2017年12月26日火曜日

【第46回】「海外生活で困ったことは?」と聞かれて困った話

今年の秋、出身大学院で「キャリア支援セミナー」という催しがあり、その中で行われたパネルディスカッションにパネラーとして呼んでいただきました。日本国内における研究職への就職が困難を極める昨今、海外で働く卒業生から意見を聞こうというのが企画の趣旨でした。

予想以上に多くの参加者があり、質問も多く出ておもしろい企画だったのですが、最初に出た質問で、いきなり返答に少し困ってしまいました。その質問というのは「海外生活で困ったこと、苦労したことは何ですか?」というものでした。

返答に困った理由の一つは、まずトータルとして、私は海外で働いている方が国内で働いているよりも苦労が少ないと考えていることがあります。もちろん苦労が全くないわけではないのですが、これまでに経験した海外の職場のメリットとデメリットを比べた時、やはりメリットの方が大きいというのが私の印象なのです。

もう一つの理由は、何を苦労と考えるかはその人の状況に依存するということがあります。例えば、外国生活に興味があるかどうか、結婚しているかどうか、というようなことでも苦労の種類や程度は変わってくるでしょう。

海外で働くことの苦労は挙げていけば数限りなくあります。しかし、現在、日本で働く研究者も多くの苦労を抱えいるのではないでしょうか。ただ、一つ言えるのは、日本と海外ではおそらく苦労の種類が異なるということです。したがって、日本の苦労に耐えられない人であっても、海外の苦労にはもしかしたら耐えられるかもしれません(そして、その逆もあるでしょう)。

私の意見としては、海外の研究職を検討するのであれば、予見される苦労についてあまりあれこれ考えるのではなく、とりあえず希望を持って挑戦していただきたいと思います。そうすると、もしかすると良い結果が待っているかもしれません。(そして、多くの場合、良い結果が待っていると私は考えています。)

初めての赴任先、イリノイ大学のキャンパスにて
(2003年4月に撮影)

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