベントが設定されるのは毎年のことだが、今年は五年に一度の党大会が控えているせいか、職場の行事予定の中にいろいろと「愛国系」のイベントが並んでいる。正直なところ、この手のイベントに関して、外国人スタッフとしては対応に苦慮する場面が少なくない。個々のイベントについて、あまり具体的なことは立場的に今は書くことができないが、いつか時期が来たときには、どこかで書くなり話すなりしてみたいとは思っている。

一般論として「その場に居れば良いだけ」のイベントであれば、私は特に拒否はせず適当に受け流すことにしている。しかし、なんらかの具体的な行動を要求される場合は、付き合いきれない場合がどうしても出てくる。こういうときには、当たり障りのない適当な理由を見つけて失礼することにしている。まぁ、こういうのはどこの国であっても、外国人として働いている限りは、程度の大小はあれ、経験することではある。あまり気にしてもしかたがない。

日本に入国する際に、ワクチンを三回接種済みであれば渡航前PCR検査と隔離が免除されるようにしばらく前に防疫規制が緩和されていたが、例によって中国製のワクチンは対象外だった。しかし、最近の報道によると、どうやら中国製のワクチンが規制緩和の対象となったようだ。これは在中邦人にとっては朗報だろう。少なくとも、日本に戻るときのハードルはかなり低くなる。問題は中国に戻ってくるときだ。こちらの規制は相変わらずで、集中隔離が終わる気配がない。

僕はこうして科学者になった 益川敏英自伝 (文春e-book) Kindle版、益川敏英 (著)」を一読。この本から伝わってくる益川さんは本当にチャーミングな人だ。生前に直接お目にかかれる機会がなかったのが本当に残念。益川さんの英語嫌いは有名だが、背景には以下のような事情があったようだ。
先生に当てられた私はマネー( money)を「も ーねい」と読んだ。するとクラス中に大爆笑が起きた。先生まで「も ーねいか。確かにお金はすぐになくなるよなあ」と笑う。その出来事があってから英語は性に合わないということで捨ててしまった。
英語嫌い、数学嫌い、理科嫌い等々、学校で習う科目が嫌いという話はしばしば聞くが、学校教員に責任がある場合も少なくないのではないかと思う。益川さんの英語嫌いは、その典型的なケースだろう。大学や大学院における学生指導でも、不要な先入観や苦手意識を学生に与えていないか、常に自分の態度を顧みながら指導に当たる必要があると、あらためて思った。


本書の随所に出てくる益川さんの「好奇心の幅広さ」には感心する。益川さんは本書で次のように述べている。
日本人はわりと専門を決めつけたがる。ほかの分野に手を出すことは本業を妨げると思いがちだ。だが、外から問題を眺めてみることは、本命の仕事や研究にもいい影響を与えるはずだ。
ある分野を深く真剣に学ぶ。これは大切なことだ。だが、性質のちがう別の分野に首を突っ込むのも同じぐらい大事だ。自分の幅が広がるからだ。
こういう考え方は、リチャード・ファインマンにも共通したものを感じる。益川さんやファインマンのような偉大な科学者でも、無から何かを突然生み出しているわけではない。人類が気づいてきた「知の体系」の上に乗って新しい発見をしているのだ。

では、大きな成果を出していく人が何が違うかというと、私の理解では、普通の人よりも興味の範囲が広いことだと思っている。興味の範囲が広いことによって、思考の材料が増える。それが大発見につながるのだと思う。今の成果主義の世の中では時間的にゆとりがなく、なかなか興味の範囲を自由に広げていくことは難しい。しかし、できる範囲で益川さんやファインマンの境地に近づきたいものだとは思う。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月28日水曜日

【日記】会議が連続する連休前の職場、真面目にセミナーに取り組む新人さんたち

2022年9月27日(火) 

今週の土曜日から中国は国慶節の大型連休に入る。うちの大学も来週はお休みである。しかし、長期休暇や大型連休の直前になると、やたらと会議やら締切が増えるのが中国の職場の常である。今週も、学科の教授会、学院(日本の学部に相当)の全職員会議等、出席義務のついた会議が予定されている。今学期は通常でもかなり危ない忙しさなのに、出席義務つきの会議が入り込むことで、さらに限界ギリギリの状態まで忙しくなってきている。

赴任当初は会議の内容が目新しいこともあり、割りと真面目に会議に参加して、話も聞いてきたのだけれど、全体会議というのは、基本的に「上意下達」の場であり、内容の多くがいつも共通していることが徐々に分かってきた。あらかじめそういうことを知っている中国人の同僚たちは、最初から会議に真面目に参加する意思はなく、ノートパソコンを持ち込んでせっせと内職に励んでいる人が多い。私もそろそろ内職用に軽量のノートパソコンを購入するべき時期なのかもしれない。

さて、今日は研究グループの新入院生さんたちと「初心者セミナー」を行う日だった。ことの経緯は以前の日記にも書いたが、うちの大学には天文学未経験の院生が割りと多く入ってくるため、年度初めには「初心者対応」が必要となるのだ。今年は、中国語で書かれた学部向けの天文学の教科書を予め予習してもらって、その内容を英語で発表するというゼミを行っている。

先週、初めて発表してもらったのだけど、若干準備不足の感が否めなかった。そこで、教科書を勉強した後、英語の説明の練習を十分行うように言っておいたのだけれど、中国の学生さんたちはまじめで、今週はしっかりと練習してきており、割りとスムーズに英語で説明できていた。

うちの大学院に入ってくるぐらいの人たちなので、基本的な能力はみな悪くないものを持っている。ただ、天文学について英語で説明しようとすると、今までに使ったことのない単語が大量に必要となってくるので、必要なボキャブラリーを補う必要はあるのだ。この問題を補うためには、中国語の教科書を英語で説明するという方法は割りと良い方法だと私は考えている。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月27日火曜日

【日記】活気のあった90年代の大教大学天文グループ、振替平日は木金相当

2022年9月26日(月) 

朝、メールを開けたら大阪教育大学名誉教授の横尾武夫先生の訃報が入っていた。横尾先生は私の直接の指導教官ではなかったが、私が四半世紀前に大阪教育大学の修士課程に属していたときに在籍されていた天文学グループの3人の教員のうちの一人で、さまざまな形でお世話になった。

訃報を見て、活気があった90年代後半の大教大天文グループの様子をいろいろと思い出した。あのときはまだ教育大の修士課程からでも研究者志望の人が出てくる時代だった。教育大学の大学院には基本的に修士課程までしか設置されていないので、博士課程に進学して研究者を目指すためには他大学の博士課程に進学する必要があるが、それでも大阪教育大学の私の前後の学年には博士号取得者がごろごろいる。

大阪教育大学だけではなく、他の教育大学の理科教育から他大学の大学院に進んで博士号を取得する人は1990年代にはかなり多くいた。当時の日本の大学は、今のような極端な選択と集中が進んでおらず、教育大学のような、本来は研究者を要請することが目的ではない大学からでも研究者を目指すことができた。こういう「ゆとり」が、実は科学技術立国日本をささえていたのではないかと思う。今となっては昔の話である。

さて、国慶節後の振替平日が「何曜日相当」になるか戦々恐々としていたのだが、うちの大学では振替平日の土曜日と日曜日が、それぞれ木曜日と金曜日相当になるそうだ。というわけで、私は今学期金曜日の講義を担当しているので、日曜日に講義することになってしまった。とりあえず、振替平日が「2日連続講義日」にならなかったのは不幸中の幸いである。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月26日月曜日

【日記】イージーゴーイングな同僚に助けられる日々、整備され続ける検査ステーション

2022年9月25日(日) 

今年の秋学期は、昨年の秋学期に担当したのと同じ科目を受け持っている。本来ならば2年目となる科目なので、かなり準備が楽なはずだが、よせばよいのに新たに単元を加えたり、教える順番を変更したり、カリキュラムをあちこち大改造しているので1年目と同じくらい準備に時間がかかっている。

どうも私はティーチングに関して「凝り症」過ぎるのかもしれない。こんなことをやっていては研究の時間が捻出できなってしまう。研究にもノルマがあることを考えると、ティーチングに時間を使いすぎるのはあまり良いこととは思えない。親しい中国人同僚に何気なく相談してみたところ、「講義の質が良くなるんだから別にいいじゃない」との返事が返ってきた。まぁ、中国人のこういう「イージーゴーイング」なところには大いに助けられている感じがする。

昨日は、どうにもこうにもやる気が出ず、自宅で仕事した時間が僅かに1時間程度だったので、今日は日曜ではあるけれども、遅れを挽回するために午前から夕方までびっちりと仕事をした。なんとかかんとか来週1回目分の教材の準備までは終えることが出来たが、2回目の講義についてはまだほとんど着手できていない。

しかし、あと一回乗り切れば、国慶節の連休で少しゆとりができる。私のキャリアは、長い時間スケールから短い時間スケールまで、あらゆる場面でフラクタル的に「いつもギリギリ」で凌いでいる感じがする。

