2022年10月7日金曜日

【日記】機能不全なロシア社会とリンクするウクライナ情勢

2022年10月6日(木) 

ロシアがウクライナに侵攻してから8ヶ月ほどになる。戦時の報道というものは信用できないとは言うものの、各国の報道を見渡してみると、ロシアが劣勢に立たされていることはほぼ間違いなさそうだ。最近では、劣勢を挽回するために大量破壊兵器をロシアが使用するのではないかという話もチラホラと取り沙汰されている。

私はロシアの地方都市(エカテリンブルク)に5年間住んでいたのだけれど、ロシアという国の印象を一言で言うと「社会システムがガタガタの国」という感じになる。実に多岐にわたる場面において、社会システムが正常に機能しないことによるトラブルに遭遇した。

トラブルに遭遇する場面は実に多様で、ほぼ生活のすべての局面を覆い尽くすと言っても過言ではない。日常的に利用する商店から、職場、病院、役所、銀行、ありとあらゆるところで問題が発生するのだ。

そういうときに、問題を解決する方法の一つが「上からの鶴の一声」である。システムが機能しないということは、問題を現場レベルで解決できないということでもある。そうなると「上の方」からの「指示」が必要となる。

例えば、私は職員寮に住んでいたのだが、赴任時に注文した備品がいつまでたっても届かない。壊れた玄関の鍵もいつまでたっても修理してもらえない。そこで、あるとき別件で副学長に会ったときに(この別件もまたトラブルであるが)、寮でのトラブルについて相談したところ、ようやく問題が解決する方向に動き始めた。

他に「もっとすごいトップダウン」を経験したことがある。赴任してから3-4年目のことだっただろうか、給料がいつまでたっても振り込まれず、いったいどうなるのかと、なんども職場に問い合わせていた。この件がどうやって解決されたかというと、驚いたことに「国から直接」私個人の銀行口座にお金が振り込まれたのだ。

送金元の名前が「連邦政府」だったので、当初、何かの犯罪に巻き込まれたのではないかとすら思ったのだが、銀行の窓口で状況を確認してみたところ、末端の公務員の支払い問題を解決するために連邦政府が直接お金を振り込むことはロシアではときどきあるとのことだった。つまり、国が連邦大学の現金出納係を信用していないという訳だ。

このように社会システムに問題を抱える国ではあるが、「軍だけは特別」という意識をなんとなく私は持っていた。こう考える理由の一つには「ステレオタイプ」があるだろうと思う。ロシア軍は、ソビエト時代の強大な軍隊の流れを組んでいるわけで、どんなに社会システムが杜撰であったとしても、軍だけは機能するだろうと、私みたいな素人が考えるのは、それほど不自然なことではないだろう。

また、ロシアに住んでみると、軍にだけはお金をかけていることが日常経験としてよく分かる。ロシアの軍関係の施設は、街の中に散在しており、日常的に目にすることになる。そのような街の中にある軍の施設は、他の公的施設と比べて外観が綺麗だ。また、軍学校への進学を希望する成績優秀な若者も多い。こういう状況なので、なんだかんだ言っても「軍は強いだろう」という想像は自然としていた。

しかし、最近の報道は「ロシア軍も、やはりロシアなのだ」という当たり前の事実を世に知らしめているように思う。社会の機能不全をそのまま戦地に持っていっている、そういう感じだ。ロシア社会の中では、最後は「トップダウン」で問題を解決することが常となっている訳だが、これは戦地だとどうなるのか。

ロシアの中の問題は、「トップダウンのレベル」を連邦政府まで上げていけば解決することも多いだろう。しかし、トップダウン戦略は、「トップが持つ圧倒的な権力」が前提となっている。ロシア以外の国と相対している戦地では、「トップが持つ圧倒的な権力」とは軍事力ということになるのだろうけれども、軍隊が機能不全を起こしていたのでは、もはやこの前提はなりたたない。さて、この先、いったいどのような展開がまっているのだろうか…

中国語学習

単語と例文の暗記(15分程度)