2018年8月20日月曜日

【第60回】発展途上の旅費サポート

<<<筆者注:この記事はウクライナ侵攻前に執筆したもので、現在のロシアの状況を反映したものではないことにご注意ください>>>


昨年、少額ではありますが、申請していた外国出張旅費が採択されて、初めてロシアのお金で国際学会に参加してきました。まぁ、それである程度事前に想定はしていたのですが、ロシアの旅費サポートはシステムが独特で、今まで米国や香港で柔軟性のある旅費サポートになれていた私としては若干面食らいました。ロシアでは、グラントのルールが毎年のように変わるので以下に書くことが今後も継続するかどうかは不明ですが現時点では以下のような問題が有りました。

まず最初に「到着日が学会開催日の1日前以降」と決まっていることに驚きました。これは飛行機便の選択肢が少ない場合や、到着後に時差調整が必要な遠方の開催地だと大変困るルールです。1日目に自分の発表がある場合に都合良い日程で到着できる便がない場合などでは、学会の実行委員に頼んで発表日程を変更してもらうしかありません。

次に「出張を利用した休暇が取れない」というのも困ったルールです。過去に働いた国では、旅費が大きく変わらない限り、出張先で休暇をとることができました。この制度を利用して日本に一時帰国したり、出張先で観光したりできたのですが、ロシアでは「直行直帰」が基本で、途中に休暇を挟むことができません。

また、学会会場で「証拠写真を撮影しなくてはいけない」というルールもあります。これは、学会の看板とのツーショット、さらに学会に参加している参加者3人以上に頼んでネームタグが写るように一緒に写真を撮ることを要求されます。

それから、もっとも困惑したのは「学会でロシアからの参加者の発表を高く評価してくれた国際的に有名な研究者の連絡先を知らせる」というものです。これは非常に不可解だったので、目的を尋ねたところ「大学や研究機関の国際評価の際に審査員を依頼するときの参考として使う」という返事でした。あまりにも理解不能な理由だったので、この最後の連絡先の件については私は理由を添えて情報の提供を拒否しました。これで旅費支払いを拒否されたらそれはそれで仕方がないと覚悟を決めて文句を言ったのですが、まぁそれでも旅費は払ってくれたので、多少は聞く耳があるのかもしれません。

ロシアでは競争的資金を研究者に配布するという制度が始まってからまだ日が浅く、各国の制度を真似しながら徐々に規則を調整しているという話を学内の担当者から聞いたことがあります。最後の連絡先の件は別として、証拠写真や旅程の件は、私の知る限りどうも日本の研究費の運用に酷似している気がしてなりません。どうせ真似をするのなら、もう少し良くできた制度を真似してほしいものです。

「証拠写真」とて撮影した写真の中の一枚
(2017年9月撮影)

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