夕方、月曜日からの出勤に備え、陰性証明を取得すためにPCR検査に行ってきた。近所の無料検査ステーションのテントが新しいものに取り替えられていた。今までテントの高さが低くすぎて頭をぶつけそうになっていたのだけど、高いテントに交換されて背の高い人も天井を気にしなくてよくなった。

検査ステーションの設備を毎日のように見ていると、細かなところが徐々にアップデートされていることに気がつく。ここ数ヶ月の間にも、検査官の入る冷房ボックスが設置されたり、受付官用の扇風機が設置されたりと新しい設備が次々に導入されている。こういう状況からは、現行の検査体制はまだかなり長い期間に渡って維持し続けようという政府の意思が感じられなくもない。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、ジャズコードI

2022年9月25日日曜日

【日記】第20回党大会が生活に及ぼす影響、在外研究者にとっても有用なJETROのホームページ

2022年9月24日(土) 

ここのところ感染状況が急に変化しているわけでもないのに一般市民のマスク着用率が上がったり、VPNが不安定になってりという微妙な変化が生活の中で見られる。この変化について、どうもSNS上に流れている噂を見ていると「中国共産党第20回党大会」と関連があると言っている人が多いようだ。

中国共産党の党大会は五年に一度開催される会議で、実質的な中国の憲法と言っても良い「党規約」の改定が行われる場だ。中国では、大きな政治イベントの前後には通信規制が強化され、VPNの接続が不安定になることが多い。Twitter上に流れている情報によると、私が利用しているVPN会社は、大手の中では、中国南部で唯一安定な接続を提供している会社のようで、どうりで私はVPNの不安定さに気づかなかった訳だ。

先日の日記にも書いたが、中国に住んでいる外国人にとってVPNは最早必須インフラの一つだと言っても過言ではない。安定したVPN接続が確保できなくなると、在中生活はかなり厳しいものになるだろう。

第20回党大会で注目される議題として、ネットで検索すると真っ先に上がってくるのが「習近平政権が3期目に入るための党規約改正」だ。これまで68才以上の党トップは交代しなくてはいけないとしていたルールを改定するという話だ。しかし、これはもう既に既定路線であり、改定されることは確実のようだ。

それ以外の議題で、在中外国人に直接関係しそうなものは「通信制限」に対する党の方針だろう。どうやら、報道を見ていると、現政権は中国の「中から外」への情報流出について制限を強化しようとする意思を持っているようだ。

通信制限に関する規約改定が行われるとして、在中外国人の生活に具体的にどのような影響がでてくるのか、その辺は気になるところである。おそらく、これまでの経緯から考えて、外国人人材が一気に中国から離れていくような大きな制度変更は行われることはないと予想はしているが、さてどうなるだろうか。

さて、外国に住んでいると、現地の詳しい情報を日本語で得ることは難しくなる。まぁ、これは考えてみれば当然の話で、現地の詳しい動向を知るためには現地語の学習・習得は必須である。しかし、そうは言っても日本語の情報源は欲しいものである。ロシアに住んでいた頃から私がしばしばお世話になっているのがJETRO(日本貿易振興機構)のホームページだ。

JETROは基本的には外国でビジネスを展開する日本人をサポートするための独立行政法人だが、ホームページで提供されている情報は、現地の法律関係の情報、生活関係、政治動向の情報なども含まれており、ビジネスマンに限らず在外研究者にとっても大変有用な情報源である。

JETROがホームページで提供している情報は、無料で見られる上に、報道機関が流す情報よりもはるかに詳しく、生活や仕事の場面で実際に参考になるものが多い。上述の中国共産党第20回党大会についても、詳細を解説したシリーズ記事の掲載が始まっている。



JETROのトップページ

2022年9月24日土曜日

【日記】講義の準備は3ステップ、微弱電流で睡眠導入?

2022年9月23日(金) 

私は、講義の準備を3段階に分けて考えている。1段階目は情報インプットだ。これはある科目を教えるとしたら、それに関する教科書や資料を可能な限り集めて全て通読する。料理でいうと材料の仕入れに相当する部分だ。2段階目は、通読したさまざまな資料の中から、自分の講義を受講する学生のレベルや講義の達成目的等に応じて内容を取捨選択し、講義で話すストーリーを自分なりに再構築する作業だ。この段階で、講義で使うスライドや、板書用のノートの「原案」を作る。料理でいうと下ごしらえに相当する作業だ。

最後の3段階目として直前の準備を行う。2段階目で作ったスライドやノートの原案を見直しながら、最終的に講義室で使える形にティーチング資料をまとめ上げる。料理で言うと、最終的な調理と盛り付けに相当する部分だ。2段階目までは、事前に済ませておくことができるが、3段階目は必ず講義の直前に行う必要がある。これをあまり早くやってしまうと、講義室でのパフォーマンスが下がってしまう。料理でいうと「温かい料理が覚めてしまう、もしくは冷たい料理が温まってしまう」みたいな状態になるのだ。

私はどうも講義準備が遅いようで、3段階目にかなり多くの時間を使ってしまう。それでも、最近は半日で一回分の講義の第3段階を済ませられるようになってきてはいる。しかし、同僚を見ていると、もっと手早く準備を済ませている人が多いようだ。まぁ、私の周りの同僚たちは、呆れるほど優秀な人ばかりなので、自分を比べることが間違っているといえば間違ってはいるのだけれど。

以前、日中に「発話量」が多いとその夜寝付きが悪くなるということを日記(もしくはTwitter)に書いた。現在は学期中なので、週2回の講義と週2回のセミナー、さらに学生指導が割り込んでくるので日中の発話量は相当なものである。したがって、例によって寝付きの悪い夜を多く迎えることになってしまっている。

そんなこんなで、通販サイトで何か良い睡眠サポートグッズがないものかと物色していたところ「微弱電流」なるもので睡眠をサポートすることを謳ったガジェットを発見した。割引料金で88元と値段も安かったので、あまり期待せずに試してみたところ、これがどうしてどうして、アップルウォッチの睡眠記録では確かに睡眠が深くなるのだ。

この手のグッズが睡眠を促進する原理をネットで探して読んでみたところ、微弱電流に副交感神経を優勢にさせる効果があるとのことだった。ただ情報源がメーカーのホームページなので、学問的に確立されたものなのかは定かではない。まぁ、とにかく数回試した時点では、アップルウォッチで得たデータ的にも体験的にも効果があるようなので、もう少し使ってみようと思っている。

通販サイトで見つけた睡眠サポートグッズ

2022年9月23日金曜日

【日記】新しいパターンの健康強行確認、学生セミナーは貴重な情報源

2022年9月22日(木) 

この9月は講義が立て込んでいるので、木曜日は集中的に講義準備を進める日にしている。しかし、少しでも余計な用事が割り込んでくると、たちまち準備が間に合わなくなりそうなギリギリの状態である。国慶節をすぎれば若干の余裕ができるのだが、それまであと講義3回。なんとか乗り切りたいところである。

昨日の研究グループ会議で学生さんたちがとても面白い論文を報告していたので、グループチャットに原論文を回覧してくれるように依頼した。講義のない期間には自分でも新刊論文をチェックするのだけれど、講義が始まると研究に関する新しい情報のインプットが研究グループのセミナーだけになってしまう。

研究グループのセミナーは大学院生の教育の場でもあるのだけど、それだけでなく貴重な情報収集の場でもある。1年目の大学院生の発表だと、なかなか有益な情報を得ることは難しいが、上級生になってくると一人前の研究者のレベルにかなり近づいているので、セミナーを聞いていても十分に勉強になる。

夕方、PCR検査を受けに行く途中、マスク無しで海辺の道を歩いていたら、制服を来た人が近づいてきて「マスクをしないで歩いている人の健康吗と行程卡を確認しています」と言われて一通りチェックされた。いろんな場所で健康吗と行程卡をチェックされることはあるのだが、これは初めてのパターンだ。

感染者数が増えているのかと思ってネットで情報を確認したが、とくにどこかで重大な事態が発生している訳でもなさそうだ(感染者数は相変わらずの横ばい)。こういうときは何か政治的な意味があるのだろうけれど、学期中で最近あまりニュースを丹念に追っていないので状況が分からない。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月22日木曜日

【日記】研究グループ会議で使用する言語、中国はスパコン大国

2022年9月21日(水) 

人種的な共通性もあるのだろうけれど、身の回りの中国人を見ていると日本の有名人に似ている人をちょくちょく見かける。昨日も、職場に「里見香奈女流五冠」と「一青窈」のそっくりさんがいることに気がついた。

まぁ、それはさておき、今日は今学期2回目のグループ会議の日だった。前回は初回ということでメンバーそれぞれが自己紹介して終わりだったが、今週は通常通りに当番制の論文紹介を行った。うちのグループでは、大学院生とポスドクが毎週二人づつ論文紹介を行うことになっている。

二人のうちの一人は複数の論文の要旨をかいつまんで報告する「速報」を、もう一人は一本の論文を選んで詳しく報告する「詳報」を行う。残りの時間は自由討論として、各自の研究で出てきた新しい結果を検討したり、行き詰まっている問題をみんなで考えたりする。

発表で使用する言語は「英語を推奨、ただし強制はしない」ということになっている。しかし、中国語で発表しても私が理解できるまで何度も英語で質問するので、結局英語を全く話さないで済ますということはできない。中国語で発表すると、結局英語で同じことを説明することになる。手間を考えると、最初から英語での発表を準備しておいた方が楽である。そういう状況なので、多くの学生は一年くらいたつと、だいたい英語で発表するようになる。

昨年、結局最後まで英語で発表しなかった学生は一人だけだった。今回は新年度初回のグループ会議だったので、「今の発言、英語で要点をもう一度言ってくれる?」というセリフを10回以上は言ったような気がする。まぁ、しかしこれを言うのも外国人教員の勤めである。学科としては大学院教育のために研究グループでの英語使用を推奨しているが、中国人教員のみのグループだと、なかなかグループ会議の英語化は難しいだろうと思う。

今日の詳報で紹介された論文は、中国の研究グループが行った星団の重力多体シミュレーションの論文だった。非常に重厚仕事で、単に星の運動をシミュレーションしただけでなく、星団に属する一つ一つの星の進化や、連星が形成される過程、連星になってからの進化過程までを計算に取り込んでおり、そうとうな計算機資源が必要な研究だと推測された。

最近の中国は「計算機大国」となってきている。スパコンの計算速度ランキングではまだ米日の方が勝っているものの、「国内に存在するそこそこ速いスパコンの数」ではおそらくダントツの一位なのではなかろうかと思うくらいあちこちにスパコンが存在する。そんな状況なので、今日の詳報で出たような研究も中国から量産されているわけだ。

今日の詳報論文は、明らかに中国宇宙望遠鏡を使った観測的なフォローアップを意識している内容だった。今の中国は、スパコンによるシミュレーションから、宇宙望遠鏡によるシミュレーション結果の確認までを全て国内リソースで行うことができる状況になりつつある。こういうなかで非常に優秀な研究者がしのぎを削って研究しているのだから、これから面白い結果が出てくるであろうことは私の目からは必然だと思われる。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月21日水曜日

【日記】調子がくるった一日、天文学初心者セミナー1回目

2022年9月20日(火) 

今日は講義の日だったが、最近寝不足気味の日々が続いたせいか、朝からどうも調子が悪かった。講義は午前にあるので、近所の無料検査書でPCR検査を受け、そこから直接講義室に行こうと思っていたのだけど、PCR検査場に行く途中に、講義スライドの保存でミスをしていたような気がして慌てて自宅に戻り確認した。結局、勘違いでミスはしていなかったので時間の無駄だった。

それから、大慌てで職場に向かったのだけど、途中で自転車のカゴに入れていた荷物を落としたことに気がついて後戻りして拾いに行くことになり、結局講義室についたのは講義開始の直前になってしまった。講義が始まってからも、スライドの記述にミスがあるわ、説明が右往左往するわ、質問には上手く答えられないわで、今日の講義は今ひとつできが良くなかった。やはり一学期の間ずっとイーブンペースでは仕事はできないものだ。ときには睡眠不足になったり、疲労気味になったり、いろいろである。まぁ、人間なので仕方がない。

今日から天文学未経験の修士課程1年生を対象とした研究グループの初心者セミナーを開始した。対象となる学生は3人なんだけれど、博士課程の学生2人がアシスタントとして参加してくれている。うちの学科では、上級生が下級生の面倒を熱心に見る文化が根づいているのだけど、これは教員としては助かる面が多い。まったく知識ゼロの人を初めから全部一人で教育することを毎年やるのは非常に大変だ。着任直後にはどうしても自分で直接何もかもやらなくてはいけなかったのだけれど、3年目くらいになるとだいぶ上級生が育ってきていて、頼れる存在となりつつある。

セミナーの方は、英語で話せるように準備しておく約束だったけれど、当番の学生二人のうち一人は準備不足で自分で作った英語台本を見ながら発表した。もうひとりは自分で作った台本をしっかり暗記してきており、しっかりと台本を見ずに発表してくれた。まだ、最初なので質問に対してアドリブで答えることは難しいようだ。しかし、自分も経験があるが、英語の台本を作って発表するということを毎週くらいのペースでやっていると1年後くらいには頭の中に多くの英文や単語が定着し、見違えるように上手く発表できるようになる。新入生の1年後が楽しみだ。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月20日火曜日

【日記】手書きノートをスライドに作り直す作業、明日から初心者セミナー開始

2022年9月19日(月) 

今日もひたすら講義の準備をすすめた。明日の分の準備は既に終了しているのだけれど、今日はさらにその先の金曜日の講義の準備を半分ほど済ませた。金曜日の講義内容は、夏休み中に構想していたときには「黒板」を使って説明するつもりだったのだけど、講義室の黒板が使いにくいことが分かったことと、学生の復習の利便性を考えてスライドにまとめることにした。

手書きのノートをスライドに作り直す作業は案外時間がかかる。構想時に黒板で説明を行おうと思った主な理由は、この単元の説明で「数式を多用する」ことにある。パワーポイントスライドに数式を書き込んでいく作業はかなり時間がかかるのだ。2年ほど前からMathpixという画像形式の数式をLaTeX形式に変換するツールを使いだし、以前に比べるとスライドへの数式の書き込み作業をかなり効率化することはできたが、それでも未だに時間がかかる作業であることは間違いない。

Mathpixツールの画面

明日は、「天文学初心者セミナー」の第1回目を行う予定だ。私が所属する研究グループに入ってきた天文学未経験の大学院新入生に研究に必要な基礎知識と英語力を身につけてもらおうというのがこのセミナーの目的だ。今年は天文学未経験の大学院新入生が3人おり、この中には英語も苦手そうな人が一人含まれている。この人達に、来学期からグループミーティングで英語で発表できて、さらに研究活動も始められるように準備してもらわなくてはいけない。夕方、明日発表の当番にあたっている学生から英語で書いたレジュメが送られてきた。さて、彼らにとって初めて英語で行う初めての天文学のセミナーはどんな感じになるだろうか。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月19日月曜日

【日記】VPNはライフライン、良いことがあった人が奢るルール

2022年9月18日(日) 

朝起きて真っ先に行うことといえば、パソコンとVPNクライアントソフトの起動だ。今日は、どういうわけか常用しているVPNサービスのクライアントソフトが立ち上がらずちょっと焦った。しかたなくバックアップ用の、速度の遅いVPNサービスを使って朝のルーティン作業に着手した。そうこうしているうちに常用しているVPNサービスが動き出したので、途中でクライアントを切り替えた。問題が「自然治癒」したところをみると、サーバー側に原因があったのかもしれない。

「ライフライン」と言うと、電気、ガス、水道等をまず思い浮かべることが多いだろう。水道、電気が止まったら確かに困る。しかし、その次に何が重要かと考えてみると、例えば、ガスとVPNだったら、私の現在の生活ではVPNの方がより重要だと思わえる。そういう意味では、私の中国生活においてVPNは完全に「ライフライン」の一つとなっている。

日曜日といえども学期中は忙しいので完全に一日中ボーっとすることはできない。今日は夜は会食の予定が入っているので、午前と午後、語学学習の約1時間を除いて、ずっと講義の準備をすすめていた。来週の2回の講義の1回目の準備はなんとか終了し、2回目についてもなんとか少し着手することができた。今の職場は突発的な仕事が舞い込んでくる可能性が常にあるので、これでもまだ安心ではない。時間の許す限り準備を進めておくのが正解なのである。

晩は近所の中華料理屋で、大型グラントを獲得した同僚が主催する「学科の教員全員に晩飯をおごる会」に参加した。中国全体でどうなっているのかはよく知らないが、うちの職場を見ている限り、良いことがあった方が周りの人に奢って、みんなにありがとうと言う文化が根付いている。職場の人間関係を円滑にするという観点からは、この文化はけっこう悪くないと個人的には思っている。

このように個人の資金で食事会を催す場合についても、店の予約やら出席確認やらを学科秘書にやってもらって構わないルールになっているので、奢る方も余計な時間をとられることなくスムーズにごちそうすることができる。いろいろ上手く出来ている。

現在の中国の職場を3年ほど経験してみて気づいたことが一つある。それは、職場内で上位の管理職についたり、大型グラントのPIになるような人に「気遣いの人」が多いことだ。私が経験してきた「西側の研究機関」では、研究グループ間の人間関係や、管理職と管理される側がギクシャクしていることが少なくなかった。

うちの職場が特別良い環境なのか、中国全体に広く言えることなのかは不明だが、職階が上位になった側や、選考で成功した人等が押し並べて低姿勢で、周りへの気遣いを忘れない人が多いのだ。この辺、どういう原理で斯様な状況になっているのか、まだ良く理解はしていないのだが、このような職場環境で働いている人間としては悪くない空気感ではあると思う。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年9月18日日曜日

【日記】単純には比較できない教員の忙しさ、中華料理屋の円卓を囲む意味

2022年9月17日(土) 

今日は土曜日なので職場には行かず家にいたのだけれど、9月中は週2回の講義を抱えているので、家にいるときでも間断なく講義の準備を行っている。上手く作業が進んでいるときには、講義の1日前には準備はだいたいは終了しているのだけれど、中国の職場というのはかなり高い頻度で「突然舞い込んでくる仕事」が発生するので、ある程度のゆとりを常に持っておくことが必要となる。

しかし、今年の9月中はあまりにも忙しすぎて、常に能力の限界の9割程度で仕事している感じだ。こうなると、何か突発的な重要な用事が入ると身動きが取れなくなる可能性がある。上記の予期できない「突発的な仕事」以外に、研究や院生指導においてもノルマがあることも考えると、週二回の講義を受け持つことはかなりギリギリのラインのように思う。

日本の大学の教員は、もっと講義を受け持っているという批判も聞こえてきそうだが、中国の大学の講義は罰則規定付きの厳格なルールで非常に厳しく管理されているので、いい加減な対応ができない。したがって、受け持っているコマ数だけで忙しさの比較は単純にはできないだろうと思う。

昨日の日記にも書いたような事情で、明日は「教員の食事会」がある。学期中の忙しい時期に、なんで食事会なんかするんだと思ってしまうが、忙しい時期なのは全員一緒なので、「それ以上の意味」があるということなのだ。中国で仕事をしていると「中華料理屋の円卓」は、それなりに重要な意味を持つ社交場であったりもする訳だ。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月17日土曜日

【日記】宿題がもたらしたポジティブな効果、成功人が周囲の人をもてなす習慣

2022年9月16日(金) 

昨年、初めて大学院博士課程向けの講義を受け持ったのだけれど、私の感覚では博士課程の院生に対しては、講義のときに「宿題」を出すというのはなんだかちょっと違うような気がして、講義の復習は各自の自主性に任せるということにしていた。

しかし、どうも中国人学生の反応を見ていると「宿題を出してほしい」という人が少なくないようだ。学部生なんかにいたっては、大学院生よりもさらに積極的に宿題を求めてきたりする。同僚の講義を覗いてみると、やはり宿題を出している場合が多いようだ。もしかすると、宿題があった方が「勉強している感」が持ててよいのかもしれない。

そういう訳で、今学期は、ものは試しと少し宿題を出してみている。宿題を出した次の講義の冒頭で「宿題のレビュー」をやることにしているのだけれど、昨年までの講義と比較すると、明らかに学生が講義を真剣に聞いてくれている感じがする。こうなってくると、また宿題を出すかということになって、もう4回連続で宿題を出している。

しかし、アシスタントのつかない大学院の講義で宿題の提出確認と採点をするのはかなりの重労働だ。ティーチングの質を上げようとすると、どうしても時間を余計に使うことになる。ティーチングは、質を高めようと思うと再現がなく、いくらでもやることが出てくる。ティーチング以外の他の仕事とのバランスを考えると、適当なところで折り合いをつけないといけないのだけれど、これがなかなか難しい。

夕方、オフィスで次の講義の準備を進めていたら、大型グラントを獲得した同僚が「学科の教員全員に晩飯をおごる会」を催すとのことで案内が回ってきた。正直なところ、学期中の忙しい時期に宴会はいらないと思うのだけれど、職場の様子を見ていると、大きな成功を収めた人が同僚たちをもてなすというのはどうも中国流のマナーのようだ。

国家レベルの大型グラントは、獲得した後が大変らしい。研究費が巨額なだけでなく、多くの人を巻き込んでいるために責任も重い。実際、中国では国家レベルの大型グラントのPIになった若手研究者が「過労死」するケースが最近続発している。宴会を行う背景には、追い詰められて時に、学内行政等で同僚に助けてもらうために周りへの気遣いが必要という意味合いもあるのだろう。私は職域の宴会というのはあまり好きではないのだけれど、郷に入れば郷に従えで、中国で働いている以上、多少の「おつきあい」は必要だと考えている。

2022年9月16日金曜日

【日記】繁忙期に思うこと

2022年9月15日(木) 

9月中は週2回の講義を受け持っているのだけれど、他のミーティング等々との兼ね合いで金曜日の講義の準備がいつもギリギリになってしまいがちである。今週も例外ではなく、まだもう少し講義の準備が残っていたため家にこもって準備を行った。

うちの職場では出勤時間については講義と出席義務付き会議の時間以外は自由裁量なので、家にこもっての仕事はルールの範囲内である。講義期間中は、日中にオフィスを訪問する人の数が増えるので、家にこもった方が仕事の効率が上がる。逆に講義のない時期には相対的に家の方が仕事を妨げる要因が多くなるので、オフィスに言ったほうが仕事の効率は上がる。

なんとか一日頑張って、明日の分の講義準備は終えることが出来た。ちょっと疲れ気味だったけれど、30分ほど仮眠して、さらにその次の回の講義準備にも着手した。毎年9月は学期初めの「てんやわんや」と講義準備等の定例の仕事が重なって大忙しである。研究関連や行政系の手続き等でやらなければいけない用事が溜まってきているのだけど、国慶節が終わるまでは着手できそうもない。

しかし、この忙しい状況でも、さほどネガティブな気持ちにならないのは、やはり過去の経験があるからだろうと思う。研究職に就けなかった時期や有期の職についていた時代の精神的な辛さを思い出すと、やるべき仕事が目の前にあることは幸せなことだと思う。

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単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月15日木曜日

【日記】「今日言って今日」の推薦書依頼、大学院生の机が足りない

2022年9月14日(水) 

秋学期も3週目に入った。そろそろ一回目の疲れが出てくる頃である。もう少し時間が経過して体が学期中のペースに順応してくると一日単位で疲労と回復のバランスをとることができるようになってくるのだけれど、最初の2-3週間は、体の何処かにまだ「夏休みモード」が残っており、なんとなく気が急いた感じで日々を過ごすことが多い。

今朝、いつものようにWeChatを覗いたら、かつての同僚から研究職応募用の推薦書依頼が舞い込んでいた。「締切は今日なんだけどなんとかならないか」とのこと。あまり詳しいことは個人情報なので明らかにすることは出来ないが、私とほぼ同世代の人で、かなり切羽詰まって職を探している様子だった。

最近推薦書を書いたことのある人であれば、以前書いた内容を下敷きにして短時間で推薦書をでっち上げることはそれほど大変ではないが、この人の場合は前回推薦書を書いたのはもう10年前で、かなり大幅な書き直しが必要となる。関係性の薄い人なら「今日言って今日」の推薦書依頼は断るところだけれど、かつて同じ釜の飯を食った仲間でもあるし、講義準備で忙しい中、なんとか時間を絞り出して2時間ほどでほぼスクラッチから推薦書を書き上げた。上手く職が見つかれば良いが。

研究グループに新しく加わった修士課程の新入生にオフィスの場所を確認したところ、まだ机を割り当ててもらっていないとの返事が返ってきた。なんだか妙な話なので、学科事務に状況を確認したところ「今年は大学院への新入生の数が多くて、まだ全員分の座席スペースを確保できていない」とのことだった。現在、あわてて院生部屋を増設しているのだそうだ。

とにかく、今年は大学院への入学者数が一気に増えた。おそらく、うちの大学院が「天文学一级学科博士点」という中国内の大学院としての最上級格付けに認定されたことと関係しているのだと思われる。私は実感として良くわからないのだが、一級大学院の博士号とそうでない大学院の博士号とでは、就職時の評価が異なってくるのだそうだ。

「一级学科博士点」に選ばれて大学院の新入生が増えただけでなく、学内の内部進学者も増加した。これまでは学部卒業生が進学する場合は、ほとんどが外部の大学院に流れていたが、今年は学部で成績上位だった学生が何人かそのままうちの大学院に残ったようだ。そんなこんなで、今年は優秀な大学院生がどっと入学してきて、職場が活気に満ちている。しかし、教員側がどこまで頑張れるか、それはそれでまた別の問題である。

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単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月14日水曜日

【日記】宿題が講義室にもたらしたポジティブな効果、天文学初心者セミナー開始

2022年9月13日(火) 

今日は、午前中に講義、午後から研究グループの学生とのセミナーがあった。昨年から秋学期には大学院博士課程向けの講義を受け持っている。大学院生向けの講義ということで、学生も忙しいだろうとの配慮をして、去年は宿題を出さなかったのだけれど、どうも中国の学生からは「宿題を出してほしい」という要望を聞くことが多い。そこで、今年はできる範囲で宿題を出している。「できる範囲」というのは、大学院講義で宿題を出すのは実はけっこう大変な作業なのだ。

学部講義の場合はティーチングアシスタント(TA)を雇用することができる。TAには宿題を出したかどうかの確認をやってもらったり、採点後の宿題の点数の集計などを手伝ってもらうことができる。簡単な宿題の場合には採点や学生への指導を手伝ってもらうこともある。このTA制度がなければ、宿題をコンスタントに出すことはかなり大変な作業となる。TAには通常、大学院博士課程の学生を雇用することになっている。つまり、大学院博士課程対象の講義を行うに際しては、TAとなってくれる人がそもそもいないのだ。これは教員としてはけっこう辛い。

まぁ、しかし、ものは試しと、多少忙しさが増すことを覚悟の上で、今学期は宿題を出してみている。結果としては良い感じに作用しているように思う。宿題を出した後、次の回の講義で宿題の答え合わせをするのだけれど、自分たちが考えて提出した宿題に関する話なので、学生さんの方も講義の他の部分よりも高い集中力で答え合わせの部分を聞いてくれるようだ。

やはり、学生に「主体的に講義に参加している」という意識を持ってもらった方が講義の質は良くなるようだ。主体的に参加してもらうというと、講義中に学生を指名して質問に答えてもらったり、教室で学生間の議論を喚起したりという手法をまず思いつくが、これは今の職場の講義室ではなかなか上手くいかない。なぜかというと、言語の問題があるからだ。

すべての学生が流暢に英語を話すわけではないし、そこそこ英語が話せる学生であっても、大勢の同級生の前で発言をするとなるとどうしても身構えてしまうようだ。昨年は、講義室で頻繁に学生に話しかけて、講義に主体的に参加してもらおうとしたのだけで、案の定上手くいかなかった。去年の段階では、予想もしていなかったことだが、今年は宿題が講義室の空気を変えてくれている。異国で悪戦苦闘している外国人教員としては僥倖である。

午後からは、学生さんとのセミナーを行った。今日のセミナーは、天文学の学習経験を持たない修士課程新入生を対象とした「天文学基礎トレーニング」セミナーだ。基本的に、私と一緒に研究する学生さんが対象なので、英語のトレーニングも兼ねている。中国語で書かれた天文学の教科書を読んで、その内容を英語で発表するということを繰り返していく予定だ。私としては、このセミナーを通して、天文学の基礎知識と英語力の両方を身に着けてほしいと思っているのだけれど、果たしてどうなるだろうか。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月13日火曜日

【日記】中国名物「振替平日」の怪

2022年9月12日(月) 

今日は中秋節の三連休の最終日だ。連休中にPCR検査をお休みしていた人たちが明日からの出勤や通学に備えて検査を受けようとするため、近所の無料検査場が混雑していた。中秋節の連休が終わると、次の連休は10月1日から始まる国慶節の大型連休ということになる。

中国では、大型連休が来ると必ずその前後の週末に「振替平日」が設定される。振替平日というのは、つまり、土日を移動させることで連休を作り出しているのだ。それで、個人的に大問題なのがこの振替平日が「何曜日相当」になるかということなのだ。

講義のない曜日が振替平日として週末に移動する場合は特に問題はないのだが、講義を行う日が土日に移動するとちょっと厄介なことになる。下手をすると2日とか3日連続で講義を行うはめになってしまい準備に支障を来す場合が出てくる。そして困ったことに、この振替平日を何曜日にするかという決定は、かなり直前にならないと発表されないのだ。

前もって何曜日相当なのかを決めておいてくれればスケジュールが立てやすいのだけれど、振替平日に自分が講義するかどうかが直前まで分からないので、結局準備しておくしかなく、連休をフルに連休として休むことが出来ない。このあたり、もう少し制度を見直していただきたいものである。

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単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、ジャズコードI

2022年9月12日月曜日

【日記】同時多発テロ発生から21年目に思うこと、国際情勢に翻弄された私のキャリア

2022年9月11日(日) 

今日は9月11日ということで「同時多発テロ」関係のニュースがSNSのタイムラインに多く流れてくる。あれから21年になる。同時多発テロが発生した2001年9月、私は初めてのポスドク先を探し始めた頃で、ニュースを見ながらこの先世界がどのようになっていくのだろうという漠然とした不安感を感じていた。あの頃は、まさか日本の高等教育機関が今のような状況まで衰退するとは予想していなかったし、自分が20年も外国で研究キャリアを歩むということも全く予想していなかった。結果として、国際情勢に翻弄されまくった20年だった。

最初にポスドクとして赴任したアメリカでは、テロ直後はまだそれほど景気が悪い感じではなかったが、中等に対する報復攻撃が始まった後は、基礎研究関係の大型プロジェクトの予算が縮小されたり打ち切られたりということが発生した。その影響で、当初3年間働ける予定だったポスドク職の契約期間が2年4ヶ月に短縮され、最後の数カ月は突然の予定変更で大慌てで次の職を探すことになってしまった。

次に行った台湾ではポスドクとして2年半ほど、その次にいった香港ではエントリーレベルのファカルティー教員として6年間を過ごしたのだけれど、この期間には中国が世界での影響力を急速に増し、それに呼応するように台湾や香港で民主化運動が加熱した。特に香港に滞在していた後半は中国台頭の影響を強く受けたと思う。香港に赴任当初は、テニュアをとれる確率は低くはないという説明だったのだけれど、テニュアを与えられるのは中国系のスタッフばかりで、ここでも国際情勢の煽りを受ける形となった。

這々の体で辿り着いたロシアの大学では、赴任後1-2年は、国の高等教育拡充政策によって比較的大学は潤っていたように見えた。しかし、その後は問題山積だった。赴任前にはそこそこの好条件を提示されたものの、提示された条件の多くが守られず、ロシアの公的組織が一切信用できないということを身を持って学んだ。そして、コロナ禍が勃発する寸前の2019年9月に、中国の人材計画を利用してなんとかロシアを離脱することに成功した。その後、ロシアがウクライナに侵攻したことを考えると、一歩間違えたら大変な事態に巻き込まれていた訳で、その状況を想像すると今でも背中に寒気が走る。

そんなこんなで、中国にたどり着いたのだけど、正直なところ今が一番ほっとしているし、また仕事が楽しめているように思う。それはやはり職と国が「体感的に」安定しているからだと思う。西側の報道を見ていると、中国の職も危ういように見えるかもしれないが、西側の大学教員の待遇と相対的に比較したとき、中国の大学教員の方がQOLが低いとは思えない。自分の現役時代もあと10年ほどと考えると、残りの研究者人生はできるだけ安定した環境で研究と教育を楽しんでいきたいと願っているのだが、果たしてこの混沌の時代、どうなっていくのやら。

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単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月11日日曜日

【日記】とある中国人が決めた驚きの進学先

2022年9月10日(土) 

今日は「教師の日」なので、朝WeChatを覗いたら、現在や過去の学生さんたちからお祝いのメッセージがチラホラと届いていた。届いたメッセージの中に、以前少し関わりのあったよその大学の卒業生のものがあり、どうしているのだろうと思って「最近元気にしてますか?」という返事を送った。この学生さん、かなり優秀な人なのだけれど、運悪く欧米の大学院への進学に失敗し、現在中国内で働いている人だ。

返事がすぐに返ってきて、なんと驚いたことに、ロシアの某大学に大学院留学(物理系)することを決めたそうだ。その大学は、私が内部事情をよく知っている大学で、ロシアがウクライナに侵攻する以前の状態でも決して良い環境とは言えない状態の大学だった。それに加えて、現在はウクライナ戦争に関連する様々な問題があるのだから、ロシア現地での研究が必須の分野を除いては、ロシアへ留学することが賢明な人生の選択だと私にはとても思えない。

もちろんこれは西側諸国に国籍を持つ人間の考え方だとは思う。中国人の場合は、今のところロシアと中国の間の二国間関係に問題はないので、法的なトラブルに巻き込まれる可能性はすくないのかもしれない。しかし、そうであったとしても、研究環境は最悪の状態と言わざるをえないだろう。ロシア外の研究者との交流も非常に制限されるだろうし、論文誌への投稿や閲読を行うことも難しいかもしれない。生活面も、おそらくこれから先の数年は、さらに不便になっていくことだろう。

正直なところ、現在の状況で欧米進学がだめだった場合のバックアップの進学先として中国人によってロシアの大学が選ばれることに驚きを隠せない。この件に関して、上記の本人と突っ込んだ話をしようと思うと、どうしても政治的な話になってしまう。それに、大学院の修士課程まで出て既に社会人として働いている人なので、私がとやかくいうことでもないだろうとも思う。ただ、かなり優秀な人なので、こういう人が日本に進学できていたら良かったのにと思わなくはない。しかし、残念なことに我が母国の大学も問題山積である。本当に世界は混沌としている。

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単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月10日土曜日

【日記】「教師の日」と教員が厚遇される中国社会

2022年9月9日(金) 

明日から中国は「中秋節」の三連休に入る。さらに明日は「教師の日」でもある。中国で中秋節に贈答品として「月餅」を贈る習慣があることは比較的有名だと思うが、教師の日は中国以外ではあまり知られていないかもしれない。私も中国に来てから初めて「教師の日」というものの存在を知った。

教師の日の正確な由来は知らないのだけれど、この日になると、生徒や学生が日頃の教員の労をねぎらって感謝の気持ちを表すという習慣がある。実際には、ちょっとしたギフトをもらうことが多い。また、教え子が教師に感謝の気持ちを表す以外に、学校や大学も優秀な教員を表彰したり、教員全員にギフトを配ってくれたりする。

中国に移籍して最初の教師の日には、コロナ禍の関係もあって学生との接点がまだあまりなかったこともあり、大学が教員全員に一律に配ってくれるギフトだけをもらったのだけれど、中国での教員生活も丸三年になろうとしている今年の教師の日は、かなりギフトの数が増えてきた。

本来、教師の日は明日(9月10日)なのだけれど、本来の教師の日が週末や祝日にあたるときは、その前日にお祝いが行われる。たまたま今日は講義を行う日だったので、午前中に講義室に行ったら、教卓の上に、提出された宿題とともに花束が置かれていた。教室で花をもらうのは初めてだった。頑張って毎回準備して講義しているクラスでこういうことをしてもらうと、正直に言ってけっこう嬉しかったりする。

講義の後、オフィスに戻って仕事をしていたら、今度は研究グループの大学院生たちが訪ねてきて、巨大なフルーツバスケットをもらってしまった。あまりにも立派なギフトだったので驚いてしまい「へー!、これどうしたの?」と尋ねたところ、「みんなで割り勘して買いました。いつもありがとうございます!」という挨拶を(英語で)してくれた。

なんというか、以前にも日記に少し書いたことがあるが、中国の学生は教師の日に限らず、いろんな場面で教員に感謝の意を評してくれることが多い。教員におべっかを使っているという面もあるのかもしれないが、そればかりでもないような感じがする。とにかく、感謝されるたびに「私はそれにふさわしい何かを学生に与えられているのだろうか?」と自分の教育能力を考えて反省する気持ちになってしまう。もしかすると、教員にこのように思わせることが、教師に感謝する習慣が存在する意味なのかもしれない。

日本の教育現場では、どうも最近教員が軽んじられる傾向があり、教員の待遇も給料も社会的な地位も下がり続けている感じがするが、「おまえら教員はしっかりやれ、そうじゃないと給料も待遇ももっと下げるぞ」みたいな脅すような感じの対応をしている限り、教員の質が上がるとはとても思えない。中国にいると、それを強く感じるのだ。なんというか、教員が感謝されまくり厚遇されまくる環境にいると、「もっと努力しなければ」と日々思うように成るのだ。中国の大学が著しい発展を見せている影には、案外こういう教員が感謝され続けるという文化的習慣も関係しているのではないかと私は考えている。

教師の日と中秋節のお祝いでもらったギフト

中国語学習

単語と例文の暗記(5分程度)

2022年9月9日金曜日

【日記】家にこもって講義準備、天文学未経験大学院新入生の対応

2022年9月8日(木)

明日は講義日なのだけれど、学期初めであまりにも忙しく、今朝の時点でまだ半分ほどしか準備が終わっていなかったので、今日は自宅にこもって準備することにした。学期中にオフィスにいると、突発的な用事に巻き込まれる危険性があるので、次の日に行う講義の準備のような差し迫った仕事がある時は、自宅にこもって仕事するのが無難な選択である。

案の定、WeChatを見ていると、今日は組合の誕生日会やら、何かのギフトの配布やら、いろいろとあったようで、オフィスにいたら人がひっきりなしにドアをノックしに来てかなり仕事の効率が下がっていただろう。とにかく、一日家にこもって講義の準備は終了。事なきを得た。

ところで、うちの大学院には、大学院入試の制度上、天文学専攻の大学院に学部で天文学関係の講義を一切受講せずに(全国共通大学院試験の成績のみで)入学してくる新入生が毎年必ずいる。大学院から天文学を始めようと思ってくれることは嬉しいのだけれど、こういう学生さんたちが入学後すぐに天文学の研究を初められないこともまた事実である。

今年うちのグループに、天文学未経験者が3人加わった。天文学の経験者は、当然すぐに研究を始めてもらうのだけれど、未経験者となるとそういうわけにもいかない。また、私のような外国人教員と一緒に仕事をするには、英語でのコミュニケーションに慣れる必要もある。そういうわけで、来週から、英語のトレーニングもかねて、天文学未経験の修士課程1年生3人と、学部レベルの天文学の教科書の輪読をやることにした。また、さらに忙しくなる。

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単語と例文の暗記(25分程度)

2022年9月8日木曜日

【日記】新入生の「基礎トレーニングセッション」開始

2022年9月7日(水) 

今日から大学院新入生が加わり、新しいメンバーで研究グループの定例ミーティングが始まった。研究グループのミーティングでは、院生とポスドクの中から毎週二人づつ当番を決めて、二人の打ち一人は、何か一本の論文を読んで詳しく報告する、もう一人は過去一週間の間に発刊された新着論文の中から面白そうなものをリストアップして簡単に紹介するということをやってもらっている。

今年も、同じようにやってもらう予定なのだけれど、一つ問題なのが「天文学未経験者」がいることだ。ここが中国の大学院の入学制度の特殊なところなのだけれど、大学院入試で課せられる筆記試験が全国統一の一般的な物理学の試験なので、天文学の基礎知識が全くない新入生がときどき入ってきてしまうのだ。もちろん物理の筆記試験は突破してきているので、科学的な基礎知識はあるのだけれど、大学院ですぐに天文学の研究活動を始めるには明らかに知識不足なのである。

昨年、私のところに来た新入生は天文学の研究経験のある博士課程の新入生だったので、いきなり学術論文を読んで勉強してもらうことが可能だったが、今年は修士課程の学生で、天文学の知識がなく、しかも英語があまり得意そうではないという、なかなか難しい状況となっている。もちろんうちの大学院に合格しているので、物理や数学はそれなりにできる人たちではある。少し話してみたところ、英語は苦手そうではあるが、鍛えればなんとかなりそうなレベルだという印象はもった。

そんな訳で、今学期は「基礎トレーニングセッション」をやることにした。毎週中国語で書かれた天文学の教科書を読んでもらって、それを英語に翻訳し、さらに自分の翻訳を暗記して英語で発表してもらうことを一学期の間毎週繰り返すという算段だ。私も、英語が下手だった頃、長い台本を書いて丸暗記するということを繰り返しているうちに、脳内にボキャブラリーが蓄積して徐々にアドリブで研究発表ができるようになっていった。なので「暗記を繰り返す」というのは、語学のトレーニングにはとても有効な方法だと私は思っている。それを今回やってみようという訳だ。半年後には、学生たちが成長してくれていることを願いつつ、今日も頑張って仕事をする。

中国語学習

単語と例文の暗記(25分程度)

2022年9月7日水曜日

【日記】男女ともに高い大学院進学熱、今年のクラスは「少し控えめでスマート」

2022年9月6日(火) 

秋学期に入って今週で二週目となる。期末試験が終了するのが第二十週で、それが終わるとすぐにグラント申請の繁忙期に入るので、秋学期は、期末試験が終わった後にすぐに夏休みに入る春学期よりも体感的に長く感じられる。新入生の講義は第似二週から始まる。秋学期に私が担当する講義は大学院新入生が対象で、火曜日と金曜日に時間が割り当てられたので、いよいよ今日から講義開始だ。

今日は講義の初日ということで、教室の機材の動作状況を確認するために少し早めに教室に入った。受講する学生も新入生ということで緊張しているのか、20分前に教室に入った時には、既に7-8割方の学生が着席していた。最初、講義室に入った瞬間、教室内に女性が多くいたので、講義室を間違ったのではないかと思って廊下に張り出されている講義室の割当表を確認しに行ったのだけれど、間違いなく私の担当科目の講義室だった。

日本では若い人が大学院に進学しない、とくに女性が進学しないという話をSNS上でしばしば目にするが、中国では男女ともに大学院進学熱が高い。大学院で博士号を取得すると確実に就職状況が改善されので、コロナ禍で経済状態が悪化する中、少しでも良い職を得るため(もしくは就職時期を後ろにずらすため)に大学院へ進学する人が増えているのだと思われる。天文学の場合も、就職のために進学してくる人もある程度はいるとは思うが、学科の性質上、どちらかというと純粋に「天文学を研究したい」という学生の方が多いような感じはしている。

さて、講義の方は、初日ということで前半はコース全体の内容について大まかに説明したり、後半で行う学生セミナーの順番を決めたりといったオリエンテーション的なことを行った。しかし、昨年と同じ科目を担当しているのに、クラスにいる学生から感じる雰囲気が明確に異なる。昨年は全体的な印象として「積極的で荒削り」な感じの雰囲気をクラスから感じたが、今年は「少し控えめでスマート」な印象を受ける。同じ専攻の同じ学年の学生でも年によってずいぶん雰囲気がことなるのが面白い。

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単語と例文の暗記(25分程度)

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2022年9月6日火曜日

【日記】矯正治療の装置調整日

2022年9月5日(月)

目下矯正治療を行っている関係で、一ヶ月に一度、定期的に歯医者に通っている。今日は矯正装置の定期調整日だったので例によって歯医者に行ってきた。前回は、歯茎に「アンカースクリュー」という金属製のネジを埋設するちょっとした手術をしたのだけれど、これが非常に痛くて大変だった。今回はどんな痛みが襲いかかってくるのか戦々恐々としながら歯医者を訪れた。

やり始めてわかったのだけれど、矯正治療をやっていると、とにかく様々な種類の痛みが次々に襲いかかってくる。まぁ、しかし、歯科医の話では今しっかりと歯を治しておくと年を取ってからのQOLがぜんぜん違うということなので、それを考えて必死に痛みに耐える日々である。

歯医者に通い始めて4ヶ月ほどになるが、日本の歯医者とちょっと違うなと思うことがある。それは、総合的な健康状態のことに歯医者が言及することが多いところだ。治療前に健康診断書の提出を求められて、それに関していろいろ意見をもらった話は以前の日記に書いたが、今やっている治療に直接関わらないことに関しても患者の健康に関してアドバイスしてくれることがある。これはおそらく、日本のように歯科医が他の科目の医者と独立しておらず、歯科医と医者が同じ基礎教育を受けてきていることに関係しているのではないかと素人ながら想像している。

今回から、今までと違う方向に歯を動かすとのことで、見たことのない新しい矯正装置が口腔内に設置された。言葉で表現するのが難しいが、ワイヤーの途中にループ状の部品が取り付けられた。これによって、歯と歯の間隔を広げるのだそうだ。さらに、歯に色が付きやすい飲み物を避けるように指示された。朝のコーヒーと週末の赤ワインが楽しみだったのだけど、矯正治療が終わるまでお預けだ。これも、矯正治療の「痛み」の一つかもしれない。しかし、治療終了後のQOL工場のために我慢我慢。

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単語と例文の暗記(20分程度)

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SimplyPiano、ジャズコードI

2022年9月5日月曜日

【日記】娘の進学に口を挟む親、ナショナリズムの盛り上がりに思うこと

2022年9月4日(日) 

親が娘の進学やキャリアに関して口を挟むという話は日本のSNSでも最近良く話題に上がっているが、似たような話は中国にも存在する。例えば、私の職場環境では、「外国に行っちゃだめ」とか「省の外に出たらだめ」と親が言うので遠くの大学院に進学できないといった話を、女子学部生から聞くことが多い。細かな話を聞いていると、中国の場合、娘に対する親の影響力は日本以上に大きいよに思われる。

ただ、中国の場合、国が多くの大学に広く投資する政策を取っている関係で、北京や上海の有名大学以外にも、世界ランキングで上位に食い込んでいる大学が各地に多く存在する。省内の大学院なら親と揉めずに進学できるという女子学部生は少なくないので、国内に水準の高い大学が多数存在するという状況は、親との問題を抱える女子学部生の助けになっているように思う。

多くの大学に分散投資するメリットは、もちろんそれだけではない。基礎研究の水準を上げるためには、研究の裾野を広げることが必要で、そのためには多くの大学に様々な分野の研究者を多く抱えることこそが、研究水準を向上させていくための基本だということは、ノーベル賞受賞者を含む多くの日本の研究者が主張している内容である。

中国の政策はおおよそこの方針に沿ったもので、全国各地の多くの大学に対して分散的な投資を行っている。そして実際に基礎科学分野の論文数が近年非常に増えてきている。Twitterの日本語タイムラインには、中国の基礎科学分野の論文数が著しく伸びていることに関して「数が多いのはわかりましたが質はどうなんですか?」という質問がしばしば流れて来たりもするが、これに対する答えは簡単で「数が増えているということは、質の高い論文も増えている」ということになる。基礎科学を発展させようと思ったら多くの資金を幅広く投資するのが正解なのである。

そういえば、話は変わるが、今日のトレンドワードを見ていたら、中国人が日本の風俗店で起こしたとある犯罪に関して反中ナショナリズムが盛り上がっているようだった。犯罪は犯罪として法に基づいて裁かれなくてはならないことは当然であるが、そこからナショナリズムが盛り上がってしまう状況を見ると複雑な心境になる。

私が住んでいる地域でも、しばらく前に日本企業が起こした性風俗絡みの大事件があり、一部では根強く反日感情が残っている。ナショナリズムというのは通常は相対的なものである。ある国が絶対正義で、別のある国が絶対悪ということは通常はまずありえない。

コロナ禍で国際移動が制限されている状況が長く続いていたり、移動規制が緩和されて国際移動できたとしても長引く不況で海外旅行するお金がなかったりといった状況があり、一般の人が国際関係を客観視できる機会が減り続けているのだけど、こういうこともつまらないナショナリズムの盛り上がりと関係しているのだろうとは思う。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年9月4日日曜日

【日記】「一級学科博士点」と「飛び級進学者」の潜在的な関係

2022年9月3日(土) 

職場の要求で、もうかれこれここ1年ほどの間、平日はほぼ毎日PCR検査をどこかで受けている。しかし、週末までPCR検査を受けるのも面倒なので翌日何も予定がない土曜日には検査は休むことにしている。しかし、今日はどういう訳か「学内一斉検査日」に指定されており、教職員と学生は必ずどこかで検査を受けなければならない。

なぜ土曜日を一斉検査日に指定するのか根拠は定かではないが、おそらく「学期開始から○日目、○日目、○日目に一斉検査を行う」といった通達が「上の方」から出ているのだろう。仕方がないので、朝のコーヒーを飲んだ後、近所の無料検査ポイントに散歩がてら、ぷらぷらと検査を受けに行ってきた。

一斉検査日と行っても、感染が広がっているときの市内全数検査とはことなり、職場の指示による検査なので、こういうときは地域の検査場は空いている。逆に市内全数検査が課せられる時は、地域の無料検査場は大混雑となる。そういうときは職場の検査場を利用することにしている。

来週から自分が担当する講義が始まるので、今日は講義登録した学生の名前を名簿で確認した。天文学を専攻する博士課程新入生に対して必須科目に指定されている科目なので、基本的に登録してくる学生は博士課程の新入生だ。しかし、天文以外の専攻から選択科目として登録してくる学生もいるので、学生の素性を確認するためにつらつらと登録者名簿を眺めていた。

そうすると、どうも見覚えのある名前が紛れているのだ。先日までうちの学部生だった、とある学生さんの名前だ。学部生からいきなり博士課程に上がる「飛び級」というのはルール的には不可能ではないが、今まで飛び級合格者はほとんどいないという話を聞いていた。それで同僚に確認したところ、どうやら本当に修士課程をすっ飛ばして直接博士課程に入学した学生さんらしい。確かに、この学生さんは学部の最優秀卒論賞に選ばれた人なので、むべなるかな、といったところではある。

うちの大学院の天文学専攻は、つい最近「天文学一级学科博士点」に選ばれたばかりだ。中国の大学院は、同じ専攻の中でランク分けされており、一級学科博士点というのが最高ランクとなる。私は最近まで細かな事情を知らなかったのだけど、進学先を選ぶ学生さんの視点からは、一級学科博士点かそうでないかは比較的大きな問題のようだ。上述のように、成績優秀な学部生が内部で飛び級進学してきたことは、もしかするとうちの大学院が「天文学一级学科博士点」に選ばれたことと関係しているのかもしれない。


中国語学習

単語と例文の暗記(25分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために

2022年9月3日土曜日

【日記】学生の反応が楽しみな秋学期の講義、「しゃれにならん」設定の映画

2022年9月2日(金) 

昨日は講義開始前の貴重な一日を役所仕事で潰してしまったため、今日は全力で一回目の講義の準備を行った。事前に講義資料は用意しているので、準備と言っても基本的には「内容を思い出す」作業が中心となる。しかし、とはいっても、私はどうも凝り性のようで講義スライを直前に鳴って大幅に手直しすることも珍しくなく、仕上げの作業にはいつも丸一日くらいは必要である。

あと、一回目の講義はちょっと特別で、事務的な連絡事項等もあるので、追加のスライドをいくつか作る必要があり、仕上げ作業に少し余計に時間がかかる。居留証関係の役所仕事が長引いて、いつ講義の仕上げができるか心配だったのだけど、昨日手続きを完了したので、やっと講義準備に集中できる環境がととのった。やれやれである。

秋学期に担当する講義は「近代天体物理」という科目名なのだけれど、この科目には目的が3つある。一つは、大学院博士課程から天文学の研究を始める人向けに天文学の基礎知識を解説すること、二つ目は、学生に英語でのプレゼンや議論になれてもらうこと、三つ目は最新の研究動向を知ってもらうことである。まぁ、言ってみれば新入生の「基礎トレーニング」科目で、必須科目となっている。講義時間も全72学時(90分✕36回)とかなりのボリュームである。上記の目的を達成するために、教員に寄る講義、宿題での演習、学生セミナー、学期末の筆記試験等を組み合わせて、総合的な教育を行うという目論見である。

昨年、講義部分に関しては学部の教科書の内容を踏襲したのだけど、大学院生向きとしてはあまり適切な内容ではなかった。学部の1-2年生の段階では、まだ物理の基礎科目を未修の学生が多い関係で、学部向けの天文学の教科書には、物理的に突っ込んだ解説はほとんど掲載されていない。そのため、これから本格的な研究をすぐに始めようという人たちに教えるべき基礎知識としては、学部の天文学の教科書の内容は、どうもしっくりしないのだ。

また、学部の教科書の内容は、物理的な議論が少ないせいで、どうしても歴史的な記述とか単なる知識の羅列が多くなってしまう。大学院生の場合は、天文学の基礎知識がないとしても物理は既に勉強してきているので、昨年講義しながら、もっと別の上手いアプローチがありそうだとずっと考えていた。今年は、昨年の経験をもとに、講義の内容を大幅に作り直すことにした。学生がどのような反応をしてくれるか、今から少し楽しみである。

金曜日ということで、夜は例によって、一杯やりながら映画を観るなどした。日本の無料映画配信はやたらとCM動画が途中に割り込んでくるので、最近は中国の動画サイトで日本の映画を見ることが多くなってきた。中国の動画サイトの映画は、途中でCMが挟まらないので視聴者の立場としてはとても快適である。

今夜観た映画は、2006年に公開された草薙剛主演の「日本沈没」という作品だった。ある日、日本列島があと1年足らずで沈没してしまうことが発覚する。当然日本は大パニックになるが、例のごとく政府の対応がグダグダで、多くの人が日本列島とともに海に沈んでしまう状況に陥ってしまう。科学者の意見では、唯一の沈没回避方法は、有人潜水艇で深海底まで潜って、海底に掘削船で開けた穴に強力な爆弾を投入し岩盤を破壊することだ。しかし、この方法を選択した場合、爆弾を設置するために海に潜った潜水艇の操縦士は生きて返ってくることはできない。しかし、他に方法はない、そして、最後は決死の覚悟で…、まぁ、そういう話である。

国家存亡の危機に際して日本政府がグダグダするといった設定の小説、映画、ドラマ等々は古くからいろいろとあるわけだけど、最近では、この手の設定の作品をエンタメとして楽しみ難くなってきている感じがしないでもない。この日本沈没という映画が公開された2006年は東日本大震災の前だったので、社会の空気感として、まだ「国家存亡の危機」という設定を荒唐無稽なものとして映画を楽しむゆとりがあったように思う。しかし、東日本大震災やコロナ禍、そしてそれに関連して日本政府のリアルなグダグダ具合をリアルに目の当たりにした今となっては、この映画はもう「しゃれにならん」といった感じである。


中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

2022年9月2日金曜日

【日記】マンションで連発した細かなトラブル、役所で「苦労のダメ押し」2連発

2022年9月1日(木)

昨日今日と自宅マンションで細かなトラブルが続発した。まず昨夜、マンション全体のセキュリティーシステムの誤作動で、幾つかの住戸の玄関の呼び鈴の音が止まらなくなり、住民のWeChatグループがちょっとした騒ぎになった。その後、夜間に行われた水道工事の影響で多くの住戸が断水し、朝の洗面時間になっても復旧せず、これまた一騒ぎとなった。

さらに、うちの家の前でも、セキュリティーシステムのアラームが鳴り続けてとまらなくなり、管理人になんとか中国語で状況を説明して対応してもらった。昨晩から今朝にかけて、マンションの管理人はきっと大忙しだっただろう。うちの管理人は、本当に仕事がよくデキる人で、トラブルのときも素早く対応してくれるので助かっている。

さて、昨日の日記に書いた通り、珠海市から工作許可がおりたので、さっそく所轄の「珠海市科技创新局」に許可証を受け取りに行ってきた。工作許可の申請書を揃えるのは大変だったが、受け取るのは簡単で、職場からもらった受け取り(工作许可受理单)を渡してパスポートを見せたら一瞬で発給してくれた。

そして、問題なのが「居留証の申請」である。パスポート更新後、居留証の更新のために役所に行くこと今日で実に5回目となる。今までは出入国管理局に4回行って交渉してきたが、結局のところ私は珠海市科技创新局で居留許可を申請することになっているようで、今日、工作許可を受け取った後、別の窓口で居留証の申請を行うことになった。しかし、珠海市科技创新局の居留証申請窓口は最近できたばかりとのことで、どうしても不安がつきまとう。

とにかく今回の居留証申請では本当に苦労しているのだけど、一応念のため言っておくと、中国の他の地域ではおそらく私のような苦労をする人はあまりいないだろう。私が苦労している主な原因は、珠海市の特有の問題で、要するに工作許可業務が省から市に移管されたことに起因している。細かな経緯は過去の日記に書いたので、興味のある方はそちらを御覧いただきたい。

さて、居留証の申請では、とにかく窓口の書類チェックが細かくて、つまらない詳細を執拗に確認されるので、中国語に自信がある人以外は、通訳をやってくれる中国人と一緒に行った方が無難だ。今回は、職場の新入りの秘書さんに同行してもらったが、やはり一緒に来てもらって正解だった。

出入国管理局で書類を確認してもらった時は、婚姻証明として提出した戸籍謄本の写しに対しては特に何も質問されなかったのだけど、珠海市科技创新局は日本の戸籍謄本の扱いにまだなれていないのか、担当官は一行ずつ細かく意味を確認してきた。しかし、提出した戸籍謄本には認証付きの中国語翻訳が添付されているのに、それでもいちいち口頭で確認してくるのだ。

もしかすると、内容の検証というよりも、申請者と細かいやり取りをすることで相手の様子を見ているのかもしれない。今までの経験上、外国人に対して警戒している役所の仕事というのは、中国以外の国でもこんな感じのやり取りになることが多い。再び書類を突き返されるのではないかという不安に耐えながら、とにかく言われたことに一つ一つ答え続け、結局30分以上は書類をチェックされただろうか。そして、ようやく担当間が何やら無言で作業を始めたと思ったら、そこからさらに30分ほど待たされた。

これでようやく受理されるかと思ったら、「苦労のダメ押し、その1」が待っていた。その原因は、以下の写真の「ペン」だった。最初、手持ちのペンで申請書を記入したのだけど、全部書き終えて提出した後に、担当官がおもむろに「役所に備え付けのペンで書き直せ」と言い出して、全部最初から書き直しさせられた。あまりにも不合理すぎて、「もしかするとメンタル的な負荷をかけて怒り出さないかどうかをチェックしているのではないか」みたいな邪推をしてしまうレベルの対応だった。

「苦労のダメ押し、その1」の原因となったペン

怒りをなんとか抑え込みつつ書類を書き直して提出し、やれやれと思いながら帰り道を歩いていたら、今出たばかりの役所から電話がかかってきた。「苦労のダメ押し、その2」の襲来だった。何かと思ったら、「書類のコピーが1枚足りないから戻ってきてコピーを作って提出しろ」という。もう、本当に呆れて物が言えないレベルの対応である。原本を提出しているのだから、役所でコピーすればよいではないか…。しかし、文句を言ってもどうしようもないので、取り急ぎ役所に戻って原本を受け取り、近所でコピーできる場所を見つけてコピーを作り提出した。全くもってやれやれである。以前の日記にも書いたが、私は今の職場環境にはとても満足しているのだけれど、中国の役所だけは本当に辟易する。

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単語と例文の暗記(10分程度)

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SimplyPiano、リードシートIII、ジャズコードI

2022年9月1日木曜日

【日記】年々上がり続ける秘書の採用基準、いつオンライン化されるか分からない講義

2022年8月31日(水) 

新年度ということで、うちの学科にも新しく秘書さんが着任された。新しく来られた秘書さんは中国内の大学院で修士号を取得しており、博士課程にも在籍していた経験があるとのこと。秘書の採用基準も年々上がり続けており、単なる大卒ではまず採用されない。留学経験とか外資系企業での勤務経験があって英語が堪能とか、大学院での研究経験があるとか、必ず何らかの「付加価値」が必要となってきている。

給料や待遇のことを考えると、大学の研究秘書は決して悪い職ではないと思われる。雇用が安定しているし、福利厚生もしっかりしている。あと、民間企業のような無茶な仕事量は要求されない。うちの学科でも最近は新しい秘書が継続的に雇用されており、過去3年の間に研究秘書の数が0人から4人となった。とても優秀な人達で、いろいろと助かっている。Twitterを見ていると、中国内の他の大学でも、最近は秘書を増やしているところが多いように思う。

今週から、学部・大学院ともに2年生以上を対象にした科目の講義が始まっている。最近、コロナの感染状況が目まぐるしく変化するので、学期開始前に「いつでもオンライン講義に切り替えられるように準備をしておいてください」という通知が教務から出回っていたのだが、今日早速、とある同僚教員の自宅がロックダウンされたようで、オンラインにどうやって切り替えるのかといったやりとりがグループチャット上で行われていた。

朝起きたら自宅がロックダウンされていて、その当日にいきなりオンラインで授業してほしいと言われても、なかなか厳しいものがあるだろう。なんとか授業らしきものはできるかもしれないが、教育効果が下がることは否めないようなきがする。

午前中に、工作許可がおりることが決まった旨、珠海市の担当部署(珠海市科技创新局)から連絡が入った。許可証は自分で科技创新局に取りに行く必要があるらしい。ちょっと意外だったのだけど、居留証の手続きも科技创新局でできるそうだ。最近、出入国管理局が科技创新局内に出張窓口を設けたとのこと。

今回は、工作許可業務が省から市に移管されるという「アクシデント」に巻き込まれてしまって煩雑な手続きを余儀なくされているが、これから珠海に新しく赴任してくる外国人高度人材は、工作許可と居留証を同じ場所で申請できるので、今までに比べると手続きが多少は楽になるのではないかと思う。

朝、メールを開けたら、コレスポ論文のレフリーレポートが返ってきていた。どうやらレフリーは好印象を持ってくれたようで、改定後の次の投稿で受理されそうな感じである。善き哉。

中国語学習

単語と例文の暗記(20分程度)

ピアノ練習

SimplyPiano、エリーゼのために